トップ 事例を探す 長崎県 【事例】長崎県佐世保市の部活動地域展開 ─ バス輸送の合同練習会と離島への指導者派遣・大学生41名連携で進める広域実証モデル
全種目 👥 10~30万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 長崎県

【事例】長崎県佐世保市の部活動地域展開 ─ バス輸送の合同練習会と離島への指導者派遣・大学生41名連携で進める広域実証モデル

公開:2026.07.26 更新:2026.07.26
この記事でわかること

・佐世保市がバス輸送合同練習会・離島指導者派遣・学生ボランティアの3事業で進める実証の全体像
・延べ582人参加・学生41名派遣という実証数値と広域・離島都市ならではの課題対応
・大学連携と施設集合型モデルを自地域に導入する際の輸送費・引率・人材確保の設計ポイント

自治体名 長崎県佐世保市
人口規模 約23.0万人(令和6年度実証事業成果報告書記載)
中学校数 26校(公立・生徒6,103人・283部)
運営形態 行政直営の実証事業(市教育委員会学校保健課が主幹、学校教育課・スポーツ振興課・財政課が連携)。受け皿団体は選定前
対象競技 陸上(合同練習会)、バドミントン(離島派遣)ほか、学生ボランティア派遣は8競技
保護者負担額 調査時点で未公表(実証事業はバス借上等を市負担で実施。負担の在り方は検証項目)

取り組みの概要

佐世保市は、令和5年度に「部活動の在り方検討委員会」を設置して検討を開始し、令和6年5月24日の定例教育委員会で「休日の部活動の地域移行及び連携」に向けた説明資料を報告しました。背景には、少子化による生徒数減少と指導者確保難に加え、426平方キロメートルの広い市域と宇久島・黒島という離島を抱える地理的多様性があります。令和6〜7年度の2年間はスポーツ庁委託の地域スポーツクラブ活動体制整備事業等を活用した実証事業を実施し、その結果と国の動向を踏まえて学校教育審議会で審議のうえ、令和8年度以降の段階的な地域移行・地域連携の方針を決定する進め方です。将来モデルとしては、拠点校型・施設集合型・既存クラブチーム型・新たな地域クラブ活動型の4類型を地域性に応じて使い分ける案が示されています。

特徴的な取り組み

  • バス輸送による施設集合型の合同練習会: 市がバス4台を借り上げ、市内1か所の陸上競技場に生徒を集約して専門指導を行う合同練習会を令和6年11月〜令和7年2月に4回開催。陸上部のない8校を除く15〜16校が参加し、参加延べ582人・指導者21人、1回100人超・部員の約8割が参加する規模となりました。
  • 離島部(宇久島・黒島)への指導者派遣: 黒島はバドミントン、宇久島は陸上・バドミントンを対象に指導者を派遣(参加16人・指導者7人)。港から約60kmの宇久島へは長崎国際大学の学生が指導者として参加しました。
  • 長崎国際大学との学生ボランティア連携: 全26校へのニーズ調査で20校が活用を希望(8競技36人)し、学生41名を20校に派遣。中体連大会の運営補助にも学生が参加し、市は「予想を超える成果」と総括しています。
  • 部活動指導員制度の整備: 令和6年9月に部活動指導員要綱を制定し、モデル地区の休日合同部活動に専門指導員を配置。外部指導者の報償費は1時間あたり1,600円と設定されています。

課題と解決策

課題 解決策
合同練習会への引率者の確保 路線バスや保護者送迎の導入を令和7年度に検証
持続化のための経費・保護者負担の在り方 関係者と協議しながら保護者への協力(負担)を求める形を検証し、困窮世帯への対応を検討項目として明記
離島は悪天候による船の欠航リスクがある 離島派遣の実証を通じて運用面の課題を洗い出し中
陸上以外の団体種目(サッカー・バレーボール等)への拡大 競技団体・協力者の確保を進めながら対象競技の拡大を検討

成果・効果

令和6年度実証では、合同練習会4回で参加延べ582人と市内全域をほぼカバーし、対象部員の約8割が参加しました。生徒からは「専門分野に分かれたトレーニングで理解が深まった」、顧問からは「自分の指導以上の専門的指導が受けられた」との声が報告されています。学生ボランティアは41名を20校に派遣し、指導支援に加えて中体連大会の運営補助にも広がりました。協議会の設置や推進計画・ガイドラインの作成は検討中の段階であり、佐世保市は「完成した移行モデル」ではなく、広域・離島という地理条件に合った形を実証で模索している事例です。令和8年度以降の方針決定が次の節目となります。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業成果報告書(長崎県・PDF・スポーツ庁)
→ 原文: 佐世保市 令和6年5月定例教育委員会資料(PDF・休日の部活動の地域移行及び連携に向けた説明資料)
→ 原文: 長崎県運動部活動地域移行推進計画Ⅰ(PDF・長崎県教育委員会)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

佐世保市の実証は、「移動」と「人材」という広域都市の二大制約に正面から取り組んでいる点が出色です。バス4台で市内全域から1か所に集約する施設集合型は、1回100人超・部員の約8割参加という高い動員実績を出しており、拠点集約が専門指導の質と両立できることを数値で示しました。もう一つの柱である長崎国際大学との連携は、ニーズ調査で希望を確認してから学生41名を20校に配分するというマッチング設計が丁寧で、大学が立地する中規模都市であれば再現可能性の高いモデルです。離島への指導者派遣まで実証している自治体は全国的にも少なく、地理的ハンデを抱える自治体にとって貴重な先行例といえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

バス輸送型の合同練習会を導入する際の最大のハードルは、輸送経費の持続性と引率者の確保です。佐世保市も実証段階では市負担でバスを借り上げており、本格実施に向けては路線バス活用や保護者送迎の検証を進めています。導入を検討する自治体は、実証初年度から「輸送費を誰がどこまで負担するか」の複数シナリオを試算しておくべきです。また、学生ボランティア連携は謝金や交通費の制度設計を曖昧にすると継続しません。ニーズ調査→希望校への配分という佐世保方式のプロセスに加え、単位認定や活動証明など学生側のメリットを大学と協議しておくことが定着の鍵となります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

学校保健課を主幹に学校教育課・スポーツ振興課・財政課が連携する庁内横断体制を組み、実証→学校教育審議会での審議→教育委員会での方針決定という手続きを明示している点は、意思決定の透明性が高い進め方です。一方、協議会・推進計画・ガイドラインはいずれも検討中であり、受け皿団体も未確定のため、制度としての持続可能性はこれからの設計に懸かっています。実証で得た延べ582人参加などの定量データを財源議論に接続できるかが、令和8年度以降の方針決定の質を左右するでしょう。

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