トップ 事例を探す 三重県 【事例】三重県いなべ市の部活動地域展開 ─ 「平日は学校・休日は地域クラブ」の完全分離と全部活動を統括する運営団体・諮問監査機関の設計
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【事例】三重県いなべ市の部活動地域展開 ─ 「平日は学校・休日は地域クラブ」の完全分離と全部活動を統括する運営団体・諮問監査機関の設計

公開:2026.07.29 更新:2026.07.29
この記事でわかること

・平日は学校部活動・休日は地域クラブ活動と時間帯で完全分離するいなべ市の制度設計
・全部活動を統括する運営団体への市教委の経費補助と諮問・監査機関によるガバナンス
・二人以上指導・保険加入の義務化やWBGT基準など安全管理を数値で定める手法

自治体名 三重県いなべ市
人口規模 約4.4万人(2024年時点)
中学校数 4校
運営形態 市教育委員会が指定する統括型運営団体(全運動部・文化部を統括/市教委が運営経費を補助・諮問・監査機関を設置)
対象競技 市内中学校が設置している運動部・文化部の全種目
保護者負担額 参加費は保護者負担(金額は調査時点で未公表・困窮家庭への参加費用支援を明記)

取り組みの概要

いなべ市教育委員会は令和4年4月に「いなべ市中学校部活動在り方検討委員会」を設置し、令和5年9月に「いなべ市地域クラブ活動の基本方針」を策定、令和7年3月には「いなべ市学校部活動ガイドライン及びいなべ市地域クラブ活動方針」を策定しました。背景には、少子化の進展により市内の中学校でも活動を継続できなくなった部活動が実際に生じていたことがあります。制度の骨格は明快で、学校部活動は平日に学校の管理指導の下で行い原則休日の活動はなし、地域クラブ活動は休日に市教育委員会が指定する運営団体の管理指導の下で行い長期休業を含めて原則平日の活動はなし、と時間帯で役割を完全に分離しました。基本方針では、活動を通じて「絆」「智」「志」を実感させ、地域総がかりで子どもたちを育てる機運を醸成することを掲げています。

特徴的な取り組み

  • 「平日は学校・休日は地域」の完全分離: 学校部活動と地域クラブ活動の管理運営を時間帯で明確に二分。大会は学校部活動として参加することを基本とし、条件がそろえば地域クラブ活動としての参加も可能とする現実的な設計です。
  • 全部活動を統括する運営団体: 開設するすべての運動部・文化部を統括する運営団体を市教委が指定し、運営にかかる経費を補助。適切な運営を確認する諮問・監査機関を設置し、運営団体と市教委学校教育課の2系統に相談窓口を置きます。
  • 安全・ガバナンスの義務化: 一つの活動場所に二人以上による指導を義務化し、参加生徒・指導員の保険加入も義務化。運営団体にはスポーツ団体ガバナンスコード〈一般スポーツ団体向け〉に準拠した会計処理と情報開示を求めています。
  • 学校施設の無償使用: 地域クラブ活動は学校部活動で日常的に使用している公共施設で活動し、使用料は無償。企業等の協力による施設利用や設備・用具・楽器の寄付を受けられる体制整備も明記しています。
  • 数値基準の明示: 学校部活動は平日4日以内・1日2時間以内(週8時間以内)、地域クラブ活動は1日3時間以内・週当たり休日1日を休養日と設定。熱中症対策は暑さ指数(WBGT)31℃以上で運動中止と具体的に定めています。

課題と解決策

課題 解決策
少子化と競技経験のない顧問教員により従前の体制では活動継続が困難(市内でも廃部が発生) 休日活動を市教委指定の運営団体による地域クラブ活動へ移し、市教委が運営団体の整備充実を支援・経費補助
指導の質の確保とハラスメント防止 指導員研修の実施、暴言・暴力・行き過ぎた指導の根絶を明記し、運営団体と市教委学校教育課の2系統の相談窓口で公平・公正に対処
保護者の経済的負担 会費は活動の維持・運営に必要な範囲で設定し、経済的に困窮する家庭の参加費用支援と、企業の寄付等による負担軽減策を推進
兼職兼業で指導する教員の労務管理 本人の意思確認と学校長の事前確認を経て許可し、市教委と運営団体が連携して勤務時間等の全体管理を実施

成果・効果

平成31年4月に東員町教育委員会と共同で策定した「東員町・いなべ市部活動ガイドライン」を土台に、国のガイドライン(令和4年12月)と三重県のガイドライン(令和5年12月)の内容を反映して制度を更新しており、広域連携の蓄積を活かした段階的な制度設計となっています。地域クラブ活動の開設は「市内の中学校が設置している部活動に限り、条件がそろわないと開設できない」と正直に明記し、指導体制に応じて段階的に機会を確保する方針です。指導員はスポーツ・文化芸術団体の指導員のほか、部活動指導員、退職教員、教員等の兼職兼業、企業関係者、公認スポーツ指導者、スポーツ推進委員、大学生、保護者など幅広い人材から確保するとしています。

出典

→ 原文: いなべ市公式サイト「学校部活動の地域移行について」
→ 原文: いなべ市学校部活動ガイドライン及びいなべ市地域クラブ活動方針(令和7年3月・いなべ市教育委員会)
→ 原文: いなべ市地域クラブ活動の基本方針(令和5年9月・いなべ市教育委員会)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

いなべ市の設計で際立つのは、「平日は学校・休日は地域」という役割分担を例外の少ないルールとして明文化した点と、ガバナンス要件の具体性です。地域クラブに諮問・監査機関を置き、スポーツ団体ガバナンスコード準拠の会計処理・情報開示を求め、二人以上指導と保険加入を義務化する――ここまで運営団体への要求水準を明記した市町村のガイドラインは多くありません。責任の所在(トラブル・事故対応の管理責任は運営団体が担う)まで書き切っているため、学校・保護者・運営団体の間で「誰に相談すればよいか」が迷子にならない構造です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

全部活動を統括する運営団体方式は、窓口が一本化され行政の補助・監督もしやすい反面、その団体の事務局体制が整わないと制度全体が止まるリスクがあります。いなべ市は市教委が経費補助と指導助言を行い、相談窓口を運営団体と市教委の2系統にすることで単一障害点を緩和しています。また「条件がそろわないと開設できない」と最初から明記し、指導体制に応じた段階的開設としている点は、受け皿の質を犠牲にした一斉移行を避ける知恵です。導入時は、開設可否の条件(指導員数・安全体制・保険)を先に文書化してから種目を募る順序が有効でしょう。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

諮問・監査機関の設置、ガバナンスコード準拠、保険義務化、兼職兼業教員の労務管理の二重チェックなど、透明性と安全管理の枠組みは市町村レベルとして高水準です。財源は保護者の参加費負担を原則としつつ市教委の運営経費補助と企業寄付の受け皿を組み合わせる三層構造で、困窮家庭支援も明記されています。一方、会費の具体額や運営団体の名称・体制はガイドライン上では今後の運用に委ねられており、実際の開設数と参加状況が持続可能性を測る次の指標になります。

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