トップ 事例を探す 和歌山県 【事例】和歌山県の部活動地域展開 ─ 既存地域クラブ活用の県立校3クラブ先行実証と市町村協議会設置支援で全県移行を牽引
全種目 👥 30万人以上 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 和歌山県

【事例】和歌山県の部活動地域展開 ─ 既存地域クラブ活用の県立校3クラブ先行実証と市町村協議会設置支援で全県移行を牽引

公開:2026.05.03 更新:2026.05.03
この記事でわかること

・和歌山県が既存地域スポーツクラブとの連携でコストゼロを実現した県立校3クラブ先行実証の仕組み
・保護者アンケート79%の数値から月2,000〜4,000円の費用上限を導出した費用設計の方法論
・教育委員会×知事部局の庁内連携と市町村協議会50%設置達成に向けた広域支援体制

自治体名 和歌山県(都道府県レベル実証事業)
人口規模 約88万人(884,627人)
中学校数 125校(生徒数20,076名)
運営形態 既存地域スポーツクラブ(九度山ジュニアソフトテニスクラブ・橋本ジュニアソフトテニスクラブ・紀の国アスリートクラブ)
対象競技 ソフトテニス、陸上競技
保護者負担額 月1,000円〜2,000円(スポーツ安全保険800円/年別途)

取り組みの概要

和歌山県は人口約88万人、公立中学校125校に20,076名の生徒が在籍する(令和6年度)近畿地方の都道府県です。令和6年度、都道府県レベルの主体としてスポーツ庁の地域スポーツクラブ活動体制整備事業(実証事業)に参加しました。県内の公立中学校では約59%の教員が専門性を持たない競技の部活動指導を担っており、指導者の質の問題と教員の負担軽減が喫緊の課題となっていました。

実証では古佐田丘中学校(橋本市・九度山町エリア)を主な対象校として、男女ソフトテニス部の休日活動を「九度山ジュニアソフトテニスクラブ」「橋本ジュニアソフトテニスクラブ」に移行するとともに、陸上競技部の活動を「紀の国アスリートクラブ」で受け入れ、計3クラブ・2校での実証を令和6年12月から開始しました。指導者7名・運営スタッフ7名の体制で、週1回(9:00〜12:00)の活動を実施しています。

並行して、県全域での地域移行推進に向け、市町村担当者研修(年2回)や市町村協議会の設置支援、県内全市町村参加のWebミーティング等を実施しました。令和6年2月時点での市町村協議会設置率は50%(全30市町村中)であり、全市町村への波及を目指して取り組みを強化しています。

特徴的な取り組み

  • 既存地域スポーツクラブを受け皿とした「クラブ立ち上げコストゼロ」の連携型実証:新たにクラブを設立するのではなく、既存の地域スポーツクラブ(九度山ジュニアソフトテニスクラブ・橋本ジュニアソフトテニスクラブ・紀の国アスリートクラブ)と連携し、県立中学校の休日部活動をそのまま地域クラブに委ねる方式を採用。クラブ設立にかかるイニシャルコストを省き、既存インフラを最大限活用した効率的な立ち上げを実現しました。
  • 「教育委員会×知事部局」の庁内連携体制による縦割り解消への取り組み:学校部活動を所管する教育委員会教育支援課と、スポーツ団体・競技団体を所管する知事部局(スポーツ課・県スポーツ協会)が定期的に協議・情報共有する体制を整備。行政内の縦割りを克服し、県として一体的に地域移行を推進する体制基盤を構築しました。
  • 保護者アンケートに基づく「月2,000〜4,000円上限」という費用設計根拠の可視化:県立中学校5校の保護者へのアンケート調査を実施し、保護者の79%が「1回の活動に500〜1,000円が上限」と回答したことを根拠に、月あたり2,000〜4,000円程度が持続可能な参加費の目安として試算。費用設計の客観的根拠を公開し、各市町村の参考データとして活用しています。
  • 広域エリア別中学生人口推計による将来課題の見える化と協議会設置支援:県内を4広域エリアに区分し、令和18年度の中学生人口試算(和歌山市エリアで約6,693名、令和6年度比約74%)を提示。市町村単独では部活動維持が困難になる地域を明示し、広域連携の必要性を啓発しながら市町村協議会設置への支援を強化しています。

課題と解決策

課題 解決策
学校部活担当部署とスポーツ担当部署の縦割りによる連携不足 教育委員会教育支援課とスポーツ課(知事部局)・県スポーツ協会が定期的な協議・情報共有体制を整備。庁内連携の仕組みを明文化して役割分担を明確化
指導者の量的確保と質の向上(専門外指導が約59%という実態) 県スポーツ協会・和歌山大学と連携した「運動部活動等指導者研修会」を開催し、ハラスメント防止・事故防止・指導の在り方を研修。部活顧問・外部指導者・地域指導者を対象に実施
少子化が著しい市町村での単独地域移行の困難性 県内4エリアの中学生人口推計を提示し、広域での取り組みの必要性を啓発。各市町村の協議会設置を支援し、広域連携の仕組みづくりを研究
令和6年度はコーディネーター未配置で推進(県教委指導主事が担当) 指導主事が中心となって実証事業・市町村研修・広報を担当。次年度以降のコーディネーター配置や民間事業者への業務委託を検討

成果・効果

令和6年12月から3クラブが稼働し、県立中学校2校の休日部活動(ソフトテニス・陸上競技)を地域クラブへ移行しました。参加者はソフトテニス2クラブ合計26名(九度山:2年生8名・1年生14名、橋本:2年生2名・1年生2名)、陸上競技クラブ6名(2年生3名・1年生3名)で、指導者7名・運営スタッフ7名体制で活動を継続しています。

市町村への支援としては、5月の市町村担当者研修に52名(26自治体)、2月の研修に41名(22自治体)が参加しました。令和6年2月時点での市町村協議会設置率は50%(15市町村)となり、R6設置予定30%・R7設置予定3%という状況から、全30市町村での設置に向けた支援を継続しています。

出典

→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業報告書(和歌山県)|スポーツ庁

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

和歌山県の事例で最も注目すべきは「既存クラブの活用でイニシャルコストをゼロにした立ち上げ設計」です。新たにクラブを設立すると、登記・規約作成・口座開設・設備調達など相当のコストと時間がかかります。和歌山県では既存の九度山ジュニアソフトテニスクラブや橋本ジュニアソフトテニスクラブ、紀の国アスリートクラブと連携することで、このイニシャルコストをほぼゼロに抑えました。地域に実績ある団体が存在するならば、既存団体との連携が最も低リスクかつ早期に実証を進める方法です。

保護者アンケートに基づく「月2,000〜4,000円が上限」という試算の公開は、費用設計において客観的根拠を示した好事例です。多くの自治体では「いくらなら参加してもらえるか」の議論を定性的な感覚で行いますが、「1回の活動に500〜1,000円を上限と回答した保護者が79%」という数値を根拠に費用目安を導出する手法は再現性があります。他自治体でも保護者アンケートを先行実施し、費用設計の根拠を可視化してから制度設計に入ることをお勧めします。

都道府県レベルでの「庁内縦割り解消」への言及は率直な自己評価として価値があります。学校部活動は教育委員会が所管し、スポーツ団体は首長部局が所管するという縦割りは全国共通の課題です。和歌山県がこれを課題として明記し、教育委員会と知事部局が連携した体制図を作成したことは、この構造的課題に正面から向き合っている姿勢を示しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

和歌山県モデルの最大の応用ポイントは「既存地域スポーツクラブの活用」ですが、活用できる既存クラブが地域にあるかどうかで難易度が変わります。既存クラブがない場合は、スポーツ少年団・総合型地域スポーツクラブ・競技連盟の地方組織が受け皿になりえますが、まずは地域の団体マッピングから始めることが重要です。また、広域エリアでの中学生人口推計という分析手法は、少子化が進む地方部ではどの都道府県でも応用可能です。「このままでは単独で部活動を維持できなくなる」という将来予測を数値で示すことで、保護者・学校・行政が危機感を共有し、地域移行の議論が加速します。

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