【事例】栃木県小山市の部活動地域展開 ─ 部活加入率86%・11校が令和7年度末に各1部以上の地域クラブ化を目標に段階整備
・栃木県小山市の地域移行で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
小山市は部活加入率86%という高い参加率を背景に、令和5年度から令和7年度末を対象とした地域移行基本方針を令和6年9月に策定した。市内11校・140部・生徒4,318人を対象に休日部活動の段階的な地域クラブ化を推進し、令和7年度末までに全11校でそれぞれ1部以上を地域クラブ活動へ移行させることを活動目標に設定している。学校規模を大規模・適正規模・小規模の3区分で把握するため令和6年5月に全校訪問・学校長聞き取り調査を実施し、一律でない実情に応じた支援を進めている点がこの取り組みの特徴である。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
令和6年5月現在、地域クラブへ加入した生徒は137人・加入率3%にとどまる一方、保護者の51%が地域移行の方向性に賛成し、教職員の88%が部活動の在り方の改革が必要と回答している。この「賛同はあるが移行が進まない」状態の主因は運営団体と指導者の不足であり、独立した運営団体は小山市弓道会1団体のみ、地域クラブ活動指導者は6名に限られる。こうした状況に対し小山市は、全部活動を一斉に移行するのではなく「まず各校1部の実績を作る」という最小単位での移行目標を設定することで、運営ノウハウの蓄積と次フェーズの計画策定への足がかりを得る段階的戦略をとっている。
📊 ガバナンスと持続可能性の評価
小山市が直面する指導者・運営団体の確保難は全国共通の課題である。同市の事例は、弓道会のような既存競技団体が独立した運営を担えるケースを他種目でも積極的に探すことの有効性を示している。小規模校が学校単独で地域移行を完結できない構造に対しては、近隣校との合同部活動や広域連携を早期から設計することが求められ、傷害保険の市費負担のような財源的配慮も保護者の合意形成を促す要素となる。
・部活加入率86%の高参加率を持ちながら地域クラブ加入率は3%にとどまり、移行はスタート段階
・独立運営団体は弓道会1団体のみ・指導者6名という現状が全校展開への最大の壁
・「令和7年度末・各校1部以上」の目標設定が運営ノウハウ蓄積の最小単位として機能
| 自治体名 | 栃木県小山市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約16.6万人(2020年国勢調査) |
| 中学校数 | 11校(大規模校2・適正規模校5・小規模校4) |
| 運営形態 | 総合型地域スポーツクラブ・スポーツ協会加盟団体等(多様な実施主体、弓道会が独立運営団体として先行) |
| 対象競技 | 各校実情に応じて選定(運動部109部・文化部31部・計140部が対象) |
| 保護者負担額 | 受益者負担(傷害保険等は市費で一部負担) |
取り組みの概要
小山市教育委員会は令和5(2023)年度から令和7(2025)年度末を対象とした「小山市学校部活動の地域移行基本方針」を令和6年9月に策定しました。市内11校(中学校・義務教育学校)合計140部、生徒数4,318人(令和6年5月現在)のうち86%が部活動に参加するという高い参加率を背景に、休日部活動の段階的な地域クラブ化を推進しています。令和5年7月のアンケートでは保護者の51%が地域移行方向性に賛成、教職員の88%が現在の部活動の在り方の改革が必要と回答するなど、改革への理解が高まっています。
特徴的な取り組み
- 全校1部以上の地域クラブ化目標: 令和7年度末までに市内全11校・義務教育学校で、それぞれ1つ以上の部活動を地域クラブ活動へ移行することを活動目標に設定。学校規模(大規模・適正規模・小規模)に応じた実情を考慮した段階的な取り組みを推進しています。
- 弓道会による先行・独立運営モデル: 令和6年5月現在、運営団体として独立的に協力しているのは「小山市弓道会」1団体。他の5校では部活動指導員や外部指導者が地域クラブ活動指導者を兼務しており、弓道会モデルの横展開が今後の課題です。
- 学校規模別のきめ細かい実態把握: 令和6年5月に全中学校・義務教育学校を訪問し、学校長からの聞き取り調査を実施。大規模・適正規模・小規模それぞれの課題を把握し、一律でない学校実情に応じた移行を支援しています。
- 傷害保険の市費負担: 学校教育活動外となる地域クラブ活動では傷害保険が別途必要になるため、市費で一部を負担。保護者の経済的負担軽減に配慮しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 地域クラブ活動指導者の確保が喫緊の課題(現在指導者6名・独立運営団体は弓道会1団体のみ) | スポーツ協会加盟団体・総合型クラブ・地域企業との連携を模索し、運営団体の多様化・拡充を推進 |
| 小規模校での地域移行は学校単独では限界あり | 他校との連携・合同部活動の活用、地域クラブ活動指導者の学校間共有を促進 |
| 令和8年度以降の見通しが立たず地域移行を決定できない学校が存在 | 令和7年度中に各校で少なくとも1部を移行させることで実績を積み、次フェーズの計画策定につなげる |
| 大規模校での雨天時の活動場所確保や用具管理の問題 | 学校施設の活用方針の整理と鍵管理・施設運用のルール化を推進 |
成果・効果
令和6年5月現在、地域クラブ活動への加入生徒は137人(加入率3%)と、まだ全体の一部に留まっています。しかし、部活加入率86%という高い参加率を持つ小山市が「地域移行をスタートしたばかり」の段階にあることを示す数値であり、令和7年度末の目標達成に向けた動きが本格化しています。保護者51%・教職員88%が改革の必要性を認識しており、関係者の合意形成は着実に進んでいます。
出典
→ 原文: 小山市公式ホームページ「部活動地域移行の推進」(小山市教育委員会)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
小山市の事例が示す最も重要な示唆は「高い部活加入率(86%)という強みと、地域クラブ加入率3%という現実のギャップ」です。生徒も保護者も教職員も改革の必要性を理解しており、賛成意見が過半数に達しているにもかかわらず、実際に地域クラブへ移行した部は僅かです。この「理解はしているが動けない」状態の原因は、「指導者」と「運営団体」の確保です。弓道会1団体のみが独立した運営団体として機能しているという現状は、他のほとんどの地域でも同様の課題を抱えていることを示しています。
「令和7年度末までに各校1部以上」という目標設定は現実的かつ効果的です。「全部移行」を一気に目指すのではなく、まず「1部」の実績を全校で作ることで、運営ノウハウと指導者確保の課題を具体的に経験できます。失敗しても影響が小さく、成功すれば次の移行の足がかりになります。この「最小単位で始める」アプローチは、規模が大きく多様な学校が存在する都市部の自治体にとって、特に参考になる手法です。
また、令和6年5月に全校を訪問して学校長から丁寧に聞き取り調査を行い、大規模・適正規模・小規模それぞれの実態を把握した上で方針を策定したことも重要です。「現場を見た上での方針」は実情に即した対応を可能にし、学校の信頼を得やすくなります。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
小山市が直面している「指導者確保」は全国共通の課題ですが、同市の資料が示すように、地域の既存スポーツ団体(競技団体・スポーツ少年団・スポーツ協会加盟団体)をどう巻き込むかが鍵になります。特に弓道会のような競技団体が独立した運営を担えるケースは、他の種目でも探すことが有効です。一方、「小規模校の学校単独では限界がある」という課題については、近隣校との合同部活動や広域連携を早期から設計しておくことが必要です。
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