トップ 事例を探す 福岡県 【事例】福岡県小郡市の部活動地域展開 ─ 「休日拠点校方式」を2年間の中継ぎに置き令和9年度に全休日部活動を地域クラブへ
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 福岡県

【事例】福岡県小郡市の部活動地域展開 ─ 「休日拠点校方式」を2年間の中継ぎに置き令和9年度に全休日部活動を地域クラブへ

公開:2026.08.01 更新:2026.08.01
この記事でわかること

・令和7〜8年度は種目ごとに核となる学校を活動場所とする「休日拠点校方式」を推進
・令和9年度に全ての休日部活動を地域クラブ活動へ移行し、管理体制と指導者の立場だけを差し替える
・教職員の8割以上が地域移行を必要と回答する一方、生徒の53%は「どちらともいえない」

自治体名 福岡県小郡市
人口規模 約6.0万人(2026年7月1日時点:59,669人・27,066世帯)
中学校数 5校(小郡・大原・三国・宝城・立石の各中学校)
運営形態 令和7〜8年度は教育委員会が管理する「新しい合同部活動(休日拠点校方式)」、令和9年度から地域クラブ事務局が管理する「地域クラブ活動」へ移行
対象競技 全部活動。令和8年1〜3月に1〜2部活動、4〜7月に3〜5部活動、8月以降に全ての部活動へ段階拡大
保護者負担額 金額は未公表。拠点校方式では学校補助と部での徴収、保険は日本スポーツ振興センター。地域クラブ移行後は受益者負担と公的資金等、保険は任意保険に切り替わる

取り組みの概要

福岡県小郡市は、令和5年4月に小郡市部活動改革協議会を設置し、休日の部活動の地域展開に向けた協議を進めてきました。市が公開した「休日の部活動の地域展開を進めます」は、目標として「生徒一人一人の希望に応える充実した活動の保障」と「指導者の希望を生かした指導体制づくり」の2点を掲げています。

特徴は、地域クラブへ一足飛びに移行せず、令和7〜8年度の2年間に「新しい合同部活動(休日拠点校方式)」を挟んだことです。休日拠点校方式とは、部活動の種類ごとに核となる学校を活動場所として定める仕組みで、1〜3カ所の学校が拠点になります。令和9年度に、すべての休日の部活動を地域クラブ活動へ移行します。

この2段階を選んだ理由は、資料が示す「変わるところ/変わらないところ」の整理から読み取れます。地域クラブになると変わるのは「管理体制」と「指導者の立場」であり、「活動体制」と「指導体制」は基本的に変わらない、と明記されています。先に活動の形を拠点校方式で作り替え、後から管理主体だけを差し替える順序です。

背景には生徒数の減少があります。市内の中学生数は平成26年度から平成30年度にかけて大幅に減少し、その後横ばいが続きましたが、令和10年度をピークに再び減少へ転じ、令和18年度には約500人減ると予測されています。既に人数が足りず単独校では存続できない部活動があるとしています。

特徴的な取り組み

  • 拠点校方式を2年間の中継ぎに置く2段階移行: 令和7年度8〜12月を計画期間(今後の見通し説明・活動体制づくり)、令和8年1〜3月を調整期間(1〜2部活動で開始)、令和8年4〜7月を試行期間(3〜5部活動で随時活動開始)、令和8年8月〜3月を実施期間(全ての部活動で休日拠点校方式を完全実施)、令和9年4月〜を課題修正期間(休日地域クラブ移行完了)と、5期に区切った工程表を公開しています。
  • 「変わるところ/変わらないところ」を図で分離: 地域クラブへの移行で変わるのは、管理主体が拠点校(教育委員会)から地域クラブ事務局へ、費用が学校補助・部で徴収から受益者負担・公的資金等へ、保険が日本スポーツ振興センターから任意保険へ、指導者が部活動指導員・外部指導者・部活動顧問として指導を希望する教職員から公募による地域の指導者・地域の指導者として指導を希望する教職員へ、という4点です。生徒の活動体制と指導者体制は変わらないと明示しています。
  • 拠点校方式段階での5つの約束を明文化: 新しい合同部活動(休日拠点校方式)について、①指導は指導を希望する教職員や専門性が高い外部の指導者が中心となる、②指導が困難な教職員への配慮や輪番制等により指導者の負担軽減を図る、③生徒は所属する学校に希望する部活動がない場合も参加できる、④中体連大会にはこれまで通り合同チーム・学校単独チームで参加できる、⑤練習試合・協会大会へはこれまで通り学校ごとに参加できる、の5点を示しています。
  • 地域クラブ移行後の生徒の選択肢を5パターンで提示: 平日は学校部活動に入部する/しないを選び、休日はA学校部活動と同じ種目の地域クラブ、B学校部活動と違う種目の地域クラブ、C学校の部活動とは無関係に地域クラブ、Dスポーツ少年団等のクラブや教室、E何も活動しない、の5通りから選べる形を図で示しています。
  • アンケート結果を回答率つきで公開: 令和5年9月13日〜29日に実施したアンケートの回答率は教職員88.2%、生徒77.4%、保護者60.8%です。部活動地域移行の必要性について教職員は「必要である」45%、「どちらかといえば必要である」38%で8割以上が必要と回答しました。一方、地域移行された場合の参加希望について生徒は「参加したい」26%、「どちらともいえない」53%、「参加したくない」21%で、半数以上が判断を保留しています。
  • 生徒と保護者の期待のズレを可視化: 地域移行に何を望むかの複数回答で、生徒は「勝敗にこだわらず友達と楽しくできる環境」609が最多で「大会で良い成績を収める」531が続きます。保護者は「自主性・協調性を身につける」530が最多で「大会で良い成績を収める」は193と最少でした。エンジョイ志向と競技志向が生徒側で混在し、保護者は成績よりも人間形成を重視するという構図を市が明示しています。

課題と解決策

課題 解決策
生徒数の減少で単独校では存続できない部活動が既に発生している 部活動の種類ごとに核となる学校を活動場所として定める休日拠点校方式(1〜3カ所)を導入し、所属校に希望する部活動がない生徒も参加できるようにする
管理主体・費用・保険・指導者の立場を一度に変えると現場が混乱する 令和7〜8年度に活動の形(拠点校方式)を先に作り、令和9年度に管理体制と指導者の立場だけを地域クラブへ差し替える2段階に分ける
生徒の半数以上が地域移行に「どちらともいえない」と回答し、判断材料を持っていない 部活動保護者会・PTA総会・生徒ミーティングを試行期間の取組内容に組み込み、目的・内容・見通しを段階的に説明する
大会参加資格が移行によってどうなるか不安が残る 拠点校方式の期間中は、中体連大会にこれまで通り合同チーム・学校単独チームで参加でき、練習試合・協会大会へは学校ごとに参加できることを明記する
指導を希望しない教職員に負担が偏る 指導は指導を希望する教職員や専門性が高い外部の指導者が中心となる体制とし、指導が困難な教職員への配慮や輪番制等を取り入れて負担軽減を図る

成果・効果

令和8年時点では拠点校方式の実施期間に入る段階で、参加者数などの実績値は公表されていません。確定しているのは、令和9年度中に原則として休日の全ての部活動の地域展開を実現するという目標と、平日の部活動については活動時間等の適正化を図り、国や県の事業を活用して単独で部活動の指導や引率を行うことができる部活動指導員を配置するという方針です。これらは「小郡市立学校の教育職員に関する業務量管理・健康確保措置実施計画」(令和8年4月・小郡市教育委員会)にも記載されています。

移行対象の部活動数は、令和8年1〜3月の調整期間に1〜2部活動、4〜7月の試行期間に3〜5部活動、8月以降の実施期間に全ての部活動と段階的に広げる計画です。市内の公立中学校は5校で、人口は令和8年7月1日時点で59,669人・27,066世帯となっています。

出典

→ 原文: 小郡市「部活動の地域展開」

→ 原文: 小郡市「休日の部活動の地域展開を進めます」PDF

→ 原文: 小郡市立学校の教育職員に関する業務量管理・健康確保措置実施計画(令和8年4月・小郡市教育委員会)PDF

→ 原文: 小郡市「市立小学校・中学校」

→ 原文: 小郡市「令和8年度人口」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

小郡市の設計で最も学べるのは、「地域クラブへの移行で何が変わり、何が変わらないか」を分解したうえで、変わる要素を後回しにした点です。地域展開は、活動場所・チーム編成・指導者・管理主体・費用・保険という複数の変数が同時に動くため、保護者にも学校にも変化の全体像が見えにくくなります。小郡市は先に拠点校方式で活動場所とチーム編成を作り替え、生徒の活動体制と指導者体制は変えないまま、令和9年度に管理主体と指導者の立場だけを地域クラブへ移す順序をとりました。動かす変数を年度ごとに絞る発想は、規模の大小を問わず移植可能です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この方式の弱点は、拠点校方式の期間が実質的に学校の業務として残る点です。管理は教育委員会、費用は学校補助と部での徴収、保険は日本スポーツ振興センターのままなので、教員の負担軽減という改革の目的は令和9年度まで本格的には実現しません。指導を希望する教職員と外部指導者が中心という体制と輪番制で負担を抑える設計にはなっていますが、拠点校に指導者が集まらなければ2年間の中継ぎが宙に浮きます。移植する自治体は、拠点校方式の期間中に地域クラブ事務局の設立準備と指導者の公募を並走させ、令和9年度相当の切替時点で受け皿が空にならないよう工程を重ねる必要があります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

アンケートを回答率つきで公開し、生徒の53%が「どちらともいえない」と答えた事実や、生徒と保護者で望むものが食い違っている状況をそのまま示した点は、合意形成の前提を共有する姿勢として評価できます。移行後の費用が受益者負担と公的資金等に変わること、保険が日本スポーツ振興センターから任意保険に変わることを事前に明示している点も、保護者にとって重要な情報開示です。一方、会費の水準と公的資金の規模はまだ示されておらず、地域クラブ事務局の設置主体も公表資料からは特定できません。令和9年度の切替までに、事務局の法人格と費用の実額を示せるかが持続可能性の焦点になります。

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