トップ 事例を探す 広島県 【事例】広島県海田町の部活動地域展開 ─ 選択制にしたら参加は3年生5人まで減り陸上の移行を中止、令和8年度から計画を立て直す
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【事例】広島県海田町の部活動地域展開 ─ 選択制にしたら参加は3年生5人まで減り陸上の移行を中止、令和8年度から計画を立て直す

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・学校部活動と地域クラブを選択制にした結果、参加が3年生5人まで減った海田町の経過
・参加者減・コーディネーター不在・連携不足・働き方改革未達という4つの要因分析
・関係者会議で中止を決め、在り方検討部会と推進計画の策定へ切り替える立て直し方

自治体名 広島県安芸郡海田町
人口規模 30,720人(令和7年4月1日時点)
中学校数 公立中学校2校(海田中・海田西中)・生徒数760人(令和7年5月1日時点)・運動部活動20部活
運営形態 総合型地域スポーツクラブである一般社団法人海田町文化スポーツ協会に属する「織田幹雄スポーツクラブ」が実施。教育委員会生涯学習課がコーディネーター業務も兼務
対象競技 陸上競技(地域移行)。地域連携は運動部・文化部の5部活動
保護者負担額 町公表資料では未提示

取り組みの概要

海田町は令和5年10月から中学校陸上部において休日の地域移行を開始しました。受け皿となったのは、総合型地域スポーツクラブである一般社団法人海田町文化スポーツ協会に属する「織田幹雄スポーツクラブ」です。しかし参加者は公立中学校2校のうち1校の陸上部の一部にとどまり、令和5年度10人、令和6年度7人、令和7年度は中学3年生5名のみと減少しました。町は令和6年12月の公立中学校部活動地域移行関係者会議において、陸上部による実施を令和7年度で中止することを決定しています。町はこの結果をふまえ、令和8年度以降は新たに「海田町立中学校部活動在り方検討部会」を立ち上げ、具体的な工程等を示す「海田町立中学校部活動地域展開推進計画」を策定して、町の実情に応じた地域展開を進める方針です。一方、地域連携については令和6年度から開始し、令和7年度は町内の公立中学校2校で運動部および文化部の5部活動で実施しています。

特徴的な取り組み

  • うまくいかなかった理由を4点に整理して公表する: 町は課題として、①地域展開の参加者が少ない、②専属のコーディネーターが不在、③中学校と地域スポーツクラブの連携不足、④教職員の働き方改革につながっていない、の4点を明記しました。実証事業の報告書で成果ではなく機能しなかった要因を並べた例は多くありません。
  • 「選択制」が参加者減を招いたと分析する: 町は参加者が少なかった理由について、学校部活動と地域スポーツクラブの参加を選択制にしたことにより、地域クラブを選択した生徒は少人数であったと分析しています。選択肢を残す配慮が、結果として地域クラブ側の人数を細らせたという構図です。
  • 働き方改革につながらなかったことも明記する: 選択制にしたことにより学校部活動は従前どおり教員が指導を行うため、教職員の働き方改革につながっていないと率直に記載しています。地域移行の目的の一つが達成できていないという評価です。
  • 撤退の判断を会議体で決める: 令和6年12月の公立中学校部活動地域移行関係者会議で、陸上部による実施を令和7年度で中止することを決定しました。続けるか止めるかを担当課の判断ではなく関係者会議で結論づけています。
  • 中止と同時に次の計画づくりへ移る: 令和8年度以降は「海田町立中学校部活動在り方検討部会」を新たに立ち上げ、具体的な工程等を示す「海田町立中学校部活動地域展開推進計画」を策定する方針を示しました。中止を終わりではなく計画策定の起点に位置付けています。
  • 先進地視察を2件実施する: 令和7年9月に広島県世羅町、令和8年2月に香川県東かがわ市へ先進地視察を行い、他自治体の運営方法を確認しています。
  • 地域連携は並行して継続する: 地域移行が行き詰まる一方、地域連携は令和6年度に開始し令和7年度は町内2校で運動部・文化部の5部活動へ広げています。移行と連携を切り分けて進めています。

課題と解決策

課題 解決策
学校部活動と地域スポーツクラブの参加を選択制にしたため、地域クラブを選択した生徒が少人数にとどまり、令和7年度は中学3年生5名のみとなった 令和6年12月の公立中学校部活動地域移行関係者会議で陸上部による実施を令和7年度で中止することを決定し、令和8年度以降は在り方検討部会を立ち上げて推進計画を策定し直す
地域移行および地域連携を一元的に管理し、中学校と地域スポーツクラブをつなげる専属のコーディネーターがいない 当面は教育委員会生涯学習課が地域移行に係るコーディネーターの業務(練習会場の確保、指導者謝金の支払い、指導者保険の加入手続き等)を担う。推進計画の策定にあわせて体制を見直す
平日と休日で指導者が異なることから、中学校の顧問と地域スポーツクラブの指導者の間で情報共有や意思疎通が行えていない 学校教育課が部活動に係る方針の策定と中学校との連携、地域連携の実施を担い、生涯学習課が関係団体との連携を担う分担で調整を図る
選択制としたため学校部活動は従前どおり教員が指導することになり、教職員の働き方改革につながっていない 推進計画の策定を通じて、選択制を含めた実施方法そのものを見直す
他自治体の運営方法や成功要因が分からない 令和7年9月に広島県世羅町、令和8年2月に香川県東かがわ市への先進地視察を実施する

成果・効果

令和5年10月に始まった陸上部の休日地域移行は、織田幹雄スポーツクラブが受け皿となり実施されました。参加人数は令和5年度10人、令和6年度7人、令和7年度は中学3年生5名と推移し、対象は公立中学校2校のうち1校の陸上部の一部にとどまりました。令和6年12月の関係者会議で令和7年度での中止が決まっています。町の地域クラブ活動数は1クラブ、協議会・検討会議等は設置済みですが、推進計画・ガイドライン等は未策定という状況です。

一方で地域連携は令和6年度から開始し、令和7年度は町内の公立中学校2校で運動部および文化部の5部活動に広がりました。事業スケジュールでは、令和7年6月に公立中学校部活動地域移行関係者会議と広島県の市町担当者会議(第1回)、同年8月に県町共創ミーティング、同年9月に広島県世羅町への先進地視察、同年12月に市町担当者会議(第2回)、令和8年2月に市町担当者会議(第3回)と香川県東かがわ市への先進地視察が組まれています。町は令和8年度以降、海田町立中学校部活動在り方検討部会での議論を経て、海田町立中学校部活動地域展開推進計画を策定する予定です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 海田町・北広島町・世羅町」(PDF)

→ 原文: 広島県教育委員会「公立中学校部活動の地域展開等に係る取組状況」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

全国の事例紹介は成功例に偏りがちですが、海田町の報告は行き詰まった経緯と理由をそのまま記録しています。核心は「選択制」の扱いです。学校部活動と地域クラブのどちらに参加するかを生徒に選ばせる方式は、急な変化を避けたい現場の要請に応える穏当な設計に見えます。しかし海田町では、地域クラブを選んだ生徒が令和5年度10人、令和6年度7人、令和7年度は3年生5人と細り続けました。同時に学校部活動は従来どおり教員が指導するため、教職員の働き方改革にもつながりませんでした。生徒の人数も教員の負担も、どちらも改善しないまま二重運用のコストだけが残る。選択制を検討する自治体にとって、これ以上に具体的な警告はありません。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

選択制を採るのであれば、地域クラブ側に明確な優位性を持たせる必要があります。専門的な指導が受けられる、学校にない種目がある、活動時間帯が選べるといった差がなければ、生徒は慣れた学校部活動に残ります。海田町のように既存の陸上部の休日活動を地域クラブへ置き換えるだけでは、生徒から見て内容が変わらないため移る動機が生まれません。次に、コーディネーターの不在です。海田町では教育委員会生涯学習課が練習会場の確保、指導者謝金の支払い、保険加入手続きまで兼務しており、平日と休日で指導者が異なることによる情報共有の断絶を埋める余力がありませんでした。専属コーディネーターの配置は「あれば良い」ではなく、二重運用期には不可欠の前提と考えるべきです。加えて、撤退基準を先に決めておくことも重要です。海田町は令和6年12月に関係者会議で中止を決め、翌年度からは在り方検討部会と推進計画の策定へ移りました。参加人数が一定を下回った場合に方式を見直すという基準を初年度に定めておけば、判断はさらに早くなります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

中止の判断を担当課ではなく公立中学校部活動地域移行関係者会議という会議体で行い、その経緯を実証事業の報告書に残している点は、透明性の面で評価できます。課題を4点に整理し、うち2点(働き方改革につながっていない、連携不足)が自らの設計に起因すると認めている記述は率直です。また中止と同時に在り方検討部会の設置と推進計画の策定を打ち出しており、失敗を制度整備の起点に転換しています。一方、令和7年度時点で推進計画・ガイドラインが未策定であることは、令和8年度からの改革実行期間に対して出遅れを意味します。人口約3万人・中学校2校という規模で専属コーディネーターを確保できるかが、次の計画の実効性を左右します。

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