トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県下妻市の部活動地域展開 ─ 総合型クラブ不在の市が教委内事務局・会費0円の「下妻ジュニア剣道クラブ」でスモールスタート
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【事例】茨城県下妻市の部活動地域展開 ─ 総合型クラブ不在の市が教委内事務局・会費0円の「下妻ジュニア剣道クラブ」でスモールスタート

公開:2026.08.23 更新:2026.08.23
この記事でわかること

・総合型クラブ不在の下妻市が教育委員会内事務局と剣道1種目で休日移行を始めた手順
・既存の部活動指導員を地域クラブ指導者に選定し「指導の一貫性」を保つ工夫と会費0円の設計
・生徒アンケート約87%好評・教員の休日負担軽減・卓球部への横展開決定という成果と残る課題

自治体名 茨城県下妻市
人口規模 約4.1万人(令和7年2月1日現在:41,363人)
中学校数 3校(全生徒1,031人・34部活動)
運営形態 行政直営(運営団体は市・教育委員会指導課内に事務局を設置)
対象競技 剣道(下妻ジュニア剣道クラブ)※令和7年度から卓球にも拡大予定
保護者負担額 参加会費0円(全額市負担。別途スポーツ安全保険:生徒1人あたり年額800円)

取り組みの概要

下妻市では少子化や休日の過ごし方の多様化により学校部活動に参加する生徒数が減少し、学校単位での部活動維持が難しくなりつつあります。加えて、市内には総合型地域スポーツクラブ・プロスポーツクラブ・大学等の受け皿となりうる団体が存在せず、運営団体と指導者の確保が構造的な課題でした。そこで市は教育委員会指導課内に事務局を立ち上げ、スポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」(茨城県実証事業)を活用して「下妻ジュニア剣道クラブ」を運営。平日は学校部活動、休日は地域クラブ活動という並行方式で、市内3中学校の希望生徒47人を対象に通年(4月〜2月・月3回程度)の活動を市立体育館で実施しました。参加会費は全額市負担の0円です。

特徴的な取り組み

  • 「指導の一貫性」を軸にした指導者選定: 市の地域クラブ活動推進事業実施要項に則り、学校からの推薦で指導者を確保。下妻市剣道連盟会長ですでに学校部活動の部活動指導員を務めている人材を選定したため、生徒にとって平日と休日で指導が変わらず、安心して活動できる場になりました。指導者は下妻市スポーツ協会理事長と合わせて2名体制です。
  • 教育委員会内事務局と統括コーディネーター: 受け皿団体がないため教育委員会内に事務局を設置し、統括責任者(コーディネーター)が指導者との連絡調整・活動予定作成・施設予約・検討委員会の立案実行を担当。活動日程調整、保険加入、謝金支払い(1回5,300円)までの金銭管理の仕組みを構築しました。
  • 部活動検討委員会と保護者協議の場: 検討委員会で地域クラブ活動の在り方・方向性を関係者間で共有するとともに、怪我や緊急時対応のため3中学校の代表保護者が定期的に情報交換・協議する場を設け、保護者の立場からクラブ体制を検討する仕組みを組み込みました。
  • 指導者研修の実施: 生徒理解、体罰・暴言・ハラスメント防止、茨城県の部活動の現状と課題をテーマに研修を実施。受講者からは「教育的配慮事項やコンプライアンス等について研修でき、よりよいクラブ運営に活かしたい」との声が上がっています。
  • 新1年生見学会: 5月のゴールデンウィークに新1年生向けの見学会を開催し、入会のきっかけづくりを行いました。

課題と解決策

課題 解決策
市内に総合型地域スポーツクラブ・プロスポーツクラブ・大学等がなく、受け皿となる運営団体の確保が難しい 教育委員会内に事務局を設置する行政主導方式で対応。複数のモデル構築は今後の課題として明記
指導者2名体制では不測の事態が生じた際に活動を実施できない日があった 1クラブあたり複数名の指導者確保を課題と位置付け、地域の理解促進を図りながら募集。教育的配慮や安全管理意識を有する指導者の確保・定期研修の実施体制を検討
生徒アンケートで「人数が多くて快適に練習できない」「自分にあった練習ができなかった」との声(13.2%) ヒアリングや状況に応じた助言を通じて活動内容を調整。検討会議での評価・改善サイクルを継続

成果・効果

参加した中学生47人(1年15人・2年18人・3年14人)へのアンケートでは、44.7%が地域クラブ活動への参加を「よかった」、42.1%が「どちらかといえばよかった」と回答し、「他の中学校の人達と練習ができ、良いところを真似して自分の成長に繋げられるから」といった理由が挙げられました。生徒は地域指導者から専門的な指導を受けて技術が向上し、昇段審査に合格する生徒も出ています。教員側では、休日の部活動が地域に移行したことで休日の部活動従事時間が減少し、休養や自己研鑽に充てられるようになったほか、部活動顧問の指導に対する精神的負担も軽減しました。統括コーディネーターの定期的なヒアリングと助言の結果、令和7年度には市立3中学校の卓球部の休日部活動が地域クラブ活動へ移行することが決定しています。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(茨城県下妻市)(茨城県教育委員会掲載・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

下妻市の事例は「受け皿がない市」の典型的なスタート地点をそのまま見せてくれます。総合型クラブも大学もプロクラブもない自治体は全国に多数ありますが、下妻市は受け皿探しに時間を費やすのではなく、教育委員会内に事務局を置いて剣道1種目から始める道を選びました。特筆すべきは指導者選定の考え方です。すでに学校部活動の部活動指導員を務める剣道連盟会長を地域クラブ指導者に据えたことで、生徒から見れば「平日も休日も同じ先生」という一貫性が保たれ、休日移行の心理的ハードルが大きく下がりました。1種目の成功体験と統括コーディネーターの助言が翌年度の卓球部移行決定につながっており、スモールスタートが横展開の説得材料になる好例です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この方式の弱点は下妻市自身が報告書で認めているとおり、指導者2名体制の脆さです。不測の事態で活動できない日が実際に発生しており、導入する場合は最初から1クラブ複数名の指導者を確保するか、代替指導者のリストを事務局が持っておく設計が必要です。また、参加会費0円・全額市負担は保護者の合意形成には強力ですが、種目を拡大するほど財政負担が線形に増えるため、卓球など次種目への展開時に受益者負担へ切り替えるのか、市負担を継続するのかの方針を早めに示すことが重要です。「人数が多くて快適に練習できない」という生徒の声は、拠点集約型の共通課題であり、参加者数に応じた活動枠の分割も検討に値します。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

部活動検討委員会・保護者代表の定期協議・指導者研修(体罰・ハラスメント防止を含む)・月ごとの活動実績報告と、小規模な実証ながら統制の仕組みが体系的に整っている点は高く評価できます。謝金単価(1回5,300円)や保険料まで明示した金銭管理の枠組みも透明性が高い設計です。一方、行政主導ゆえに複数モデルの構築には課題が残ると自己評価しており、市の財政負担と教育委員会事務局の人的リソースが種目拡大の上限を規定する構造です。卓球への展開を機に、運営事務の一部を段階的に地域側へ移す道筋を描けるかが持続可能性の分岐点になります。

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