【事例】静岡県御殿場市の部活動地域展開 ─ 教育委員会が当面の運営主体を担い剣道クラブ先行で令和10年度夏の休日展開へ
・市教委が当面の運営主体を担い、剣道クラブのモデル事業から令和10年度夏の休日展開を目指す段階設計
・人材・団体バンクによる「新設団体参加型」「既存団体参加型」2パターンのマッチングの仕組み
・教員の62.2%が部活動に負担を感じる実態と、兼職兼業・就学援助世帯支援による解決の方向性
| 自治体名 | 静岡県御殿場市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約8万人(2026年時点) |
| 中学校数 | 6校(生徒2,158人/令和7年度) |
| 運営形態 | 行政直営(当面は御殿場市教育委員会が運営主体。将来的に地域団体等への委託を検討) |
| 対象競技 | 全種目(令和7年度のモデル事業は剣道) |
| 保護者負担額 | 受益者負担を原則とし、保険料等の追加費用を想定。具体的な金額は推進計画に記載なし |
取り組みの概要
御殿場市教育委員会は令和8年3月、「御殿場市部活動地域展開推進計画」を策定しました。市内には中学校が6校あり、令和7年度は2,158人の生徒が在籍していますが、市の推計では7年間で約400人減少し、令和13年度には1,897人になる見込みです。
生徒数の減少により部員数の減少に伴う廃部・休部が出始めており、野球・ソフトボール・バスケットボール・サッカーなどの団体競技では1つの学校でチームを組めず、複数校の合同チームで大会に参加する学校も増加傾向にあります。
市は令和6年度に、学校関係者・保護者代表・スポーツ・文化芸術団体の代表で構成する「御殿場市部活動地域移行懇話会」を設置し、運営体制や活動内容の検討を進めてきました。推進計画はこの懇話会と校長会での議論を積み重ね、市の実情に応じた地域展開の具体的な方針としてまとめられたものです。目標は、令和10年度夏までに休日の地域展開を実現することとされています。
特徴的な取り組み
- 教育委員会が当面の運営主体を担う: 学校部活動と地域の指導者・団体をつなぎ総括する運営主体を、当面は御殿場市教育委員会が担います。関係者との連絡調整、活動場所の調整、指導者研修会の計画・実施、人材・団体バンクの管理、運営費の管理までを教委が引き受け、将来的に地域の団体等へ委託することを検討する設計です。
- 剣道クラブを先行モデル事業に: 令和7年度、市教委学校教育課に部活動コーディネーターを配置するとともに、モデル事業として「剣道クラブ」を開始しました。令和8年度には条件が整った部活動からモデルケースとして移行を進め、課題を検証しながら順次展開していきます。
- 人材・団体バンクと2つの参加パターン: 運営主体に「御殿場地域クラブ活動人材・団体バンク(仮称)」を設置し、活動と指導者のマッチングを行います。マッチングは、既存の部活動を継承・発展させて新団体を設立する「新設団体参加型(=認定地域クラブ)」と、民間クラブチームや市民団体が生徒を受け入れる「既存団体参加型」の2パターンを想定しています。
- 庁内横断のプロジェクトチーム: 教育委員会だけで抱え込まず、庁内に「部活動地域展開プロジェクトチーム」を発足させ、円滑な移行・展開に向けた組織づくりを進めるとしています。
- 活動基準を学校部活動と揃える: 休養日は週2日以上(うち平日1日以上)、活動時間は平日2時間以内・学校休業日3時間以内、夏季休業中の練習日は10日以内、冬季・学年末年始は休業日の3分の1以内と定め、既存の部活動ガイドラインに準じた基準を地域クラブにも適用します。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 受け皿となる地域団体がまだ整っておらず、いきなり全校・全種目を移せない | 令和7年度は剣道クラブ1種目のモデル事業に絞り、令和8年度は「条件が整った部活動から」モデルケースとして移行。経過措置として学校部活動としての合同部活動も必要に応じて検討する |
| 教員の長時間労働。令和6年度調査では中学校教職員の時間外在校時間が月45時間以上の割合が約42%(うち80時間以上が約8%) | 指導を希望する教員は教育委員会へ申請し、兼職兼業が認められれば報酬を受け取って指導できる仕組みを整備。指導の担い手を教員以外にも広げる |
| 指導者の量と質の確保 | 県・市・競技団体・文化芸術団体と連携して確保・養成を進め、人材・団体バンクへの登録を周知。指導資格の取得を促すとともに、安全・健康面への配慮や暴言・暴力・ハラスメント根絶のための研修を実施する |
| 会費の発生による経済的理由での参加断念 | 就学援助対象世帯に必要となる支援を検討。あわせて施設借用時の減免を検討し、現在の活動拠点である学校施設での実施を基本とすることで送迎負担も抑える |
成果・効果
令和4年度の御殿場市部活動アンケートでは、「あなたは現在担当している部活動に負担を感じていますか」という問いに対し、中学校教員の62.2%が「かなり感じる、感じる」と回答しています。推進計画はこの数値と時間外在校時間の実態を明示したうえで、部活動指導が中学校の時間外在校時間に影響を及ぼしていると分析しました。
市内6校の部活動設置状況にも差が生じています。令和7年度時点で御殿場中と富士岡中が17部(運動部13・文化部4)を設置している一方、高根中は5部(運動部4・文化部1)にとどまり、軟式野球・陸上競技・卓球・剣道などが設置されていません。同じ市内でも学校によって選べる種目が大きく異なる状況が、地域展開を急ぐ根拠として計画に記載されています。
推進計画では、地域展開によって生徒には「活動の選択肢の拡大」「専門的な指導」「学校の枠を超えた交流」を、学校には「授業準備時間の増加」「長時間労働の解消」「生徒と向き合う時間の増加」を、地域には「スポーツ・文化芸術活動の活性化」「多世代がつながる活動の増加」をもたらすことが期待効果として整理されています。
出典
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