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【事例】高知県土佐町の部活動地域展開 ─ スポーツコミッション主導・カヌーで地域活性化

公開:2026.04.29 更新:2026.04.29
この記事でわかること

・高知県土佐町の地域移行で直面した課題と解決策
・スポーツコミッション主導型の運営体制と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき「地域資源活用型」の視点

自治体名 高知県土佐町
人口規模 約3,500人(令和5年時点)
中学校数 1校(生徒数75人)
運営形態 スポーツコミッション主導(土佐町スポーツコミッション)
対象競技 カヌー(地域クラブ活動移行済み)
保護者負担額 月額300円(保険料は生徒負担なし)

取り組みの概要

高知県土佐町は人口約3,500人の中山間地域に位置する小規模町で、令和5年度にスポーツ庁の実証事業を受託し、部活動の地域移行に取り組んでいます。平成30年に「さめうらカヌーアカデミー」が設立されたことで土佐町中学校にカヌー部が誕生し、地域クラブ活動の土台が形成されました。令和元年には土佐町スポーツコミッション(土佐町SC)が設立され、コーディネーターの配置や指導者派遣を担う体制が整備されました。令和5年5月に高知県から実証事業を受託、同年12月に土佐町SCが運営主体となる地域クラブ活動が正式にスタートしました。

特徴的な取り組み

  • スポーツコミッション主導型の役割分担: 土佐町SCがコーディネーター配置・指導者派遣・人材バンク設置を担い、土佐町ハピネススポーツクラブが指導者紹介・保険加入手続きを担当。教育委員会は事業委託・財政支援に徹する三者連携体制を確立しました。
  • 早明浦ダム湖の地理的資源活用: 国内屈指のカヌー競技環境である早明浦ダム湖を地域固有の資産として活用。さめうらカヌーアカデミーが指導を担当し、スポーツツーリズムやスポーツウェルネス分野への波及も見据えた地域活性化の取り組みとして展開しています。
  • 保護者負担を最小化した会費設計: 参加会費は月額300円、生徒の保険料は徴収なしという低負担設計を実現。経済的格差なく全ての中学生が参加できる環境を整備しています。指導者謝金は時給1,480円と地域実情に合わせた水準に設定されています。
  • 段階的な移行による合意形成: カヌー部を先行して地域クラブ活動へ移行しつつ、女子バレー・野球・卓球の3部活は学校部活動として継続。段階的な移行により関係者の理解を深めながら進めています。

課題と解決策

課題 解決策
人口減少・中山間地域による指導人材等の地域資源の限界 スポーツコミッションが各スポーツ団体・スポーツ少年団・競技団体・スポーツ推進員を取りまとめ、情報を一元化して連携体制を構築
町外からの指導者確保が困難 高知県の人材バンク整備と並行し、町内各団体や近隣市町村が保有する指導者情報を集約・共有する仕組みを検討中
スポーツコミッションの運営体制強化 地域おこし協力隊や行政からの出向者を含む職員を配置し、将来的な正職員増員による体制強化を目指す

成果・効果

令和5年12月からカヌー部の地域クラブ活動が開始され、1か月あたり平均8回の活動を実施。1回あたりの参加者数は約7人で、自転車での通所が可能な民間施設を活動場所として確保しています。さめうらカヌーアカデミーという全国水準の指導環境を活かすことで、学校部活動では実現が難しかった高度な指導体制を地域クラブとして提供できるようになりました。また、地域移行の取り組みを通じて、カヌー競技を軸としたスポーツツーリズム・スポーツウェルネス分野への波及も見据えた動きが生まれており、部活動地域移行が単なる教育施策を超えて地域振興の起点となる可能性を示しています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和5年度 運動部活動の地域移行に関する実証事業 事例集」

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

土佐町の事例が示す最大の示唆は、「地域の弱みを地域の強みに変換する」という発想の転換です。人口3,500人という超小規模・中山間地域という条件は、一般的には部活動地域移行の「困難要因」として語られます。しかし土佐町は、その地理的条件(早明浦ダム湖)を最大の資産として活用し、全国水準のカヌー競技環境という独自のバリューを生み出しました。

スポーツコミッションという組織形態の活用も注目点です。行政・学校・民間・スポーツ団体の橋渡し役として機能し、各関係団体の情報一元化と役割分担を実現した土佐町SCのモデルは、多様なステークホルダーをまとめる必要がある地域移行において有効なアプローチを示しています。月額300円・保険料無料という保護者負担設計は、経済的格差を解消しつつ持続可能な財源設計を両立する工夫として、特に小規模自治体が参考にすべき点です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

小規模・中山間地域でスポーツコミッション主導モデルを導入する際の最大のハードルは、SCの立ち上げと運営人材の確保です。土佐町では令和元年に先行してSCを設立していたことが、令和5年の実証事業受託・地域クラブ活動開始の土台となりました。他自治体では、既存の体育協会・スポーツ推進委員会を母体としたSC設立、または総合型地域スポーツクラブとの連携から着手することで、ゼロベースの立ち上げコストを削減できます。地域固有の自然環境・文化資源を活用した「その地域ならではの部活動」というブランド化は、担い手確保と生徒の参加意欲向上の両面で効果的です。

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