【事例】香川県三豊市の部活動地域展開 ─ 部活動を「放課後教育」へ再定義・一般社団法人ミクスポと連携した三豊市放課後改革で令和9年度に休日部活動廃止へ
・香川県三豊市の地域展開で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
| 自治体名 | 香川県三豊市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約6.5万人(2020年国勢調査) |
| 中学校数 | 三豊市(学校組合)立中学校 |
| 運営形態 | 市教育委員会が「三豊市放課後改革」として推進。一般社団法人三豊市文化・スポーツ振興事業団(ミクスポ)と連携して実証事業・地域クラブの立ち上げを担当。「三豊市放課後改革推進協議会」と「部活動地域移行検討委員会」を設置して関係者の意見を反映 |
| 対象競技 | ソフトテニス・柔道・吹奏楽(令和6年度実証事業)、陸上・バレーボール・バスケットボール・サッカー・バドミントン・卓球・剣道・軟式野球・カヌー・美術・家庭・科学・パソコン・メディア(準備中) |
| 保護者負担額 | 実証事業期間は費用負担なし。試行期間・移行完了後は保護者負担(スポーツ安全保険年間800円が条件)。移動は自転車または保護者送迎 |
取り組みの概要
香川県三豊市教育委員会は、部活動改革を単なる「地域移行」としてではなく「放課後教育」への再定義として捉える独自のコンセプト「三豊市放課後改革」のもと取り組みを進めています。令和5年12月から令和6年1月に中学生947人・保護者497人を対象にアンケート調査を実施し、課題を把握した上で令和8年3月に「三豊市・学校組合立学校部活動及び放課後改革に関する方針【中学校版】」を策定しました。一般社団法人三豊市文化・スポーツ振興事業団(ミクスポ)と連携し、実証事業の実施と受け皿となる地域クラブの立ち上げを担わせる体制を構築しています。令和9年度より休日の学校部活動を原則実施せず、地域クラブ活動へ移行することを目指しています。
特徴的な取り組み
- 「放課後教育」という独自コンセプト: 部活動を学校教育の一環から社会教育の一環である「放課後教育」へ再定義し、「学校と地域をつなぐ放課後学びのプラットフォーム」として位置づけています。「子どもたちがクラブを自らえらぶからこそ自らまなぶ」という理念を掲げ、「三豊市放課後プラットフォーム・クラブ登録制度」により多様な選択肢を提供します。
- ミクスポとの連携による実証事業と地域クラブ立ち上げ: 一般社団法人三豊市文化・スポーツ振興事業団(ミクスポ)が実証事業の実施と受け皿となる地域クラブの立ち上げを担当。令和6年度にソフトテニス・柔道・吹奏楽で実証事業を実施(8月〜1月・10〜15回程度・費用負担なし)しています。
- 段階的な移行スケジュール(実証→準備→試行→移行完了): 令和6年度に3種目で実証事業を開始し、令和7年度に準備期間、令和8年度に試行期間(1年間・30〜36回・費用あり)を経て、令和9年度に休日の学校部活動を廃止して地域クラブ活動へ移行する段階的なロードマップを設定しています。
- 参加費・スポーツ安全保険の整備: 地域クラブへの参加は希望制(原則1年間同じクラブへの所属が条件)。スポーツ安全保険(年間800円)への加入が参加条件であり、怪我・事故への備えを参加時から確保します。
- 生徒・保護者アンケートによる課題の可視化: 令和5年12月〜令和6年1月に実施したアンケートでは、生徒の課題として「参加人数が少ない(10.8%)」「練習時間が少ない(8.3%)」が上位に。要望では「楽しむことを中心とした活動(13.0%)」が首位でした。保護者の課題では「顧問・指導者が専門知識を有していない(7.7%)」と「移動手段の確保困難(8.1%)」が上位に挙がりました。
- 大会・コンクールへの出場は地域クラブからも可能: 地区・県中学校体育連盟が主催する総体・新人大会や吹奏楽コンクールでは、登録済の地域クラブでの参加が認められています。学校部活動か登録済の地域クラブかのいずれかに所属して出場する形です。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 部員不足による単独校での活動困難・選択肢の縮小 | 「三豊市放課後プラットフォーム・クラブ登録制度」により、どの学校からも参加でき、通学校にない種目にも参加可能な地域クラブを整備 |
| 顧問・指導者が専門知識・経験を有していない(保護者課題7.7%) | ミクスポと連携して地域の専門指導者を発掘・配置し、「専門の指導者から教えてほしい」という保護者ニーズ(12.0%)に応える |
| 移動手段の確保困難(保護者課題8.1%) | 選択肢の維持・多様化を優先した上で、移動は自転車または保護者送迎での対応を明示し、活動場所を可能な限り学校施設に設定 |
| 文化部の地域クラブ設立準備が遅れている | 吹奏楽は令和6年度実証事業として先行実施。他の文化部は令和9年度までの開設を目標に準備を継続 |
| 地域クラブ活動参加時の保険体制の整備 | スポーツ安全保険(年間800円)への加入を参加条件として明示し、学校部活動の日本スポーツ振興センター災害共済から移行 |
成果・効果
令和6年度にソフトテニス・柔道・吹奏楽の3種目で実証事業を先行実施し、地域クラブ活動の運営ノウハウを蓄積しています。令和8年3月に「三豊市・学校組合立学校部活動及び放課後改革に関する方針【中学校版】」を策定し、令和9年度より休日の学校部活動を原則実施しないという明確な方針を示しました。中学生947人・保護者497人へのアンケート調査結果を反映した設計により、生徒の自主性と選択の多様化を重視した「放課後教育」という独自フレームを確立。「三豊市放課後改革推進協議会」と「部活動地域移行検討委員会」を設置して多様なステークホルダーの意見を継続的に取り入れる体制が整備されています。
出典
→ 原文: 三豊市公式ホームページ 学校教育課「中学校の部活動について」(三豊市(学校組合)教育委員会 令和8年3月)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
三豊市の最大の特徴は「放課後教育」というコンセプトの再定義です。多くの自治体が「部活動の地域移行」という言葉を使う中、三豊市は「放課後改革」というより広い概念のもと、部活動を学校教育の一環から社会教育の一環である「放課後学びのプラットフォーム」へと再定義しています。この言葉の選択は単なる表現の違いではなく、「部活動がなくなる」という後ろ向きの受け止め方から「子どもたちの放課後の選択肢が広がる」という前向きな転換を狙う戦略的な設計です。「自らえらぶ、だから自らまなぶ」というメッセージは、生徒の主体性を中心に据えた改革哲学を体現しています。
「一般社団法人ミクスポ(三豊市文化・スポーツ振興事業団)」という地域に根ざした法人を実証事業の実施と地域クラブ立ち上げの担い手に位置づけた点も注目です。自治体が直営で行う場合の行政負担と、完全民間委託の場合の公的関与の薄さという両方の課題を避けるために、市が設立に関わった公益的な法人が中核を担うモデルは、地域スポーツ振興機能を既に持つ組織を活用した効率的な体制設計といえます。
中学生947人(回答率56.3%)・保護者497人へのアンケートで「楽しむことを中心とした活動(生徒要望13%首位)」「専門の指導者から教えてほしい(保護者要望12%首位)」という2つのニーズを明確に把握し、方針設計に反映したことも参考になります。「地域移行の必要性を訴える」だけでなく「現行部活動の何が不満かを数値で見える化する」ステップを踏むことで、保護者・生徒に「現状維持の方がいい」という反発を起こりにくくする効果があります。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
三豊市モデルで最も応用しやすいのは「アンケートによる現行部活動の課題可視化」と「コンセプトの再定義」の組み合わせです。「部活動がなくなる=子どもの活動場所が失われる」という誤解は地域移行の最大の抵抗要因ですが、アンケートで「現状でも参加人数が少なすぎる(生徒10.8%)」「指導者が専門知識を持っていない(保護者7.7%)」といった現行部活動の課題を数値で示すことで、「移行前から既に問題がある」という共通認識を作ることができます。また、「放課後プラットフォーム」という表現で「部活動の廃止」ではなく「活動の多様化・充実」という文脈に置き換える手法は、地域移行のコミュニケーション戦略として幅広く活用できます。
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