トップ 事例を探す 千葉県 【事例】千葉県印西市の部活動地域展開 ─ 全9校の野球・女子バレー2種目を先に止めて「印西NEXUS」へ移す二段階移行
全種目 👥 10~30万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 千葉県

【事例】千葉県印西市の部活動地域展開 ─ 全9校の野球・女子バレー2種目を先に止めて「印西NEXUS」へ移す二段階移行

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・モデル校方式ではなく「種目を絞って全9校一斉に止める」印西市の段階移行の設計
・地域クラブ名称「印西NEXUS」と民間事業者委託による専用運営事務局の体制
・小中体連の参加要件から逆算して軟式野球の編成単位を決めた実務的な判断

自治体名 千葉県印西市
人口規模 約11万人(2026年時点)
中学校数 市内中学校9校
運営形態 民間事業者(株式会社アーシャルデザイン)への委託による「印西市地域クラブ運営事務局」が運営
対象競技 軟式野球・女子バレーボールを先行(令和8年9月に全種目へ拡大)
保護者負担額 市公表資料では未提示

取り組みの概要

印西市は、休日の部活動を段階的に地域クラブへ移す工程を、種目を絞った「停止」から始める方式で設計しました。令和7年9月より、市内全9校の軟式野球部と女子バレーボール部について休日の部活動を停止し、地域クラブ活動へ移行します。その1年後の令和8年9月には、全ての種目の休日の部活動を停止し地域クラブ活動へ完全移行する計画です。中学生の休日の活動は学校部活動ではなく、地域クラブ「印西NEXUS(ネクサス)〇〇クラブ」の一員として取り組む形になります。市の取組は千葉県が実施する先行モデル事業(地域クラブ活動体制整備事業)にも参加しており、県はスポーツ庁の補助金を活用して先行して地域移行に取り組む市町村へ財政支援を行っています。

特徴的な取り組み

  • 2種目に絞って先に「止める」: 受け皿ができた種目から少しずつ増やす方式ではなく、軟式野球と女子バレーボールという2種目について市内全9校の休日部活動を一斉に停止し、地域クラブへ移すという明確な区切りを設けました。種目単位で全校を揃えるため、合同チーム編成や大会参加の調整を種目内で完結させやすくなります。
  • 「印西NEXUS」というブランドの設定: 市は地域クラブの名称を「印西NEXUS」と定めました。NEXUSは「結びつき」「連携」「つながり」を意味する言葉で、スポーツ・文化芸術活動を通した学校と地域、いろいろな世代・地域の人とのつながりを象徴させ、市全体で一体感・団結力が深まる事業にしたいという意図から選定されたものです。市はこの取組が県内のみならず全国のフロントランナーになることを目指すとしています。
  • 民間事業者への運営委託と専用事務局: 「印西市地域クラブ運営事務局」を設け、部活動支援事業を行う株式会社アーシャルデザインが運営を担います。事務局が問い合わせ窓口となり、教育委員会指導課と並んで連絡先を公表しています。
  • 種目ごとの個別説明会を積み上げる: 令和7年6月下旬に女子バレーボールの6クラブについて個別説明会を実施し、指導者・ユニフォーム・送迎などの質問や意見を集めました。続いて令和7年8月上旬に軟式野球の個別説明会を予定しています。全体説明会ではなくクラブ単位で行い、運営の具体を詰める進め方です。
  • 大会参加要件に合わせた軟式野球の扱い: 軟式野球は小中体連の参加要件により拠点校型部活動での大会参加を予定しているため、それぞれ所属している学校部活動ごとの合同チームを地域クラブ化して活動していく方式を採ります。大会出場の可否から逆算してクラブの編成単位を決めた例です。
  • リーフレットによる継続的な情報発信: 市は「印西市の部活動地域移行について」と題したリーフレットを継続発行しており、令和7年7月発行分でvol.8に達しています。

課題と解決策

課題 解決策
全種目を一度に地域移行すると運営が破綻するが、受け皿ができた種目から順に移すと学校間で扱いがばらつく 種目を軟式野球・女子バレーボールの2つに絞り、市内全9校で同時に休日部活動を停止して地域クラブへ移す。1年間の検証を経て令和8年9月に全種目へ拡大する
地域クラブになると中学校体育連盟主催大会の参加要件を満たせない種目が生じる 軟式野球は小中体連の参加要件をふまえて拠点校型部活動での大会参加を予定し、所属する学校部活動ごとの合同チームを地域クラブ化する形で編成する
指導者・ユニフォーム・送迎など、保護者の具体的な不安が多岐にわたる 全体説明会だけでなくクラブ単位の個別説明会を実施し、質問・意見を受けてブラッシュアップする
市の職員体制だけでは地域クラブの運営実務を担いきれない 「印西市地域クラブ運営事務局」を設け、部活動支援事業を行う民間事業者へ委託する
新しい枠組みが生徒・保護者・地域に浸透しない 「印西NEXUS」という名称を設定し、リーフレットを継続発行して段階的に周知する

成果・効果

令和7年6月下旬には、女子バレーボールの6クラブについて個別説明会が実施されました。指導者のこと、ユニフォームのこと、送迎のことなど多くの質問・意見が寄せられ、市地域クラブ運営事務局はこれらを受けて地域クラブとして成長できるよう支援するとしています。続いて令和7年8月上旬には軟式野球の個別説明会が予定されました。移行の第1弾となる令和7年9月の地域クラブ開始に向けては、印西NEXUSのユニフォームも準備が進められています。令和8年度には本格モデル事業として休日の全部活動を停止し地域クラブ化する計画で、令和8年4月11日には全体説明会の開催が予定されています。

出典

→ 原文: 印西市「印西市の部活動地域移行について」

→ 原文: 印西市「印西市の部活動地域移行について vol.8(令和7年7月発行)」(PDF)

→ 原文: 千葉県「千葉県の部活動地域移行(地域展開)に関する先行モデル事業」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

段階移行には「学校を絞る」と「種目を絞る」の2つのやり方があります。モデル校方式は準備が整った学校から始められる反面、同じ市内で通う学校によって扱いが変わり、保護者から不公平を指摘されやすいという弱点があります。印西市は種目を絞る方を選び、軟式野球と女子バレーボールについて市内全9校の休日部活動を一斉に停止しました。学校間の不公平は生じず、種目内で合同チーム編成や大会参加の調整を完結できます。さらに軟式野球については、小中体連の参加要件から逆算して拠点校型部活動での大会参加を前提とし、学校部活動ごとの合同チームをそのまま地域クラブ化するという編成を採りました。理念からクラブの形を決めるのではなく、大会に出られる形から逆算してクラブの単位を決めている点が実務的です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

種目を絞る方式で最初に問われるのは、どの種目を先に止めるかの選定根拠です。印西市が軟式野球と女子バレーボールを選んだ具体的な理由は公表資料からは確認できませんが、いずれも団体競技で、部員数の減少により単独校でのチーム編成が難しくなりやすい種目である点は共通しています。導入を検討する自治体は、部員数の推移と合同チーム化の実績を種目別に整理し、「そもそも学校単位が成り立たなくなりつつある種目」から着手すると保護者の納得を得やすくなります。次のハードルは大会参加資格です。地域クラブとして単独出場できるのか、拠点校型部活動として出るのかで、必要な手続きも編成単位も変わります。印西市が軟式野球について先に方針を定めているとおり、種目を決めた時点で都道府県中体連および競技団体へ照会し、参加形態を確定させてから保護者説明に入る順序が安全です。最後に、民間委託の場合は委託が切れた後の運営を誰が担うかを契約時から議論しておく必要があります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

専用の「地域クラブ運営事務局」を設置し、問い合わせ窓口を事務局と教育委員会指導課の両方で公表している点は、責任の所在が明確で評価できます。クラブ単位の個別説明会を積み上げ、リーフレットをvol.8まで継続発行している情報公開の姿勢も、合意形成の面で堅実です。一方、会費水準は市の公表資料では示されておらず、令和8年9月の全種目移行までに保護者負担の全体像を提示できるかが焦点となります。また、運営を民間事業者への委託に依存する構造であるため、県の先行モデル事業による財政支援が終わった後の費用構造をどう組み立てるかが、持続可能性を左右します。

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