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【事例】高知県越知町の部活動地域展開 ─ 学校にない男子バスケを総合型クラブが受け皿に・移行できなかった2部活も公開

公開:2026.09.17 更新:2026.09.17
この記事でわかること

・学校に部活動がない種目を地域の声から立ち上げ、総合型クラブが受け皿になった経緯
・指導者・生徒・時間帯の3条件が噛み合わず、野球とバレーが移行できなかった具体的な理由
・学校部活動と地域クラブの合同チームが県中体連大会に出られない制約と、その回避方法

自治体名 高知県越知町
人口規模 約0.48万人(4,811人)
中学校数 1校(越知中学校/生徒82人)
運営形態 総合型地域スポーツクラブ「おちスポーツクラブ」
対象競技 男子バスケットボール(令和6年度実証の対象は1種目)
保護者負担額 年会費2,500円+スポーツ安全保険800円

取り組みの概要

高知県越知町は、高知県中西部に位置する人口4,811人の町です。越知中学校が町で唯一の中学校で、小学校も越知小学校1校のみという規模ながら、全校生徒82人に対して運動部だけで男女バスケットボール部・サッカー部・軟式野球部・女子バレーボール部・卓球部・柔道部の7部が設置され、さらに文化部もあります。報告書は「学校の規模から考えると部活動数が多く、教員への負担が大きい」「生徒が分散してしまい、一つ一つの部活動の部員不足が顕著」と記しています。軟式野球など団体競技は近隣町村との合同チームで活動しています。

同町のスポーツ環境は比較的整っており、野球の独立リーグ・四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグスが練習場および公式戦会場として使用する越知町民総合運動場があります。小学校からの地域スポーツとしてサッカー、野球、バレーボール、バドミントン、空手、柔道などが活動してきました。

令和3年、地域の声から男子バスケットボール部の設立希望が上がりました。男子バスケットボールはもともと中学校に部活動として存在しておらず、地域から生まれたクラブです。令和4年に総合型地域スポーツクラブ「おちスポーツクラブ」へ加入し、令和5年には「越知中学校部活動検討委員会」を設立してバスケットボール部以外の地域展開の検討を開始。令和6年度にスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」の実証事業に取り組みました。

特徴的な取り組み

  • 学校になかった種目が地域から生まれてクラブになった: 男子バスケットボールは中学校の部活動として設置されていない種目でした。地域の設立希望を起点に指導者を選定し、総合型地域スポーツクラブに加入する形で受け皿を作っています。報告書は「地域でバスケットボールをしたい子ども達の受け皿になっている」と評価しました。
  • 指導者は競技未経験の地域住民: 報告書は指導者の主な属性を「地域住民(バスケットボール未経験者)」と明記しています。競技経験者にこだわらず町内から幅広く募集した結果です。1名の指導者が月12回程度、17時30分から19時30分の活動を担い、指導だけでなく運営も行っています。
  • 検討委員会に地域の多様な団体を入れる: 越知中学校長、越知中学校PTA会長、越知町学校運営協議会委員、おちスポーツクラブ会長、越知町スポーツ推進委員長などを委員として委嘱しました。町は「学校やスポーツクラブ会長だけではなく、学校運営協議会やスポーツ推進委員会といった地域の様々な団体から部活動検討委員を委嘱しているため、一方だけではなく多方面からの意見を入手できた」としています。
  • 移行できなかった部活動を隠さず記載: 野球部とバレーボール部にも指導を依頼する予定でしたが、実現しませんでした。報告書は「野球部で1名、バレーボール部に1名指導を依頼する予定であったが、部員不足や時間的都合のために指導できていない」と記し、総括でも「指導者がいても活動する生徒がいなかったり、生徒がいても、部活動の時間帯に指導者の都合が合わなかったりしたため、予定していた活動ができなかった」と公表しています。
  • 移動手段は自転車: 活動場所である越知町民総合運動場体育館への主な移動手段は自転車です。同町は近隣町村との距離が離れており、拠点校方式にした場合の移動手段がないことを課題として挙げています。
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課題と解決策

課題 解決策
学校部活動と地域クラブの合同チームが県中体連主催大会で認められていない 男子バスケットボールは地域クラブとして活動しつつ、大会には学校部活動として参加している。合同チームを組む近隣町村との調整が必要になるため、県や近隣市町村と協議して解決方法を検討する方針
指導者がいても生徒が集まらない、生徒がいても活動時間帯に指導者の都合が合わない 部活動検討委員会の委員の人脈を生かして指導者を紹介してもらい、近隣市町村と連携して人材不足の解消を図る
拠点校方式にした場合、近隣町村までの距離が遠く生徒の移動手段がない 山間部という地理的条件を前提に、町単独ではなく県・近隣町村と協議して課題解決に取り組む方針を示した
全校生徒82人に対して部活動数が多く、生徒が分散して各部の部員不足が顕著 軟式野球など団体競技は近隣町村との合同チームで活動を継続。地域クラブ化により学校にない種目の受け皿も確保した
指導者1名に指導と運営が集中しており持続可能性に不安がある 持続可能な運営体制の整備が必要と報告書に明記し、地域クラブ指導者にも検討委員会への参加を促して連携を深める方針とした

成果・効果

令和6年度の男子バスケットボールクラブには中学1年生2名・2年生6名・3年生1名の計9名が参加しました。月12回程度と、実証事業に参加した自治体のなかでも活動頻度が高い部類です。年会費は2,500円で、これにスポーツ安全保険800円が加わります。

参加生徒9人のうち5人が回答したアンケートでは、中学2年生から「自分のレベルにあった指導を受けられた」「大人数で活動することができた」、中学1年生から「自分の好きな競技に取り組めることができてよかった」という声が寄せられました。

学校側の効果について町は「基本的には地域クラブの指導者が部活動指導だけでなく運営も行ってくれているので、中学校としては働き方改革につながっている」と評価しています。指導方法や練習日などの実務的な調整は、顧問とスポーツクラブの指導者が直接連絡を取り合う形にしました。

令和7年度は、部活動検討委員会の広い人脈を生かして指導者を紹介してもらい、近隣市町村と連携を図ることを主な取り組みとしたうえで、バレーボール部と野球部について地域展開を進める予定です。町は「地域の子ども達が、幼い頃から続けているスポーツや、昔から行われている学校部活動の競技も、なくすことなく続けることができる持続可能な環境作りを目指す」としています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 高知県越知町」

→ 原文: 越知町「おちスポーツクラブ」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

越知町の報告書は、うまくいったことよりうまくいかなかったことの記述が濃い資料です。野球部とバレーボール部に指導者を立てる予定が「部員不足や時間的都合のために指導できていない」と書かれ、総括では「指導者がいても活動する生徒がいなかったり、生徒がいても、部活動の時間帯に指導者の都合が合わなかったりした」と整理されています。地域展開の失敗要因は「指導者がいない」に一括りにされがちですが、実際には指導者と生徒と時間帯の3つが同時に噛み合う必要がある。全校82人・7部活という分母の小さい町では、この3条件の一致確率が構造的に低くなります。成功事例からは見えない条件が、ここには書かれています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

越知町が挙げた最も移植性の高い論点は大会参加のルールです。同町は「学校部活動と地域クラブとの合同チームが県中体連主催大会で認められていない」ため、地域クラブ化すると合同チームを組んでいる近隣町村との調整が必要になると指摘しています。実際に男子バスケットボールは地域クラブとして活動しながら、大会には学校部活動として参加する形を取りました。合同チームで大会に出ている部活動を地域展開の対象に入れる場合は、着手前に都道府県中学校体育連盟の参加規程を確認し、相手自治体と足並みを揃える必要があります。もう一点、同町は指導者を「地域住民(バスケットボール未経験者)」として受け入れました。競技経験を必須にすると人口5,000人規模では候補がほぼ出ません。安全管理と研修で質を担保する前提であれば、未経験者を排除しない募集設計は現実解になり得ます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

運営主体が総合型地域スポーツクラブであり、検討委員会に学校運営協議会委員やスポーツ推進委員長まで入れている点は、町の規模に対して体制が広く取られていると評価できます。年会費2,500円という水準も参加のハードルが低く、加入率の面では機能しているでしょう。一方で指導者1名・運営スタッフ1名という体制は、この1名が抜ければクラブが止まる構造です。報告書自身が「持続可能な運営体制の整備が必要」と課題に挙げており、令和7年度に予定するバレーボール・野球の移行で指導者を増やせるかどうかが、クラブが1種目の点から面へ広がれるかの分岐点になります。

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