トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県那珂市の部活動地域展開 ─ 軟式野球教室NBFJへ全5校野球部の休日活動を先行移行・令和9年度中の休日完全移行へ
野球 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県那珂市の部活動地域展開 ─ 軟式野球教室NBFJへ全5校野球部の休日活動を先行移行・令和9年度中の休日完全移行へ

公開:2026.08.20 更新:2026.08.20
この記事でわかること

・那珂市が既存の軟式野球教室NBFJを受け皿に全5校野球部の休日活動を先行移行した経緯
・生徒満足83%・顧問全員の負担軽減と、保護者6割不満・送迎負担という移行初年度の実像
・月会費3,000円の受益者負担設計と令和9年度中の休日完全移行に向けた課題

自治体名 茨城県那珂市
人口規模 約5.3万人(53,101人)
中学校数 5校(生徒数1,259人・運動部42部+文化部8部)
運営形態 任意団体「那珂市軟式野球教室NBFJ」への業務委託(市教委がコーディネート)
対象競技 軟式野球(モデル事業として先行実施)
保護者負担額 月会費3,000円+スポーツ安全保険料 年800円

取り組みの概要

那珂市の市立中学校5校の生徒数は令和6年度に1,259人と、10年前の平成27年(1,494人)から約16%減少しています。生徒数の減少で団体競技の部活動が成り立たず、野球やサッカーでは他校との合同チームでの大会出場や拠点校方式での受け入れが発生し、部活動を理由に学区外へ通うケースや希望しない部活動への入部など、各校の選択肢が減っている状況でした。市は児童生徒・教員へのアンケートを踏まえて「那珂市部活動地域移行推進計画」を策定し、地域の活動団体等の資源を生かして段階的に進め、令和9年度中に休日の活動の完全移行を目指す方針を掲げました。令和6年度は従来の地域移行検討委員会に加えて市部活動地域移行推進協議会を新設し、モデル事業として同年10月から任意団体「那珂市軟式野球教室NBFJ」と連携して全中学校の野球部の休日活動を地域移行。野球部所属生徒の約6割にあたる18人(1年生8人・2年生10人)が週1回・午後の活動に参加しました。

特徴的な取り組み

  • 既存の野球教室を受け皿にした種目先行モデル: 地域移行を見据えて活動していた那珂市軟式野球教室NBFJに業務委託し、令和6年度中に全中学校の野球部の休日移行を実現。移行過程を市内のスポーツ団体と共有し、他競技への横展開の土台にしています。
  • 検討委員会+推進協議会の二層の合意形成: 市教委と学校代表による検討委員会に加え、スポーツ協会・スポーツ少年団・文化協会等の関係団体や保護者も含めた推進協議会を設置し、推進計画の策定まで完了しました。
  • データに基づく検証: 参加生徒・保護者・指導者・顧問教諭それぞれにアンケートを実施。生徒の83%が概ね満足、顧問教諭は全員が業務負担の軽減を実感と、立場ごとの効果と不満を定量的に把握しています。
  • 市内スポーツ団体への意向調査: 他種目の受け皿候補となる市内スポーツ活動団体へ地域移行に関する意向アンケートを実施し、受け入れ可否を含めた意見交換につなげる計画です。

課題と解決策

課題 解決策
移行開始が当初予定の9月から10月に遅れた(保護者への情報周知不足) 実証事業対象部の保護者説明会を開催し、次年度以降は推進協議会に諮りながら計画的に周知を実施
部活動の運営方針に定められた練習時間では技術の習得が不十分という指導者の意見(指導者の66%が活動時間に不満) 次年度は移行の方法等について変更も視野に調整
保護者の6割超が全体的な満足度で不満と回答し、6割以上が送迎に負担 アンケートで課題を可視化し、活動場所・移動手段を含めた運営見直しの材料とする
野球以外の種目で地域の活動団体との受け入れ調整が進んでいない スポーツ団体アンケートの結果を踏まえ、運営費用・スタッフ確保・活動場所の課題について意見交換しながら移行可能な方法を模索

成果・効果

モデル事業に参加した生徒18人へのアンケートでは83%が概ね満足と回答し、参加生徒の約8割が「休日の活動で(他の学校を含む)友達と楽しく活動ができている」と答えました。平日の部活動への参加意欲も66%の生徒が「高まった・やや高まった」としています。野球部の顧問教諭へのアンケートでは全員が業務負担が軽減されたと回答しており、教員の働き方改革の面でも効果が確認されました。一方で、保護者の満足度や送迎負担、指導者の練習時間への不満など移行初年度ならではの課題も率直に公開されており、市は推進計画に示したスケジュールに沿って、活動団体と連携した他競技への段階的な移行を進めるとしています。

出典

→ 原文: スポーツ庁 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 茨城県那珂市(茨城県教育委員会掲載PDF)

→ 参考: 茨城県教育委員会「部活動地域展開」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

那珂市の報告書の価値は、成功だけでなく「うまくいっていないこと」を定量的に公開している点にあります。生徒の満足度83%・顧問教諭全員の負担軽減という成果の一方、保護者の6割超が不満・6割以上が送迎負担と回答し、指導者の3人に2人が練習時間に不満という数字まで開示されています。特に顧問教員の「受け皿となる団体があるせいで学校での部活動ができなくなったとの印象を保護者や生徒にもたれてしまう」という声は、移行初期に多くの自治体で起こる摩擦を言語化した貴重な記録です。月会費3,000円という受益者負担も、無償型が多い先行事例の中では現実的な水準設定であり、費用と満足度の関係を考えるうえで参考になります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

那珂市が経験したように、移行開始時期の遅れは保護者への情報周知の不足から生じがちです。移行スケジュールは保護者説明会とセットで逆算し、部費や送迎など保護者の負担が変わる項目は文書で早期に示す必要があります。また、既存の競技教室を受け皿にする方式は立ち上げが速い反面、「学校部活動の運営方針に合わせた練習時間」と「競技団体が理想とする練習量」のギャップが必ず表面化します。委託契約の段階で活動時間・大会参加・謝金の扱い(那珂市の指導者は謝金不要と回答)を明文化しておくことが、初年度の混乱を減らす鍵です。加えて、コーディネーターを配置しなかった那珂市の体制は小規模自治体では現実的ですが、他競技へ広げる局面では調整業務が急増するため、専任者の確保を早めに検討すべきです。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会と推進協議会の二層構造に保護者・関係団体を参画させ、推進計画の策定まで到達した合意形成プロセスは堅実です。立場別アンケートを毎年度の検証材料として使う姿勢も、計画の軌道修正を可能にする仕組みとして評価できます。財源面は月会費3,000円の受益者負担が基本で補助金依存度が低い一方、保護者の不満との均衡が今後の焦点です。令和9年度中の休日完全移行に向けては、野球以外の受け皿確保(運営費用・スタッフ・活動場所が課題と回答した団体が多い)が最大のボトルネックであり、団体側への支援策の設計が持続可能性を左右します。

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