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【事例】神奈川県南足柄市の部活動地域展開 ─ 生徒数40.3%減で合同チームも限界、市が自ら運営団体となり会費0円で3種目を統合

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・生徒数40.3%減という前提と、合同チームを「一時的な措置」と位置付ける南足柄市の判断
・市(自治体)自身が運営団体となり会費0円で3種目を統合した実証の中身
・4月コーディネーター採用から10月開始まで月単位で組まれた準備工程

自治体名 神奈川県南足柄市
人口規模 38,744人(令和7年度・実証事業報告書)
中学校数 公立中学校3校(南足柄中・岡本中・足柄台中)・生徒数1,021人・運動部活動11部活
運営形態 南足柄市(自治体)が運営団体。統括コーディネーターを採用し運営事務局を設置。教育委員会教育指導課と首長部局文化スポーツ課で分担
対象競技 サッカー、陸上、女子バスケットボール
保護者負担額 0円(令和7年度)

取り組みの概要

南足柄市の中学校生徒数は平成5年度の1,671人から令和5年度は998人となり、30年間で40.3%減少しました。現在の小学校の児童数を参考にすると、令和12年度には令和6年度の約3分の2の人数になると予測されています。部活動に所属している生徒数も令和元年度の951人から令和6年度はおよそ100人減の859人となり、特に団体競技において学校単位でチームを組むことができないケースが近年増加しています。市は合同チームについて「あくまで一時的な措置のため、毎年組む学校が変わることや距離的に遠い他の自治体の学校と合同チームを組まざるを得ない場合も多く、休日の練習に係る移動や活動の時間的制限等が課題」と指摘しました。こうした状況をふまえ、市は自ら運営団体となる「南足柄市地域クラブ(仮称)」を立ち上げ、令和7年10月から令和8年3月にかけてサッカー・陸上・女子バスケットボールの3種目を会費0円で実施しています。

特徴的な取り組み

  • 合同チームの限界を言葉にする: 市は合同チームが一時的な措置であるがゆえに、毎年組む学校が変わること、距離的に遠い他自治体の学校と組まざるを得ない場合が多いこと、休日の練習に係る移動や活動の時間的制限が生じることを課題として明記しました。合同チームを恒久的な解決策とみなさない立場です。
  • 市(自治体)が運営団体になる: 地域クラブの運営団体種別は「自治体」です。3校・生徒1,021人・運動部11部活という規模で受け皿団体を新設せず、市が運営主体を引き受けています。
  • 統括コーディネーターを4月に採用する: 年度当初の4月に統括コーディネーターを採用し、活動場所の利用調整、スケジュール調整・管理、学校や指導者との連絡調整を担わせています。運営事務局にはスタッフも配置されています。
  • 教職員アンケートで兼職兼業希望者を把握する: 令和7年6月に教職員アンケートを実施し、教職員のニーズと兼職兼業を希望する教職員の把握を行いました。7月に指導者を登録し、9月以降の日程を確定して各中学校へ周知しています。
  • 会費0円で6回の練習会を積み上げる: 令和7年10月から令和8年3月まで、月1回のペースで第1回から第6回までの練習会を開催しました。会費は0円です。
  • 教育委員会と首長部局で役割を分ける: 教育委員会教育指導課が学校の状況把握、推進計画の策定、学校および保護者への説明、参加生徒の募集と連絡を担当し、首長部局文化スポーツ課が統括コーディネーターの採用、地域展開の進行管理、予算管理、練習会場の確保等に係る調整、指導者の登録等の管理、指導者研修会の実施を担当します。
  • 保護者との連絡ツールを事前に整備する: 10月の開始に先立ち、令和7年8月に保護者との連絡ツールの体制整備を工程に組み込みました。
  • 翌年度の対象競技と予算を年度途中に決める: 令和7年10月の段階で、令和8年度以降の対象競技の検討・決定と、令和8年度予算要求内容の検討・決定を行っています。

課題と解決策

課題 解決策
中学校生徒数が平成5年度の1,671人から令和5年度は998人へ40.3%減少し、令和12年度には令和6年度の約3分の2になると予測されている 3校の枠を越えて参加できる「南足柄市地域クラブ(仮称)」を市が運営団体となって立ち上げ、サッカー・陸上・女子バスケットボールの3種目で実施する
合同チームは一時的な措置であるため毎年組む学校が変わり、距離的に遠い他自治体の学校と組まざるを得ない場合も多い 市内3校の生徒が各自の希望する地域クラブに参加できる仕組みとし、恒常的な受け皿を用意する
他自治体との合同チームでは休日の練習に係る移動や活動の時間的制限が課題となる 活動場所は市内学校施設等を用い、統括コーディネーターが活動場所の利用調整とスケジュール管理を担う
指導者を確保する必要がある一方、指導を希望する教職員の意向が把握できていない 令和7年6月に教職員アンケートを実施して教職員のニーズと兼職兼業を希望する教職員を把握し、7月に指導者を登録する
新しい枠組みの連絡体制が整っていない 令和7年8月に保護者との連絡ツールの体制整備を行ったうえで、9月に練習会の最終調整、10月に第1回練習会を開催する
会費負担が参加の障壁になりうる 令和7年度の会費は0円とし、参加のハードルを下げたうえで実績を検証する

成果・効果

令和7年10月から令和8年3月まで実施された「南足柄市地域クラブ(仮称)」は、サッカーが休日4回、陸上が休日5回、女子バスケットボールが休日5回の活動でした。実施時間帯は9時から11時、または13時から15時です。参加者は1年生35人、2年生32人、3年生2人の計69人で、指導者はサッカー5人・陸上4人・女子バスケットボール3人の計12人、運営スタッフは5人(うち兼務5人)です。会費は0円、大会参加方法は中学校体育連盟については部活動としています。移行された部活動数は1クラブ・3部活動でした。

令和6年度の南足柄市公立中学校の部活動加入生徒等の状況(令和6年5月調査)では、運動部が延べ28部活・文化部が延べ8部活あり、運動部活動加入率は約85%です。市内競技全体の人数はバレーボール59人、バスケットボール104人、卓球144人、サッカー88人、野球47人、陸上競技70人、ソフトテニス97人、文化部では吹奏楽128人、美術78人、科学技術18人、特設茶道26人となっています。工程面では、令和7年5月に第1回南足柄市立中学校部活動の地域移行に関する関係者会議、令和7年12月に市広報による活動周知、令和8年3月に第2回関係者会議が実施されました。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 神奈川県・藤沢市・秦野市・南足柄市・大磯町・山北町」(PDF)

→ 原文: スポーツ庁「事例集・全国の取組紹介」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

合同チームは部員不足への現実的な対処として全国で広がっていますが、南足柄市はその限界を正面から書きました。毎年組む学校が変わるため人間関係も指導方針も毎年リセットされ、距離的に遠い他自治体の学校と組まざるを得ない場合は移動と活動時間の制約が重くのしかかります。市はこの「一時的な措置」を積み重ねる方向ではなく、市内3校の生徒が恒常的に参加できる地域クラブを、市自身が運営団体となって立ち上げる道を選びました。生徒数が30年で40.3%減という数字を前にすれば、合同チームで凌ぐ発想には期限があります。参加者69人のうち3年生がわずか2人で1・2年生が67人を占める構成も、この枠組みが下の学年から定着していくことを示唆しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

市が運営団体を兼ねる方式は、受け皿団体が育っていない段階では合理的ですが、費用構造が全額公費になります。会費0円という設定は令和7年度の実証だからこそ成立しており、令和8年度以降も同じ水準を保てるかは予算次第です。市が令和7年10月の時点で令和8年度の対象競技と予算要求内容を検討・決定している点は、この課題を認識したうえでの動きと読めます。導入する自治体は、無償期間中に1人あたり年間コストを把握し、有償化の水準と時期を早めに示すべきです。次に、運営スタッフ5人が全員兼務である点も見過ごせません。統括コーディネーター1人と兼務スタッフだけで3種目・69人・6回の練習会を回す体制は、種目を増やした途端に破綻しかねません。競技数の拡大と事務局体制の増強を同じ計画に乗せる必要があります。第三に、大会参加は中体連については部活動として行う整理であり、平日の学校部活動が残ることが前提です。平日の部活動をどうするかは別途の検討課題として残ります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進計画を策定済みで協議会も設置済み、統括コーディネーターを4月に採用し、6月の教職員アンケート、7月の指導者登録、8月の連絡ツール整備、9月の最終調整、10月の開始という工程を月単位で組んでいる点は、準備の順序として整っています。教育委員会教育指導課が学校・保護者側、首長部局文化スポーツ課がコーディネーター採用・予算・会場・指導者管理という分担も明快です。第1回・第2回の関係者会議を年度の両端に置き、12月に市広報で周知するなど、合意形成と広報も工程に組み込まれています。一方、地域クラブ活動数は1クラブ・3部活動にとどまり、運動部11部活のうち大半は従来どおりです。会費0円と兼務中心の事務局という前提のまま規模を広げられるかが、次年度以降の焦点になります。

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