トップ 事例を探す 静岡県 【事例】静岡県島田市の部活動地域展開 ─ 端から端まで26km、6校をWEST・EASTの2エリアに分ける学校部活動エリア制
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 静岡県

【事例】静岡県島田市の部活動地域展開 ─ 端から端まで26km、6校をWEST・EASTの2エリアに分ける学校部活動エリア制

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・初倉中と川根中の約26kmという距離を根拠に市内を2エリアへ分ける島田市の設計
・川根中5部・島二中18部という学校間格差と10年後の生徒18%減という前提データ
・競技団体へ受け入れ可否を直接照会し、否定的な回答も含めて公開する検討の進め方

自治体名 静岡県島田市
人口規模 約9万人(2026年時点)
中学校数 市立中学校6校(島一中・島二中・六合中・初倉中・金谷中・川根中)
運営形態 島田市新たな地域クラブ活動推進委員会が競技ごとに方針を検討。事務局は市が担い、競技協会・スポーツ少年団・既存クラブチームが受け皿
対象競技 野球、サッカー、バレーボール、ソフトテニス、卓球、バスケットボール、剣道、水泳、陸上、弓道、吹奏楽、合唱
保護者負担額 市公表資料では未提示

取り組みの概要

島田市は「島田市新たな地域クラブ活動推進委員会」を設け、競技ごとに現状と今後の方針を突き合わせながら地域クラブ化を検討しています。市の校長会が令和6年11月に提案した枠組みが「学校部活動エリア制」です。休日において令和9年度の中体連以降、市内をWEST(島一中・金谷中・川根中)とEAST(島二中・六合中・初倉中)の2エリアに分け、原則として必要に応じて全ての部活動で合同部活動を組み、その合同部活動を地域クラブ化していくという内容です。令和9年度の中体連までは、部員数等によって合同チームや合同部活動を組む場合はエリア内で組むことを基本とします。エリア制を採る理由として市は、学校による部活動数の差、少子化による生徒数・学級数の減少見込み、チームを組むための部員数が足りない学校・種目の増加、そして活動場所への移動距離と時間の4点を挙げています。

特徴的な取り組み

  • 移動距離を根拠にエリアを線引きする: 市は「活動場所への生徒の移動距離と時間をできるだけ短くするために、比較的近い学校同士で1つのエリアを組む方が効率的である」とし、その根拠として初倉中と川根中の距離が約26kmであることを明記しました。合同化の相手を近さで決めるという原則を数字で裏づけています。
  • 学校間の部活動数の差を公表する: 島一中15、島二中18、六合中11、初倉中10、金谷中15、川根中5と、学校ごとの部活動数を並べて示しました。川根中は島二中の3分の1以下で、在籍校によって選択肢が大きく異なる実態を明らかにしています。
  • 10年後の減少率まで示して必要性を説明する: 令和16年度(10年後)に生徒数が18%、学級数が20%減少する見込みであることを示し、エリア制が一時的な対応ではないことを説明しています。
  • 競技ごとに移行の道筋を個別に描く: 野球は令和7年度の夏以降に6中学校を2チームに分けた合同部活動とし、令和9年度の夏以降は1チームとする案を各中学校から意見聴取。バスケットボールは令和8年度夏以降に市内を2つの合同部活動に編成し、地域クラブ化を目指す団体を含めて3チームにする案が示されています。卓球は中学校ごとに地域クラブを設置しつつエリア制の導入も検討するなど、競技特性に応じて設計が分かれています。
  • 受け皿があるかを競技団体に直接確認する: 水泳では、市内に小学生のクラブチームが10チームある状況をふまえ水泳協会に中学生を受け入れられるか照会し、全クラブチームが受け入れ可能という回答を得ています。サッカーではサッカー協会が既にスポーツ少年団に対して中学生まで指導できるか投げかけ、反発はなかったことが確認されました。
  • 単独校にしかない部を残す判断も併記する: 剣道は島二中のみ、水泳も島二中のみに部があり、いずれも「島二中の部は残して欲しい」という意見が方針案に併記されています。すべてを地域クラブへ移すのではなく、残す選択肢も検討対象としています。
  • 大学の代表者会にまで受け皿を求める: 市は金谷宿大学の代表者会に出席し、翌年4月から地域クラブとして登録してほしい旨を依頼して了承を得ています。

課題と解決策

課題 解決策
中学校によって部活動数に差があり(川根中5に対し島二中18)、在籍校で選択肢が限られる 休日について令和9年度の中体連以降、市内をWEST・EASTの2エリアに分け、必要に応じて全ての部活動で合同部活動を組み、それを地域クラブ化していく
初倉中と川根中の距離が約26kmあり、遠い学校同士を組むと生徒の移動負担が大きくなる 比較的近い学校同士で1つのエリアを組み、合同チーム・合同部活動は原則としてエリア内で編成する
陸上は種目が多く、種目ごとの指導者を確保することが困難 陸上部がある中学校4校とクラブチーム「プラスワン」が集まって大井川河川敷で合同練習会を開催する
弓道は金谷中のみに部があり、指導者不足のため地域クラブは1つしか作れない 現在の外部指導者が地域クラブの指導・運営にあたるが、平日は対応できないため部活動は継続して実施する
剣道の受け皿となる島田剣道連盟所属の東武会は、中体連等の大会運営への協力をこれ以上求められても対応が難しい 剣道に触れる機会を増やすため、島二中剣道部を残すことを検討する
吹奏楽は保護者対応・保険加入・会計処理などの実務を担う主体がない 運営母体を組織していく必要があるとして、全市の中学吹奏楽部の生徒を対象に合同のパート別練習を実施しながら協議を進める
クラブチームの選手が上位大会に出場する際、旅費が中学校から出ない 陸上の地域移行を進める前提として、この費用問題の解決を課題に位置付ける

成果・効果

令和6年9月時点で、島田市には既に3つの合同部活動と3つの合同チームが設置されています。合同部活動は野球(初倉中・金谷中・川根中)、野球(島一中・島二中)、女子バレー(初倉中・六合中)の3件、合同チームは女子バスケットボール(初倉中+金谷中)、女子バレーボール(初倉中+六合中+金谷中)、サッカー(初倉中+三つ星中)の3件です。市は今後、団体種目においてますます合同チーム・合同部活動を組まざるを得なくなると見込んでいます。

競技別の検討では、水泳協会への照会で市内の小学生クラブチーム10チームすべてが中学生を受け入れ可能と回答したこと、サッカー協会がスポーツ少年団へ中学生指導を打診して反発がなかったこと、金谷宿大学の代表者会から地域クラブ登録の了承を得たことなど、受け皿側の感触を具体的に確認したうえで方針が組み立てられています。一方、卓球では卓球協会が指導者のスキルアップ(技術指導)に協力できるという回答を得ており、指導者育成の支援先も競技団体ごとに整理されつつあります。

出典

→ 原文: 島田市「島田市新たな地域クラブ活動推進委員会での検討状況(概要)/今後の地域クラブ化に向けて(学校部活動エリア制)」(PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

島田市の資料が優れているのは、エリア制という結論だけでなく「なぜエリア制なのか」を4つの数字で説明している点です。学校ごとの部活動数(川根中5、島二中18)、10年後の生徒数18%減・学級数20%減、令和6年度夏以降に設置された合同部活動3件・合同チーム3件、そして初倉中と川根中の距離約26km。とりわけ26kmという距離を明記したことの意味は大きく、合同化の相手を「余っている学校」ではなく「近い学校」で決めるという原則を、誰にも反論しにくい形で提示しています。合同チームの編成が場当たり的になり、結果として片方の学校の生徒だけが長距離を移動する事態は各地で起きています。線引きの根拠を先に公開したことは、後の不公平感を抑えるうえで実務的な意味があります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

エリア制の弱点は、エリアをまたぐ種目が生まれることです。島田市でも弓道は金谷中のみ、剣道と水泳は島二中のみに部があり、これらはエリア内で合同を組む相手がいません。実際に市の方針案では、弓道は「指導者不足のため地域クラブは1つしか作れない」、剣道と水泳は「島二中の部は残して欲しい」と、エリア制の枠外での扱いが検討されています。導入する自治体は、エリア制を全種目一律に適用せず、単独校にしかない少数種目は市全域を1エリアとして扱う例外規定をあらかじめ設けておくべきです。もう一つは、エリア制と保護者送迎の関係です。エリア内でも数kmの移動は残り、休日の朝に送迎できる家庭とできない家庭の差が参加可否を分けます。エリアの中心に活動拠点を置く、公共交通のある学校を拠点にするなど、拠点の選び方まで含めて設計する必要があります。加えて、陸上で指摘されている「クラブチームの選手が上位大会に出るときに旅費が中学校から出ない」という問題は、地域クラブ化すると必ず表面化します。大会遠征費の負担ルールを移行前に決めておくことが欠かせません。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進委員会が競技ごとに現状と方針案を突き合わせ、その検討状況を概要として公開している進め方は、合意形成の透明性という点で堅実です。水泳協会・サッカー協会・卓球協会・剣道連盟といった競技団体に受け入れ可否や協力範囲を直接照会し、「東武会ではこれ以上の使役は難しい」という否定的な回答まで資料に残している点は、実態把握の誠実さを示しています。一方、会費水準や運営主体の法人格については公表資料からは確認できず、令和9年度の中体連という区切りに向けて、誰が事務局を担い費用をどう賄うのかを詰められるかが持続可能性の鍵になります。

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