【事例】鳥取県三朝町の部活動地域展開 ─ スポーツ少年団11単位団に中学生の受入可否を照会し、土曜を地域活動の日にあてる二本立て
・新設クラブではなく既存のスポーツ少年団11単位団を受け皿にする三朝町の選択と、その照会設計
・月1〜2回の土曜日を地域活動の日にあてる「子ども地域活動参加推進事業(仮称)」の具体像
・71団体への調査で判明した受入検討13件の内訳と、最終下校17時45分とスポ少18時開始の15分問題
| 自治体名 | 鳥取県三朝町 |
|---|---|
| 人口規模 | 約6,500人(平成27年国勢調査6,490人。第11次三朝町総合計画では令和10年度に5,500人と想定) |
| 中学校数 | 1校(三朝中学校) |
| 運営形態 | 行政主導(三朝町教育委員会社会教育課。推進体制は「三朝町部活動地域移行検討委員会」) |
| 対象競技 | 受入検討段階:野球、バドミントン、空手、陸上競技、剣道、水泳、ソフトテニス、体力づくり・ニュースポーツ |
| 保護者負担額 | 未設定(令和7年度時点で地域クラブは未発足。受け皿候補団体との協議段階) |
取り組みの概要
三朝町は中学校1校の町です。町は令和5年6月、学識経験者・学校代表・小中PTA代表・地域スポーツ団体代表者で構成する「三朝町部活動地域移行検討委員会」を設置し、令和7年6月までに7回の会議を重ねてきました。
特徴は、受け皿となる新しい地域クラブをつくるのではなく、すでにある仕組みを使う方向に舵を切った点です。令和6年8月の検討委員会で、令和7年度以降の取り組みとして事務局が示した3案のうち、「中学生の地域活動参加機会の創出」と「スポーツ少年団の中学生加入」の2案を重点的に協議することが決まりました。
この判断の背景には、鳥取県主催の中部地区意見交換会での実感があります。他の市町が外部指導者や部活動指導員の配置を当面の目標としているのに対し、事務局は「本町に置き換えると現実的ではない」と受け止め、部活動とは別に地域活動の機会をつくるほうが現実性があると整理しました。委員長も「人数的なことや部活動の数を考えると、三朝町だけで全てはできない」と述べ、近隣市町との連携の必要性に言及しています。
特徴的な取り組み
- スポーツ少年団11単位団に受入可否を正式照会: 町スポーツ少年団の11単位団すべてに対し、中学生の受け入れが可能かを文書で照会します(令和7年7月末目途)。照会は「全学年受入可能/学年を限定して受入可能/条件付きで受入可能/現時点では判断できないが協議には応じる/不可能」の5択に加え、活動内容、参加できる曜日・頻度、受入可能人数、現在の指導体制で対応できるかまで尋ねる設計です。「受入可能」または「協議に応じる」と答えた単位団から順に意見交換へ進みます。
- 月1〜2回の土曜日を「地域活動の日」にする: 「子ども地域活動参加推進事業(仮称)」として、テーマ「スポーツ・文化芸術活動を楽しむ土曜日」を掲げ、月1回の土日に全5回程度、午前9時から12時までの2〜3時間の活動を実施します。対象は三朝小学校の4〜6年生と三朝中学校の生徒で、各回の定員は30名程度。ペタンクでの地域交流、魚つかみ体験のボランティア、燻製づくり体験、三朝バイオリン美術館でのバイオリン鑑賞会などが年間行事イメージとして挙がっています。
- 部活動を「全面禁止」にはしない運用: 完全休養日を設けても、大会や練習試合がその日にしか組めない場合は部活動を優先してよい流れをつくると委員会で確認されています。「全ての部活動をやめてください、という状況ではなく、まず始めたらどうか」という整理です。
- 募集は既存の連絡アプリで完結させる: 参加者募集は連絡アプリ(クラスルーム)の活用など既存ツールを使って簡素化する方針です。事業の準備と運営は講師団体に依頼し、社会教育課は講師団体との調整と募集準備に役割を絞ります。
- スポーツ少年団側の費用条件まで照会項目に入れる: 照会事項には、町スポーツ少年団本部から支給される育成強化費(年額10,000円)と指導者謝金(年額50,000円)について、従来の金額で対応可能か・増額を希望するかを尋ねる設問が含まれています。受け入れ依頼と同時に、必要な予算措置の材料を集める設計です。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 部活動の最終下校が17時45分、社会人指導者によるスポーツ少年団の開始は18時で、15分の空白が生じる | 委員会でこの待機時間の扱いを具体的な検討事項として提起。冬季は最終下校時刻がさらに早まることもあわせて確認されている |
| 小学生と中学生を同じ指導者が見ることによる負担・レベル差 | 中学生を「教える立場」にして小学生の補助コーチにあてる案が委員から提示された。照会項目にも「小学生とは別メニュー」「補助コーチとしての参加」の選択肢を用意している |
| 部活動の顧問とスポーツ少年団で指導方針が食い違い、生徒が戸惑う恐れ | 中学校との協議事項に「部活動自由参加制との整理」「指導体制や大会出場に関する事項の整理」を明記。テスト事業として部活動とスポーツ少年団の合同練習を先に実施して検証する |
| 文化芸術団体の受け皿化が進まない | 三朝町文化団体連絡協議会加盟の18サークルへ照会したが、高齢者中心の団体が多く、世代差や事故発生時の対応への不安から消極的な意見が多数。「個人のボランティアとして」関わる形から模索している |
| 町単独ではすべての部活動を地域展開できない | 近隣市町との連携が不可欠と委員会で確認。鳥取県内および中部圏内での意見交換・協議を令和7年度の取り組みに位置づけている |
成果・効果
令和6年6月、町内のスポーツ・文化芸術関係団体71団体(個人を含む)に受け皿としての協力可否を調査し、41団体から回答を得ました(郵送19・WEB22、回答率58%)。
地域移行のメリットとしては「教員の負担軽減につながること」が35%で最多でしたが、「地域住民と中学生との関わりが増えること」が25%で2番目に多く、教員の働き方改革とは別の動機を持つ団体が一定数存在することが確認されています。課題については、受け皿団体・指導者の確保が25%、人材育成と継続性が24%、費用・移動の負担が19%、責任の所在が16%、公平性が14%と分散し、特定の論点に偏らず全体的に課題が多いという認識が示されました。
受け皿として「前向きに検討したい」「条件によっては検討可能」と答えた団体は合計13件。受入を検討できる種目として野球、バドミントン、空手、陸上競技、剣道、水泳、ソフトテニス、体力づくり・ニュースポーツが挙がりました。条件としては「スタッフの確保」「自分たちにとって無理にならない範囲であれば」という回答が多数を占めています。町への要望としては、会場使用料の減免と指導者・スタッフの待遇向上が多く挙げられました。
これに先立つ令和4年5月の生徒・保護者・教員アンケートでは、休日の部活動を地域またはスポーツクラブが担うことについて保護者の75%、教員の92%が賛成または「どちらかと言えば賛成」と回答しています。受益者負担については保護者の67%が賛成または「どちらかと言えば賛成」でした。活動方針では、生徒の56%が「楽しんで行うことを目的とした方針」を望んだのに対し、保護者は35%にとどまり、技術指導や大会での好成績を望む回答が44%と、生徒と保護者で期待が逆転しています。教員については、地域移行後の関わり方を尋ねた設問で50%が「できれば関わりたくない」と回答し、残る50%は何らかの形での関わりを希望しました。
出典
→ 原文: 三朝町「中学校部活動の地域移行について」
→ 検討状況・令和7年度事業計画: 三朝町「部活動地域連携・地域移行の検討状況について」(令和7年度第1回検討委員会資料・PDF)
→ 団体アンケート結果: 三朝町「スポーツ・文化芸術団体へのアンケート調査結果について」(資料1・PDF)
CONSULTING / 専門家に相談
受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?
設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。