トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県石岡市の部活動地域展開 ─ 教育委員会直営の休日モデル事業4種目・生徒満足度92.3%・令和13年度末に全運動部移行へ
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県石岡市の部活動地域展開 ─ 教育委員会直営の休日モデル事業4種目・生徒満足度92.3%・令和13年度末に全運動部移行へ

公開:2026.08.20 更新:2026.08.20
この記事でわかること

・石岡市が教育委員会直営で陸上・剣道・野球・サッカーの休日地域部活動を運営する仕組み
・保険料800円のみの負担設計と市施設減免・ICT申込による運営効率化の工夫
・生徒満足度92.3%の成果と令和13年度末全運動部移行に向けた課題

自治体名 茨城県石岡市
人口規模 約7.0万人(70,460人)
中学校数 5校(生徒数1,577人・59部活動)
運営形態 石岡市教育委員会の直営(統括コーディネーター役を教育委員会が担当)
対象競技 陸上競技、剣道、軟式野球、サッカー(吹奏楽の部も令和5年度から実施)
保護者負担額 年額800円(スポーツ安全保険料として。参加会費は無料)

取り組みの概要

石岡市では生徒数の減少により部活動が成り立たないケースが増え、野球部やサッカー部は他の中学校との合同チームで大会に参加する状況が続いてきました。市の推計では10年後の令和17年度に中学生が937人と令和6年度比59%まで減少する見込みで、団体スポーツの将来的な存続が難しくなると予想されています。こうした背景から市は「石岡市休日のスポーツ・文化活動(モデル事業)」を立ち上げ、令和5年度の陸上競技・剣道に加えて、令和6年度からは軟式野球・サッカーを加えた4種目で休日の地域部活動を展開しました。運営団体は石岡市教育委員会そのもので、統括コーディネーターの役割を教育委員会が担い、市陸上競技連盟・市剣道連盟・少年野球指導員・少年サッカー指導員が指導にあたります。活動は令和6年12月から令和7年2月まで月2回程度(午前9時〜12時)行われ、4種目で61名の生徒が参加しました。

特徴的な取り組み

  • 教育委員会が運営団体となる直営型: 受け皿団体を探すのではなく、市教委自身が運営団体となって関係団体との連絡調整・会議運営を一元化。活動には教育委員会が毎回同席し、開錠・施錠や楽器の搬入搬出まで支援しています。
  • マルチスポーツの考え方を採用: 市内の中学生であれば誰でも参加でき、自分が学校で所属している部活動と異なる種目への参加も認めることで、複数の運動に関われるよう配慮しています。
  • 2エリア交互開催による参加しやすさの確保: 市域が石岡地区・八郷地区の大きく2つに分かれているため、市中心部の施設を活用したり、活動場所を2エリアで交互に実施したりして移動負担を平準化しています。
  • 市施設の無償活用: 首長部局が陸上競技場・体育館・球場・サッカー場を減免で貸し出し、施設利用料をかけずに質の高い活動環境を確保しています。
  • ICTによる事務効率化: 申込フォームやQRコード、メーリングリストを活用して参加申込・欠席連絡・保険手続きを完結させ、保護者と事務局双方の負担を軽減しました。

課題と解決策

課題 解決策
会場までの移動が保護者送迎頼みになっている 学区内の練習場所へは通学同様の自転車移動を認めるなど柔軟に対応。今後は市の他部局と調整しオンデマンドタクシーや市バスの活用を検討
公的支援の対象とする地域クラブの基準がない 県が示した地域スポーツクラブ活動の要件等を踏まえ、市として要件・基準を設定し登録・指定等を実施する方針
「参加人数が少なかった」という生徒・保護者の声 新入生説明会での市教委による説明、チラシ配布、広報いしおか・SNS(X・LINE)掲載など周知を多層化
平日の部活動の指導者確保 コーディネート業務を担う人材の発掘・育成・資質向上を図る方策を検討

成果・効果

令和6年12月〜令和7年2月の活動に4種目で61名が参加し、生徒アンケートでは92.3%が休日の部活動での活動に「満足」と回答しました(とてもそう思う61.5%・そう思う30.8%)。参加した中学生からは「いろんな指導者の方々と稽古ができてとてもいい経験をさせていただきました」「いろいろな学校の友達と切磋琢磨することができた」との声があり、練習に参加した生徒から評判を聞いた生徒が後から加入する動きも見られました。野球の部では最終日に市役所の野球チームとの練習試合を実施するなど、練習の成果を発揮する機会も設けています。市は移行に取り組む中学校の部活数を段階的に増やし、令和13年度末までに域内のすべての運動部を地域クラブ活動へ移行する計画です。

出典

→ 原文: スポーツ庁 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 茨城県石岡市(茨城県教育委員会掲載PDF)

→ 参考: 茨城県教育委員会「部活動地域展開」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

石岡市の最大の特徴は、教育委員会が「コーディネート役」にとどまらず運営団体そのものになっている点です。受け皿となるNPOや総合型クラブが育っていない地域では、この直営スタートが現実的な初手になります。市教委が毎回活動に同席し開錠・施錠まで担うため学校・保護者の安心感は高く、実際に生徒満足度92.3%という数字が出ています。また、参加費を実質無料(保険料800円/年のみ)に抑えつつ、市施設の減免貸出で会場コストをゼロにするなど、直営だからこそ可能な行政資源の総動員がなされています。所属部活と異なる種目にも参加できるマルチスポーツ設計も、少子化局面での「種目の生き残り」を見据えた布石といえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

直営型は立ち上げの確実性が高い反面、教委職員の業務負荷と「いつまで直営を続けるのか」という出口問題を抱えます。石岡市自身も、公的支援の対象とする地域クラブの基準づくりと、コーディネート人材の発掘・育成を今後の課題に挙げており、直営期のうちに登録・指定制度を整えて民間の担い手へ引き継ぐ設計図が必要です。また月2回程度・年6回という活動頻度は入口としては適切ですが、本格移行期には回数増と平日展開が避けられず、その時点で指導者の量が最大の制約になります。石岡市のように連盟・少年団の既存指導者から始めつつ、市域の地理特性(2エリア分割)に合わせた会場配置と移動手段(自転車容認・オンデマンド交通の検討)をセットで用意しておくことが移植時の要点です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進協議会を年3回開催し、校長会・中体連・部活動顧問への説明を段階的に踏むなど、合意形成プロセスは丁寧です。生徒・保護者・指導者アンケートを毎年度実施し満足度を公開している点も透明性が高いといえます。一方、財源は県委託金と市予算に依存しており、受益者負担は保険料800円のみ。令和13年度末の全運動部移行という長期目標に対し、直営から自走型への移行スキームと財源設計が今後の持続可能性を左右します。

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