【事例】千葉県大網白里市の部活動地域展開 ─ 受け皿1クラブで令和9年4月から休日の学校部活動を原則終了
・令和9年4月から休日の学校部活動を原則実施しないと決めた大網白里市の判断
・800人分の受け皿が必要な一方で地域クラブは卓球1つという実情の開示手法
・受け入れ団体がそろわなくても切り離すと明記した期限先行型の工程設計
| 自治体名 | 千葉県大網白里市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約4.7万人(46,823人・2026年8月1日時点) |
| 中学校数 | 3校(大網中763人・増穂中224人・白里中92人/計1,079人・2025年5月1日現在) |
| 運営形態 | 行政直営(運営事務局は大網白里市教育委員会生涯学習課・管理課が兼ねる) |
| 対象競技 | 野球・サッカー・陸上競技・ソフトテニス・ソフトボール・バスケットボール・バレーボール・卓球・バドミントン・剣道・柔道・吹奏楽・美術(休日33部) |
| 保護者負担額 | 原則、受益者負担(市の援助範囲・生活困窮世帯への対応は今後の検討課題と計画に明記) |
取り組みの概要
大網白里市は、令和8年2月17日の定例教育委員会会議で「大網白里市地域部活動推進計画(令和8年度〜令和13年度)」を決定しました。計画は、令和7年10月に立ち上げた「大網白里市地域部活動推進協議会」の3回にわたる協議と、令和7年12月から令和8年1月にかけて実施したパブリックコメントを経てまとめられたものです。
市が計画で示した目標は明確です。まず令和10年度までに全中学校の「休日」の地域展開を目指し、その前段として令和9年度4月から、学校の部活動指導は原則、平日のみとするとしています。中体連主催大会前1か月のみ、週当たりの活動時間が11時間程度の範囲内に収まり、かつ部活動指導員の配置等により教師に過度な負担をかけずに活動を実施できる場合には、週当たり2日以上の休養日を設けたうえで柔軟な対応も可能とする例外を置いています。
市が直面している現実も、計画に率直に書き込まれました。市内中学校の在籍生徒数は平成27年からの10年間で約16%減少し、令和7年からの今後10年間でさらに約36%の減少が見込まれています(令和7年1,079人→令和17年715人)。一方で各学校とも現在80%前後の生徒が学校部活動に加入しており、地域展開を進めるためには現在800人程度の受け皿が必要と計画は算定しています。
ところが、令和8年度中に目指す休日の活動形態を種目別に整理した表を見ると、運動部30部・文化部3部の計33部のうち、地域クラブ活動として実施できる見通しが立っているのは卓球の1つのみ。残り32部は「顧問単独又は+外部指導者」による学校部活動のままです。800人分の受け皿が必要な状況で、地域クラブは1つ。このギャップを隠さずに公表した点が、この計画の特徴です。
特徴的な取り組み
- 受け皿の不足を数値と表で開示: 「令和8年度中に目指す休日の活動形態」を種目・ジャンル別の表にし、学校部活動(顧問単独又は+外部指導者/合同部活/拠点校部活/部活動指導員)と地域クラブ活動のどちらで実施するかを1部ずつ記載。総計33部のうち地域クラブ活動は1という数字がそのまま読み取れる形式です。
- 課題を20項目近く箇条書きで列挙: 「これまで中学生を対象とした地域クラブがほとんどない」「指導者がいない(地域クラブを責任もって立ち上げられる方がいない)」「部活動指導員の導入については、人材と独自財源の確保が難しい」「どうしても指導者がいない場合は、保護者の中で輪番等で、安全確保や鍵の管理等も含め、お願いする部分が出てくる」など、行政文書としては異例の率直さで課題を並べています。
- 「受け入れ団体が完全にそろわなくても切り離す」と明記: 課題の一つとして「受け入れ団体が完全にそろわなくても、最終的には学校から部活動を切り離すことが必要となる」と記載。受け皿が整うまで待つのではなく、期限を先に固定する立場を取っています。
- 教職員の居住地を基準にした関与を構想: 「部活動を指導したいと考えている教職員については、自分が居住している地区を原則として関われるようにすべきと考える。異動しても継続できる部活動にしていく必要がある」と記載。人事異動で指導が途切れる構造への対処を計画段階で言語化しています。
- 近隣市町村との足並みをそろえる方針: 「市内に限らず、近隣市町村とも連携し、居住地が近いところで活動できるようにしていく必要がある」「保護者に安心感を与えるため、近隣市町村で足並みを揃えられると良い。情報共有を常に図っていく必要がある」と、単独自治体で完結しない設計を志向しています。
- 「トップレベル」だけを目指さないクラブ像: 「『トップレベル』の地域クラブを全て用意することはできないが、創設への対応は確実に行い、『魅力を味わう』地域クラブや『スポーツ・文化芸術活動のきっかけ』となる地域クラブづくりを念頭に、地域の実情を踏まえ地域全体で支える仕組み作りをする」と、競技志向以外の受け皿を明示的に位置づけました。
- 地域クラブ見学会で生徒・保護者が選ぶ: 取組事項に「地域クラブの見学会を実施し、生徒及び保護者の判断により参加する地域クラブを選ぶ」と記載し、割り当てではなく選択制を前提としています。
- 用語を定義してから議論する: 計画本文に「地域部活動=地域受け皿として設置されたクラブ組織で運営する活動」「地域クラブ=地域住民や生徒が任意に参加する非学校組織型の活動」「学校部活動=主に学校内で指導教諭の元で運営する活動」「部活動=学校在籍生徒が参加する従来の学校主催の活動」という用語解説を設けています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| これまで中学生を対象とした地域クラブがほとんどなく、休日33部に対して地域クラブ活動は卓球1つのみ | 令和8年度に地域クラブの公募を開始し、準備が整った部活動から随時、地域展開を進める。スポーツ協会・文化協会・地域クラブ・スポーツ団体・文化芸術団体に方針を説明して協力を依頼する |
| 地域クラブを責任もって立ち上げられる指導者がいない | 運営事務局(教育委員会生涯学習課・管理課)が地域クラブの公募や説明会を実施し、相談窓口となる。活動場所の調整や指導者研修など必要に応じて支援する |
| 受け入れ団体が完全にそろわない状態で期限を迎える可能性がある | 「受け入れ団体が完全にそろわなくても、最終的には学校から部活動を切り離すことが必要となる」と方針を明示し、令和9年4月から休日の学校部活動を原則実施しないことを事前に周知する |
| 活動場所と自宅との移動方法、夜間活動の安全確保 | いつ・どこで実施するかにより移動方法を検討する必要があると計画に明記。運営事務局が活動場所の調整を担う |
| 原則受益者負担だが、生活困窮世帯への対応が定まっていない | 市がどこまでどのように援助するか、生活困窮者にはどうするかを今後検討する課題として計画に記載 |
| 設置可能な地域クラブ数によって生徒の興味に合う選択肢が用意できない | 「トップレベル」だけでなく「魅力を味わう」クラブや「スポーツ・文化芸術活動のきっかけ」となるクラブづくりを念頭に、地域全体で支える仕組みをつくる |
| 学校部活動で使用している備品の共有方法が未整理 | 備品の使用について協議が必要と計画に明記し、活動場所についても学校施設と公共施設のどちらを利用するか検討を進める |
成果・効果
大網白里市は令和8年2月に推進計画を決定し、同月から地域クラブの公募及び設立の協力依頼を開始、3月にはホームページ等で周知を始めました。令和8年度前期には第4回推進協議会を開催して令和8年度の取組を確認するとともに、校長会議・教頭会議での説明、保護者への方針周知、新1年生(保護者)への説明会、地域クラブへの方針説明を順次実施する工程が組まれています。
令和8年度後期には第5回協議会で進捗を確認し、令和9年4月から休日の学校部活動は原則実施しないことを周知します。令和10年度から令和12年度は「準備の整った部から、平日も含めた休日の地域展開を完全実施していく」とし、令和13年度にはすべての部について平日も含めた地域展開を完全実施するという6年間の年次計画が示されました。
推進協議会は年2回程度の開催で、構成員は市教育委員会管理課長、生涯学習課長、スポーツ協会代表、文化協会代表、スポーツ推進委員代表、各中学校長、各中学校保護者代表です。運営事務局は教育委員会が兼ね、地域クラブに関わる人々の相談窓口となります。
出典
→ 原文: 大網白里市「学校部活動の地域展開について」
→ 原文: 大網白里市教育委員会「大網白里市地域部活動推進計画(令和8年度〜令和13年度)」(令和8年2月・PDF)
→ 原文: 大網白里市「人口・世帯数」
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