【事例】山形県寒河江市の部活動地域展開 ─ 12参加クラブ197名・部活動総括コーディネーター主導でR7.7休日完全分離へ
・寒河江市が採用した「元校長による部活動総括コーディネーター」の体制設計
・令和7年度実証事業の参加状況(12クラブ・197名・指導者40名)と種目内訳
・西村山広域協議会と連携した小規模都市での地域移行の進め方
| 自治体名 | 山形県寒河江市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3.8万人(2024年時点) |
| 中学校数 | 市立中学校3校(陵東・陵南・陵西) |
| 運営形態 | 市区町村運営型+部活動総括コーディネーター(元校長)主導+スポーツ少年団・スポーツ協会・芸術文化協議会連携 |
| 対象競技 | スポーツ10クラブ(野球・卓球・剣道・バスケ・柔道・新体操・クライミング等)+文化2クラブ(吹奏楽・芸術文化) |
| 保護者負担額 | クラブごとに設定(保険加入を市が補助・指導者謝金制度を検討中) |
取り組みの概要
寒河江市は令和4年度の「中学校部活動の地域移行に関する検討会議」を経て、令和5年度から「寒河江市中学校部活動改革検討委員会」を継続開催し、3年間で地域クラブの仕組みを構築する計画を進めています。令和5年度の中学1年生から学校部活動を任意加入とし、令和5〜7年度で活動時間を段階的に縮減、令和7年7月からは「学校部活動は平日のみ、休日は地域クラブで活動」という休日完全分離を目指す明確なロードマップを公式化しました。元校長を「部活動総括コーディネーター」として配置し、市教委・3中学校・地域クラブの三者をつなぐ仕組みを採用しています。
特徴的な取り組み
- 令和7年度実証事業に12クラブ・197名参加: スポーツ10クラブ+文科2クラブ=計12団体、参加者197名、指導者40名(うち教員13名・兼職兼業6名)が稼働。卓球連盟36名・寒河江ベースボールクラブ23名・陵東ウィンドオーケストラ32名と部活動に匹敵する規模を確保
- 元校長による部活動総括コーディネーター制度: 元寒河江市立陵南中学校校長を市教育委員会に総括コーディネーターとして配置。学校現場の文脈を理解した上で地域クラブとの調整を担う仕組み
- スポーツ少年団・指導者育成研修と連動: 「寒河江市スポーツ少年団指導者・育成母集団研修会」を「第2回寒河江市地域クラブ指導者等研修会」と兼ねて開催し、普通救命講習Iまで含めた指導者育成を一体化
- 文化活動体験DAY(市内小中学生対象): 寒河江市芸術文化協議会主催で文化センターを会場に、フラワーアレンジ・民踊・茶道・詩吟・ギター・eスポーツの6体験教室を一日開催。文化系受け皿の体験機会を確保
- 西村山地区部活動改革協議会: 単独市内では受け皿が不足する競技(新体操等)に対応するため、西村山広域での地区協議会と連携した広域受け皿確保の枠組み
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 受け皿のない競技(新体操・専門種目)の対応 | 西村山地区部活動改革協議会で広域連携。隣接自治体クラブ(城北クラブ等)に所属し演技指導・大会出場まで可能な仕組みを構築 |
| 教員の地域クラブへの関わり方の温度差 | 令和7年度の教員意識調査(回答率76.8%・n=53)で「関わりたい29%/できるだけ関わりたい18%/関わりたくない35%/わからない18%」を可視化。兼職兼業6名で実態を伴った関与モデルを試行 |
| 大会の引率・申込みを学校前提から地域クラブ前提へ変える | 教員意識調査で課題を吸い上げ、検討委員会で大会主催団体への働きかけを検討。指導者の引率・大会申込みの責任所在を明文化する方向 |
| 指導者の質と継続性 | 普通救命講習を必須とした指導者研修+市・スポーツ協会・スポーツ少年団の三者共催で資質向上を制度化 |
成果・効果
令和7年度実証事業には12参加クラブ・参加者197名・指導者40名が登録され、人口3.8万人・中学校3校の小規模都市としては実質的に「部活動の代替受け皿」が機能する規模に達しています。教員側の成果認識として「休日確保ができた」「ワークライフバランスが取れるようになった」「専門的指導が受けられるようになった」という声が多数寄せられており、生徒側でも「自分に合った環境で活動しやすくなった」「選択の幅が出た」という評価が出ています。令和7年7月からの「平日学校・休日地域」完全分離に向けた基盤が整いつつあります。
出典
→ 原文: 寒河江市における部活動改革(寒河江市公式)
→ 原文: 第3回寒河江市中学校部活動改革検討委員会資料(令和7年12月17日)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
寒河江市の取り組みで最も興味深いのは「元校長を部活動総括コーディネーターに据える」体制設計です。地域移行で最大のボトルネックは学校現場と地域クラブの相互理解不足ですが、両方の文脈を熟知した元校長が橋渡し役になることで、調整コストが劇的に下がります。3中学校・教育委員会・地域クラブの三者会議でも、誰も翻訳役を必要としない議論が可能になる点は、人口3.8万人規模の小都市が参考にしやすい形です。
教員意識調査を回答率76.8%という高水準で実施し、その自由記述まで公開している透明性も注目です。「関わりたくない35%」という数字を隠さず公表し、「特殊業務手当がなくなり完全ボランティアになっている」「練習試合の申込みが学校引率前提のままで困る」といった具体的な課題まで明示しています。こうした実態をベースに大会主催団体への働きかけを進める姿勢は、政策議論の質を一段上げます。
西村山広域協議会との連携も小規模都市の現実解として優れています。新体操のように1市内で受け皿を作れない競技は、市内クラブ運営にこだわらず広域協議会経由で隣接自治体のクラブに所属できる仕組みを整えることで、生徒の選択肢を守れます。「全種目を市内で完結」という幻想を捨て、広域連携で実利を取った好例です。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
人口数万人規模の自治体が地域移行を進める際、最大の障害は「種目数の確保」です。寒河江市方式の「広域協議会連携+元校長コーディネーター」は、自前で全種目クラブを抱えないことを前提に設計されています。導入時はまず①隣接自治体との広域協議会を立ち上げ②指導者研修を消防本部の救命講習と兼ねて一体運用③教員意識調査の自由記述まで公開する透明性、の3点が初期セットアップとして有効です。指導者謝金や保険料の支援制度は実証事業の補助金で稼ぐ間に整理し、改革推進期間の終了までに自走可能な財源設計に切り替えるのが現実的な進め方です。
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