トップ 事例を探す 鹿児島県 【事例】鹿児島県出水市の部活動地域展開 ─ 加入率7割強から5割台へ、顧問の54.8%が競技未経験という現実に月1,000円の7クラブで応える
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 鹿児島県

【事例】鹿児島県出水市の部活動地域展開 ─ 加入率7割強から5割台へ、顧問の54.8%が競技未経験という現実に月1,000円の7クラブで応える

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・部活動加入率7割強→5割台、顧問の54.8%が競技未経験という出水市の現状データ
・指導者グループを運営団体とし、月会費を種目横断で1,000円に揃えた7クラブの設計
・中体連は部活動、その他は地域クラブという大会参加資格の使い分け

自治体名 鹿児島県出水市
人口規模 約5万人(2026年時点)
中学校数 公立中学校7校(市立中学校6校と義務教育学校1校)・生徒数1,489人(令和7年度)
運営形態 指導者グループが運営団体。市は「出水市部活動地域移行等推進連絡事務局」を置き、推進協議会で方針を協議
対象競技 軟式野球、女子バスケットボール、サッカー、女子バレーボール、男子バレーボール、剣道、弓道の7クラブ
保護者負担額 月会費1,000円(軟式野球・剣道・弓道・サッカーの各クラブ)

取り組みの概要

出水市は、市立中学校6校と義務教育学校1校を抱え、令和7年度の生徒数は1,489人です。改革実行期間の最終年度には1,152人と推計され、約2割の減少が見込まれています。部活動加入率は平成30年度には7割強だったものが令和7年度には5割台まで減少し、系統別では運動系が5割前後で推移する一方、文化系は1割を下回っています。指導体制も厳しく、令和7年度は6割強の教員が顧問を引き受けているものの、そのうち5割強の顧問が専門外の種目を担当し、顧問全体の54.8%が競技等未経験という状況です。市はこうした実態をふまえ、令和6年度の1クラブから令和7年度は6クラブを加えて計7クラブへ拡大し、土日において地域の指導者のもとでの活動を展開しています。推進計画・ガイドラインは策定済み、協議会も設置済みです。

特徴的な取り組み

  • 危機の実態を数字で公表する: 部活動加入率の推移(運動系57.5%→49.4%、文化系21.0%→8.5%)、顧問の競技等未経験率54.8%、外部指導者の配置がある部活動が4割強、約1割の部活動が専門的な指導を受ける機会を得られていないことなど、地域展開が必要な理由を具体的な数値で示しています。
  • 1クラブから7クラブへ一年で拡大: 令和6年度は1クラブでの実施でしたが、令和7年度は新規種目6クラブを8月から加え、計7クラブ・9部活動分へ広げました。令和7年4月には軟式野球クラブが先行して活動を開始しています。
  • 運営団体は「指導者グループ」: 既存の総合型クラブや民間事業者ではなく、指導者グループが運営団体となる形をとっています。T.E.N SPIRITS(軟式野球)、高尾野修養館(剣道)、野田弓道クラブ(弓道)、高尾野サッカークラブ(サッカー)など、地域名や道場名を冠したクラブが並びます。
  • 月会費を1,000円に揃える: 軟式野球・剣道・弓道・サッカーの各クラブはいずれも月会費1,000円です。種目をまたいで水準を揃えることで、種目選択が家庭の負担額に左右されにくくしています。
  • 大会参加は中体連と地域クラブで使い分ける: 各クラブとも、中学校体育連盟の大会には部活動として、その他の大会には地域クラブとして参加する形を明記しています。移行期に生じがちな大会参加資格の混乱を、種別ごとの整理で避けています。
  • 指導者連絡会を継続種目と新規種目で分けて開催: 令和7年4月に第1回継続種目指導者連絡会、同年7月に第1回新規種目指導者連絡会を開催しました。既に動いている種目と新しく始める種目では課題が異なるため、会議体を分けています。
  • 校長への調査と説明を年2回組み込む: 令和7年6月に部活動改革推進に関する説明(市校長研修会)と年次的な地域移行種目等に関する調査(対象:校長)を実施し、令和8年2月にも令和8年度の取組に関する説明(校長研修会)を行っています。
  • 教育委員会と首長部局で役割を分ける: 学校教育課が部活動改革の主管と学校との調整、生涯学習課が中学生の地域文化・芸術活動の環境整備と文化・芸能に関わる地域の指導者の把握・確保、首長部局の文化スポーツ課が中学生の地域スポーツおよび文化・芸術活動の環境整備を担う分担です。

課題と解決策

課題 解決策
部活動加入率が平成30年度の7割強から令和7年度には5割台まで減少し、文化系は1割を下回っている 地域クラブ活動を令和6年度の1クラブから令和7年度に7クラブへ拡大し、部活動に代わる地域の受け皿を整備する
令和7年度は顧問の54.8%が競技等未経験で、5割強の顧問が専門外の種目を担当している 公認資格を有する指導者の確保と指導の質の向上に取り組み、指導者連絡会や指導者研修会を継続種目・新規種目に分けて開催する
在籍校にニーズに合った部活動がないため、他校チームに籍を置く生徒や近隣校との合同チームを編成する種目への参加が年々増加している 学校単位ではなく地域クラブとして種目ごとの受け皿を整備し、在籍校に関わらず参加できる環境をつくる
地域クラブが大会参加資格の条件整備等に苦慮している 中学校体育連盟の大会には部活動として、その他の大会には地域クラブとして参加する整理を各クラブで明示する
種目によって会費が異なると、家庭の経済状況が種目選択を左右する 軟式野球・剣道・弓道・サッカーの各クラブで月会費を1,000円に揃える
学校現場の受け止めと市の方針にずれが生じやすい 校長を対象とした年次的な地域移行種目等に関する調査を実施し、市校長研修会で部活動改革推進および翌年度の取組について説明する

成果・効果

令和7年度は7つの地域クラブ活動が実施され、9部活動分が移行しました。指導者は25人、運営スタッフは7人です。クラブごとの実績を見ると、軟式野球のT.E.N SPIRITSは休日33回・参加31人(3年6人、2年6人、1年19人)・指導者6人、剣道の高尾野修養館は休日24回・参加9人(3年3人、2年4人、1年2人)・指導者4人、弓道の野田弓道クラブは休日24回・参加11人(3年7人、2年2人、1年2人)・指導者2人、サッカーの高尾野サッカークラブは休日24回・参加25人(3年7人、2年9人、1年9人)・指導者5人となっています。いずれも平日の実施は0回で、休日に特化した運営です。実施時間帯は午前中が中心で、軟式野球・弓道・サッカーが9時から12時、剣道が8時から11時に設定されました。

軟式野球クラブは令和7年4月から令和8年3月まで通年で活動し、剣道・弓道・サッカーの各クラブは令和7年8月から令和8年3月までの活動です。1年生の参加が3年生を上回るクラブが複数あり、軟式野球では31人中19人、サッカーでは25人中9人が1年生でした。市は令和8年1月に実証事業の成果と課題に関する調査を地域指導者・生徒・保護者・学校を対象に実施し、令和8年2月には第2回指導者連絡会と第2回推進協議会、地域クラブ活動予定校への事業説明を行っています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 出水市・薩摩川内市・いちき串木野市・南さつま市・奄美市」(PDF)

→ 原文: スポーツ庁「事例集・全国の取組紹介」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

出水市の資料で最も重いのは、顧問の54.8%が競技等未経験という数字です。地域展開の議論は教員の負担軽減という文脈で語られがちですが、出水市はそれと並べて「約1割の部活動が専門的な指導を受ける機会を得られていない」という生徒側の損失を明記しました。部活動加入率が7割強から5割台へ落ち、文化系は1割を切っているという推移も含め、現状維持の方が生徒にとって不利益であることを数字で示しています。受け皿の設計では、既存の総合型クラブや民間事業者ではなく指導者グループを運営団体に据え、月会費を種目横断で1,000円に揃えました。人口約5万人の自治体で、地域に既にある道場や競技クラブをそのまま運営主体として立ち上げる現実的な選択です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

指導者グループを運営団体とする方式は立ち上げが速い反面、法人格を持たない任意団体が多く、会計・保険・契約の面で脆さを残します。導入する自治体は、指導者グループを運営団体と認める代わりに、会計報告の様式統一、スポーツ安全保険等への加入確認、代表者交代時の届出を要件化しておくべきです。次に、参加人数の少なさです。出水市では剣道9人、弓道11人と、1クラブあたりの参加者が10人前後のクラブが複数あります。指導者2〜4人に対して生徒9〜11人という比率は指導の質としては理想的ですが、月会費1,000円では運営費を賄いきれません。少人数種目については会費以外の財源(市の補助、競技団体の支援)を組み合わせる前提で設計する必要があります。第三に、文化系の受け皿がありません。加入率が1割を切っている文化系こそ危機的でありながら、令和7年度の7クラブはすべて運動系です。生涯学習課が文化・芸能に関わる地域の指導者の把握・確保を担う体制はできているため、次の段階で文化系クラブをどう立ち上げるかが問われます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進協議会と推進連絡事務局を設置し、推進計画・ガイドラインを策定済みである点は、体制面の整備が進んでいることを示します。校長を対象とした年次調査と年2回の校長研修会での説明を工程に組み込み、学校側との認識合わせを制度化していることも評価できます。中体連の大会は部活動として、その他は地域クラブとして参加するという整理も、移行期の混乱を避ける実務的な判断です。一方、月会費1,000円という水準は保護者にとって参加しやすい反面、指導者への謝金や用具費を賄うには十分とは言えず、実証事業の補助が終わった後の収支をどう組むかは未提示です。参加人数の少ない種目ほど1人あたりコストが高くなるため、種目別の収支を可視化したうえで負担のあり方を再設計することが求められます。

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