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【事例】鳥取県倉吉市の部活動地域展開 ─ 推進協議会が「指導者不足・会場確保・運営経費・大会制度・保護者送迎」の共通課題5点を整理

公開:2026.08.01 更新:2026.08.01
この記事でわかること

・推進協議会が共通課題を指導者不足・会場確保・運営経費・大会制度・保護者送迎の5点に整理
・バスケットボール部員148人に対する受け皿不足、教職員の関与意向2割など実数を議事録で公開
・認定地域クラブの要件・広域クラブの可否・兼職兼業の意向調査を次の協議事項として明示

自治体名 鳥取県倉吉市
人口規模 約4.4万人(倉吉市公式ウェブサイト「倉吉市の概要」)
中学校数 5校(東中学校・西中学校・久米中学校・河北中学校・鴨川中学校)
運営形態 検討段階。市が認定する「認定地域クラブ」方式を軸に、市教育委員会(学校教育課・社会教育課)が事務局を務める推進協議会で制度設計を協議中
対象競技 可能な競技等から順次地域展開。陸上競技は指導者不足のため中部地区全体で展開、バスケットボールは受け皿となる団体数の不足が課題として報告されている
保護者負担額 未定。費用負担の在り方は令和8年9月開催予定の第2回推進協議会の協議事項の一つ。国の補助金に対する市の負担は3分の1と説明されている

取り組みの概要

鳥取県倉吉市は、「倉吉市中学校部活動地域展開等推進協議会」を設置し、倉吉の実情に合った部活動地域展開の在り方を検討しています。市が示す基本方針は、平日は学校の管理下で教員や部活動指導員等のもと学校部活動として実施し、休日は部活動指導員・外部指導者を配置しての地域連携を進めて可能な競技等から地域展開するというものです。

協議会は令和7年7月30日の第1回を皮切りに、令和8年1月29日、令和8年5月22日と開催され、会議資料と議事録がその都度公開されています。委員はスポーツ協会・中学校PTA連合会・スポーツ少年団・中学校体育連盟・中学校文化連盟・学校運営協議会・鳥取県教育委員会事務局体育保健課で構成され、事務局は市教育委員会の学校教育課と社会教育課の2課が担っています。

令和8年5月22日の会議では、現状把握と意見聴取の結果として、部活動地域展開等に係る共通課題が「指導者不足・会場確保・運営経費・大会制度・保護者送迎」の5点に整理されました。この5点は多くの自治体が抱える論点をそのまま言語化したもので、議事録では「地域クラブの運営経費は、なかなか見えてこない」という委員の発言も記録されています。

議事録が具体的な数字と率直な懸念をそのまま公開している点が、倉吉市の資料の特徴です。制度が固まる前段階の検討過程を追える資料は多くないため、これから協議会を立ち上げる自治体にとって参考になります。

特徴的な取り組み

  • 共通課題を5点に絞り込んで共有: 部活動地域展開等に係る共通課題を、指導者不足・会場確保・運営経費・大会制度・保護者送迎の5点として協議会で共有しています。論点を絞ることで、次回以降の協議事項(①運営団体の確保と支援=認定地域クラブの要件、②指導者の育成・確保=兼職兼業、③活動の場所、④移動手段、⑤費用負担の在り方)に一対一で対応させる構成になっています。
  • 種目別の受け皿不足を実数で提示: 市内中学生のバスケットボール部員が148人いるのに対し、既存のクラブ数では生徒が活動する場となる団体数が足りないという指摘が議事録に記録されています。一方で陸上競技協会は中学生の指導者が足りないため中部地区全体で展開しており、競技団体ごとに受け皿の広がり方が違うことが可視化されています。
  • 教職員の関与意向を調査: 「教職員が部活動に関わりたいというのは2割程度だった」という報告があり、兼職兼業の届出でどの程度の教員が関わりたいと考えているかを把握すべきという意見が出ています。事務局は中学校だけでなく小学校教員も含めて兼職兼業による地域の指導者としての関わり方を聴取し、種目も確認したいと応じています。今後の予定に「部活動の地域展開に伴う『兼職兼業』に関する意向調査結果(報告)」が明記されています。
  • 認定地域クラブの要件をめぐる論点整理: 地域認定クラブの要件は勝利至上主義ではないことが謳われており、選抜して選手を集めるチームは認められていないこと、認定要件に従えば練習時間等が制限されることが委員から確認されています。ガイドラインに沿った活動であるか、基準を満たしているかを市町が確認する必要があるという意見も出ており、認定に係る様式は令和8年5月時点で未作成と事務局が説明しています。
  • 広域の認定地域クラブをめぐる制度上の壁を指摘: 国の補助金に対する市の負担は3分の1であること、広域の認定地域クラブを認めるかどうかは市町の判断であることが確認されました。市の団体が他町へ行って認定地域クラブになった場合の所属市町の人数割合の規定はなく、市民しか補助対象としない市町もあるため、広域の認定地域クラブが成立しにくい現状があるとされています。
  • 情報が生徒に届かない問題の提起: 学校に部活動はないが受入れ可能な競技を含め子どもたちに何らかの形で情報提供をしたいのに、学校を通じてチラシを配るだけでも断られるという指摘が挙がっています。受け皿があっても情報が届かなければ選択肢にならないという、地域展開の実務でしばしば見落とされる論点です。

課題と解決策

課題 解決策
平日は学校部活動、休日は地域クラブという分担にすると、平日に部活動をしている生徒の休日の活動場所を別に確保する必要が生じる 受入れ可能と回答した団体数が「平日も休日も地域クラブ」の前提と「休日だけ地域クラブ」の前提で変わることを協議会で確認し、活動の場所を第2回の協議事項に位置づけた
バスケットボールのように部員数の多い種目で、既存クラブ数では受け皿となる団体数が足りない 中学生を受け入れていないスポーツ少年団に受入れ範囲を広げてもらう可能性を検討する。「スポーツ少年団は小学生、中学生は部活動」という従来のイメージを変えないと進まないという認識を委員間で共有している
団体競技は作戦の共有が必要で、休日だけ地域クラブで活動する形が成立しにくい 個人競技と団体競技の違いを踏まえ、団体競技で休日は参加しないという選択も強制ではないと事務局が整理。地域クラブに入らず部活動で頑張る生徒が休日だけ練習に参加できるかも論点として記録している
広域の認定地域クラブを認めても、市民しか補助対象としない市町があるため成立しにくい 認定は市町が最終責任を負うものとしつつ、各競技協会とも共通理解を図り、協会と同じ意見のもとで最終結論を出す方向で調整する
受け皿となる活動があっても、その情報が生徒に届かない 学校を通じたチラシ配布以外の周知手段を含め、こういう活動があるという情報が子どもたちに伝わるよう検討することを協議会で要請している

成果・効果

令和8年5月時点では制度設計の途上であり、参加者数などの実績値は公表されていません。到達点として明確なのは、共通課題を5点に整理したこと、次回協議事項を5項目に確定したこと、認定に係る様式が未作成であることを含めて進捗を率直に公開したことです。

今後の予定として、推進協議会の意見書(素案)の検討、認定地域クラブの要件の検討、部活動の地域展開に伴う兼職兼業に関する意向調査結果の報告が挙げられています。第2回推進協議会は9月開催が想定されており、8月頃にこれまでの意見やアンケート結果を事務局で整理した資料を委員へ事前配付する予定とされています。

出典

→ 原文: 倉吉市「中学校部活動地域展開等推進協議会」

→ 原文: 令和8年度第1回倉吉市中学校部活動地域展開等推進協議会(概要)令和8年5月22日 PDF

→ 原文: 倉吉市「倉吉市立小中学校一覧」

→ 原文: 倉吉市「倉吉市の概要」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

倉吉市の資料が価値を持つのは、成功事例としてではなく検討過程の記録としてです。共通課題を5点に整理し、次回の協議事項をその5点に対応させるという運びは、論点が発散しがちな協議会運営の型として真似しやすい構成です。特に「バスケットボール部員148人に対して受け皿の団体数が足りない」という指摘は、種目別の部員数と受入れ可能団体数を突き合わせる作業を先にやらないと移行計画が絵に描いた餅になることを示しています。総論の合意より先に、種目別の需給表を作るべきだという実務的な示唆です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

同様の協議会を立ち上げる自治体が直面するのは、認定地域クラブの要件をどこまで厳しくするかというトレードオフです。倉吉市の議論では、勝利至上主義を排し選抜チームを認めないという要件が、既存の強豪クラブを受け皿から外す方向に働く一方、練習時間等の制限が既存団体の運営実態と合わないという指摘も出ています。要件を緩めれば受け皿は増えるが部活動の教育的意義から離れ、厳しくすれば受け皿が足りなくなるという構造で、この線をどこに引くかは各自治体が自前で決めるほかありません。加えて、広域クラブを認めるかどうかは近隣市町との足並みに依存するため、単独の協議会だけでは結論が出ない論点でもあります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

会議資料と議事録を毎回PDFで公開し、認定に係る様式が未作成であることや教職員の関与意向が2割にとどまることまで記載している点は、透明性の観点で評価できます。委員構成にスポーツ協会・PTA連合会・スポーツ少年団・中体連・中文連・学校運営協議会・県教委が入っており、受け皿側と学校側の双方が同じテーブルにいる設計も妥当です。他方、財源は国補助金と市負担3分の1という枠組みに依存し、費用負担の在り方はこれから協議する段階です。運営経費の見通しが立たないまま開始時期だけが先行しないよう、経費の実額を協議会で早期に示せるかが持続可能性の鍵になります。

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