【事例】広島県東広島市の部活動地域展開 ─ 志和中モデル校で13名の住民指導・西条と黒瀬地区5校で大学生派遣・令和9年度休日新環境移行
・広島県東広島市の部活動地域展開の地域展開で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
| 自治体名 | 広島県東広島市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約19.4万人(中核市) |
| 中学校数 | 市立中学校17校 |
| 運営形態 | 市教育委員会主導/コミュニティ・スクールを基盤とした地域連携モデル+大学連携の学生派遣モデルの2系統で実証 |
| 対象競技 | モデル校(志和中)で各部活動/西条・黒瀬地区5校で大学生指導の競技種目 |
| 移行スケジュール | 2027年度(令和9年度)から休日は新たな環境でのスポーツ・文化・芸術活動へ |
取り組みの概要
東広島市は、令和6年4月から志和中(東広島市志和町志和西)を「モデル校」にして、地域移行の前段階として「地域連携」の形で部活動の地域展開に取り組んでいる。志和中では、部活動の運営主体は学校に残したまま、地域住民に指導を委ねる構造を採用。コミュニティ・スクールの仕組みを生かし、13名の住民が指導者となって各部活動で生徒を教えている。
また、東広島市では令和6年度から、西条・黒瀬地区の5校で広島大学教育学部・大学院人間社会科学研究科、広島国際大学健康スポーツ学の競技経験を持つ学生を派遣してもらい、土日に技術指導を実施するモデル事業を始めている。地域住民モデル(志和中)と大学生派遣モデル(西条・黒瀬5校)の2系統を並走させる点が特徴である。
東広島市では、2027年度(令和9年度)から休日は新たな環境でのスポーツ・文化・芸術活動に変わることが予定されている。これに向けて市教委は「地域移行か地域連携かの方向を見出していきたい」とし、モデル事業の実証成果を踏まえながら市内方針を確定する設計を取っている。
特徴的な取り組み
- 志和中モデル(コミュニティ・スクール基盤): 学校運営主体を残したまま地域住民13名が指導。コミュニティ・スクールの既存の地域参画基盤を部活動指導に転用。
- 大学連携の学生派遣モデル: 西条・黒瀬地区5校で広島大学教育学部・人間社会科学研究科、広島国際大学健康スポーツ学の競技経験のある学生を土日派遣。指導者バンクの新ルートとして大学を活用。
- 2系統の並走実証: 「地域住民モデル」と「大学生派遣モデル」を同時に走らせ、人材プールの組み合わせ方を比較検証する設計。
- 2027年度(令和9年度)の休日新環境移行をスケジュール化: 改革実行期間(令和8年度〜)に合わせ、休日活動の新環境への移行年度を明示。
- 「地域移行か地域連携かの方向を見出す」姿勢: 一気に完全地域移行を目指すのではなく、モデル事業の結果を踏まえて方向性を選択する慎重な進め方。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 指導者などの受け皿確保 | 志和中ではコミュニティ・スクールの地域住民13名、西条・黒瀬5校では広島大学・広島国際大学の学生を派遣の2ルートで人材を確保 |
| 参加費など保護者負担への懸念 | モデル事業段階では学校運営主体を残し、急激な保護者負担増を回避。本格移行時の費用設計を実証結果から検討 |
| 地区差・学校差の吸収 | 志和(コミュニティ・スクール強い地域)と西条・黒瀬(大学アクセス良い地域)でモデルを使い分け、地区特性に応じた設計 |
| 休日活動の新環境への移行 | 2027年度を目標年度に明示し、それまでにモデル事業の結果を踏まえ「地域移行か地域連携か」の方向を確定する設計 |
成果・効果
東広島市の取り組みは、「コミュニティ・スクールの既存基盤」と「大学との連携」という2つのアセットを同時に活用している点で参照価値が高い。志和中モデルでは13名の地域住民が指導者として継続的に関わり、各部活動で生徒を教える体制が成立。地域住民が「地域が応援する部に成長」と評価する声も報じられている。
大学連携モデルでは、広島大学教育学部・人間社会科学研究科と広島国際大学健康スポーツ学の競技経験を持つ学生が、土日の技術指導を西条・黒瀬地区の5校で実施。指導者バンクとして大学生人材を組み込むことで、地域住民だけでは難しい競技種目の専門指導を補完できる構造を作っている。2027年度の休日新環境移行に向け、両モデルの検証結果が方向性決定の材料となる設計である。
出典
→ 原文: 東広島市立中学校の部活動の地域展開/東広島市ホームページ
→ 原文: 部活動の「地域移行」 モデル校志和中の取り組みをみる 住民指導「地域が応援する部に成長」(東広島デジタル)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
東広島市の事例で参照価値が高いのは、「コミュニティ・スクール」と「大学連携」という地域固有のアセットを部活動地域展開に直接転用している点である。多くの自治体は地域移行を「ゼロから受け皿団体を立ち上げる」議論にしがちだが、東広島市は既存の地域参画基盤(CS)と大学リソースを統合する設計を採っており、立ち上げコストを抑えやすい。
モデル事業を2系統並走させる点も実務的である。地域住民モデルと大学生派遣モデルは、人材の調達ルートと安定性の特性が異なる。住民モデルは継続性が高い反面、競技専門性が偏ることがあり、大学生モデルは競技専門性が高い反面、世代交代が早い。両モデルの結果を比較することで、本格移行時の組み合わせ最適化に向けた知見が蓄積される。
2027年度(令和9年度)の休日新環境移行を明示している点も重要である。国の改革実行期間(令和8年度〜)と整合させつつ、自治体としての目標年度を市民に対して公にしている。「いつ変わるか」が見える化されることで、保護者・生徒・教員の準備が進めやすくなる。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
①コミュニティ・スクールが機能している自治体でないと、住民指導者13名規模の人材を即座に集めるのは難しい。導入時は、まず学校運営協議会の活動実績・地域学校協働本部の有無を確認し、CSが弱い地域では地区社会教育・体育協会のネットワークを代替アセットとして使う設計が必要である。
②大学連携モデルは、市内・近隣に教育学部・スポーツ系学部を持つ大学があるかどうかで成立可否が大きく変わる。東広島市は広島大学・広島国際大学という強力な大学アセットを持つ地域特性が前提となっている。導入時は、市内大学とのMOU・派遣条件(謝金・交通費・保険)を明文化する手順から始める必要がある。
③2027年度休日新環境への移行目標は、市内17校で進度に差があると間に合わない。東広島市が「地区別モデル事業」を採っているのは、地区差を吸収しながら全体スケジュールに乗せるためで、導入する自治体は中学校全体を一斉に動かすのではなく、地区単位での進度設計を最初に組む必要がある。
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