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【事例】神奈川県平塚市の部活動地域展開 ─ 特別地域指導者の派遣と生徒派遣交付金で学校部活動を支える地域連携モデル

公開:2026.08.11 更新:2026.08.10
この記事でわかること

・平塚市は学校部活動を維持しつつ、顧問不在時に指導できる特別地域指導者の派遣制度を整備
・県中体連登録の地域クラブで全国大会等に出場する生徒への派遣交付金を制度化
・平成31年策定の部活動方針を3度改定しながら制度を積み増す漸進型の地域連携モデル

自治体名 神奈川県平塚市
人口規模 約25.7万人(令和8年7月1日時点・推計人口)
中学校数 15中学校区
運営形態 行政主導(市教育委員会。学校部活動を維持しつつ地域人材を派遣)
対象競技 全部活動(運動部・文化部の区別なく方針を適用)
保護者負担額 調査時点で未公表(公式資料に記載なし)

取り組みの概要

平塚市は平成30年2月に生徒・保護者・教職員を対象とする市独自アンケートを実施し、その結果を踏まえて平成31年2月に「平塚市立中学校に係る部活動の方針」を策定しました。方針は令和2年3月・令和5年3月・令和6年3月と3度改定され、制度を積み増しながら運用されています。令和8年度施政方針では「部活動の地域展開に向けた取組として、引き続き中学校の部活動指導員を配置するほか、学校運営協議会の活動を通して、学校教育や学校運営の課題解決に向け、地域との連携を強化します」と市長が明言。地域クラブへの一斉移行ではなく、学校部活動を維持しながら地域人材の派遣と地域クラブ活動への支援を並行させる地域連携型を採っています。アンケートでは部活動未加入・無回答を除く81.8%の生徒が部活動を「楽しい」「どちらかといえば楽しい」と回答しており、学校部活動への満足度の高さが方針の土台にあります。

特徴的な取り組み

  • 特別地域指導者制度: 「学校からの要請に応じて休日に部活動顧問が不在でも指導できる地域指導者を特別地域指導者として派遣する」と方針に明記。顧問の休日負担を軽減しつつ活動を継続できる仕組みです。
  • 研究指定の地域活動への指導者派遣: 市教育委員会が研究推進を目的として指定する「中学生の部活動に準ずる地域での活動」へも地域指導者を派遣し、地域展開の入口となる活動を支えています。
  • 地域クラブ活動への生徒派遣交付金: 神奈川県中学校体育連盟に登録市町村を「平塚市」として団体登録している地域クラブ活動から全国大会・関東大会等に出場する市立中学校の生徒を支援。申請は保護者から教育指導課へ直接行う制度設計です。
  • 休養日・活動時間の数値基準: 週2日以上の休養日(平日1日・週末1日)、平日2時間程度・休業日3時間程度、朝練習は行わない、長期休業中のオフシーズン設定を明文化しています。
  • 学校運営協議会(コミュニティ・スクール)経由の地域連携強化: 令和8年度施政方針で、学校運営協議会の活動を通じた地域との連携強化を地域展開の取り組みとして位置付けています。

課題と解決策

課題 解決策
市アンケートで生徒の困りごとは「勉強との両立」が最多。疲労や休養不足の声も上位 週2日以上の休養日と活動時間上限を方針に明記し、朝練習は行わないと規定
教員の働き方改革と休日指導の負担 部活動指導員の任用・学校派遣に努め、顧問不在時は特別地域指導者を派遣

成果・効果

市独自アンケート(平成30年2月)では、部活動未加入・無回答を除く81.8%の生徒が部活動を「楽しい」「どちらかといえば楽しい」と回答しています(取り組み前の実態値)。地域展開に関する定量的な成果はまだ公表されていませんが、方針を3度改定しながら特別地域指導者・生徒派遣交付金といった制度を段階的に整備しており、学校部活動の質を保ちながら地域との接点を広げる段階にあります。

出典

→ 原文: 平塚市立中学校に係る部活動の方針(平成31年2月策定・令和6年3月改定)
→ 参考: 地域クラブ活動に係る生徒派遣交付金(平塚市公式サイト) / 令和8年度施政方針(平塚市公式サイト)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

平塚市は「移行」の看板を掲げず、学校部活動の持続を前提に地域資源を注ぎ込む堅実型です。注目すべきは制度の緻密さで、顧問不在でも指導できる特別地域指導者、研究指定活動への派遣、県中体連登録の地域クラブで大会に出場する生徒への派遣交付金と、学校と地域の境界で実際に起きる実務の穴を一つずつ制度で塞いでいます。派手なブランド事業はなくても、方針を3度改定しながら制度を積み増す漸進型は、多くの自治体にとって最も再現しやすい進め方です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

地域連携型の弱点は、「いつまでに何を移すか」という期限がないため推進力が生まれにくいことです。平塚市も地域クラブの運営主体や費用負担といった本格的な地域展開の設計はこれからで、県全体の枠組みの進展に左右される面があります。この方式を採る自治体は、指導者派遣や交付金の整備と並行して、協議会など次の段階を検討する場をあらかじめ設けておくと停滞を防げます。また、交付金は県中体連への団体登録という客観要件で対象を絞っており、公費支出の線引きに悩む自治体はこの要件設計が参考になります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

アンケートに基づく課題認識から休養日基準まで方針文書として一貫して公開されており、透明性は高い水準です。生徒派遣交付金は県中体連への団体登録・校長確認という要件が明文化され、公費支出の統制も効いています。一方、地域展開の目標時期や数値目標は示されておらず、長期的な持続可能性の評価は今後の制度設計の具体化を待つ段階です。

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