「指導してくれる人が見つからない」──部活動の地域展開を進めるうえで、財源と並んでよく聞くのがこの悩みです。でも全国の先行地域を見てみると、同じ「指導者が少ない」という状況のなかでも、しっかりと指導者を集めているクラブが存在します。
そのちがいはどこにあるのでしょうか?全国の事例を調べた結果から、成功しているクラブに共通する3つのポイントをお伝えします。
共通点①「お願い」から「募集」へ発想を変えた
指導者探しに苦労しているクラブの多くは、「知り合いにお願いして回る」というアプローチをとっています。この方法は知人ネットワークが豊富なうちは機能しますが、すぐに限界がきます。
一方、指導者を集めることができているクラブは、「登録の仕組み」を作っています。「指導したい人が手を挙げられる場所」を公に設けて、その存在を地域に広く周知する──このシンプルな転換で、状況が大きく変わるのです。
実は「指導したい人はいるけれど、どこに連絡すればいいかわからない」というケースはとても多いんです。スポーツ経験のある退職者の方、子育てが一段落した保護者の方、地元大学の体育系の学生さん──潜在的な指導者候補は、地域に意外とたくさんいます。
雲南市では合同部活動を前段階として活用しながら、地域在住の約80名の「指導者人材バンク」を整備しました。競技ごとにリストアップして公開することで、「教えたい人」と「教えてほしいクラブ」をスムーズにつなぐ仕組みを実現しています。
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共通点②「続けたくなる」環境をつくっている
集めることと同じくらい大切なのが、「定着させること」です。せっかく来てくれた指導者が次々と辞めてしまうようでは、いつまでたっても安定しません。
指導者が辞める理由として多く挙げられるのは、「報酬が労力に見合わない」「責任の範囲が曖昧で不安」「一人で問題を抱え込む状況になっている」の3つです。
では、具体的にどうするか。まず謝金は最低賃金以上に設定すること。スポーツ保険への自動加入も忘れずに。そして意外と効果が大きいのが、月1回の指導者情報共有会です。費用はほぼかからないのに、「一人じゃない」という安心感がとても大きな効果をもたらします。
播磨町では指導者の定着を促すため、経験・資格に応じた「段階別報酬制度」を導入。さらに競技団体が認める指導者資格の取得費用を一部補助することで、指導者が「このクラブで長く続けたい」と思える環境をつくっています。
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共通点③「競技OB以外」の発掘ルートを持っている
指導者を探すとき、真っ先に思い浮かぶのは「その競技の経験者」ですよね。でも、競技の種類が増えるほど、この方法だけでは足りなくなってきます。成功しているクラブが活用している発掘ルートを3つご紹介します。
ルート1:競技団体の資格保持者リストを活用する
各競技の都道府県連盟には、指導者資格を持つ方のリストがあります。地域在住の資格保持者に直接連絡してみると、「指導したいと思っていたけど機会がなかった」という方が見つかることがあります。
ルート2:地元の大学・専門学校と連携する
体育系・スポーツ科学系の学部がある大学と協力関係を結ぶと、学生さんに指導補助として関わってもらえます。学生にとっても実践経験が積めるメリットがあるので、続けてもらいやすいのが特徴です。
ルート3:近い競技の経験者を育てる
サッカー経験者がフットサルを、テニス経験者がソフトテニスを、というように、似た競技への転換を促す方法もあります。各競技団体の指導者養成講習の受講費を補助することで、新しい指導者を育てる仕組みをつくることができます。
福岡市では体育系大学の学生を地域クラブの指導者として活用する実証事業を実施。学生にとっては実践経験の場、クラブにとっては若い指導者の安定確保という双方のメリットが生まれ、顧問の残業時間を最大37時間削減することにも成功しています。
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やってしまいがちな「失敗パターン」
最後に、全国事例から見えてきた注意点もお伝えします。
最も多い失敗は、「学校の先生に地域クラブの指導も兼任してもらう」という設計です。これは先生の働き方改革の趣旨に反するだけでなく、先生が転勤すると同時に指導者がいなくなるリスクがあります。「先生に頼らない指導者確保」を最初から考えておくことが大切です。
もうひとつは、「保護者コーチへの頼りすぎ」です。お子さんが卒業すると同時に保護者コーチも入れ替わる──そのサイクルが続くと、指導の継続性が保てなくなります。保護者の方の協力はとても大切ですが、それだけに頼らない「固定的な指導者の柱」を持つことが長期的な安定のポイントです。
指導者確保の問題は、工夫と仕組みづくり次第で大きく改善できます。全国の成功事例も、ぜひ参考にしてみてください。