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【事例】和歌山県和歌山市の部活動地域展開 ─ 市域4エリアの認定地域クラブと「週末部活動なしの週」で進める段階移行

公開:2026.07.26 更新:2026.07.26
この記事でわかること

・和歌山市が令和8年3月に策定した方針の全体像と令和11年度休日部活動廃止までのロードマップ
・市域4エリア×認定地域クラブ制と月額1,000〜3,000円の受益者負担目安という制度設計
・「週末部活動なしの週」を月2回設定する具体的な移行運用の他自治体への応用ポイント

自治体名 和歌山県和歌山市
人口規模 約34.8万人(令和8年6月1日現在・住民基本台帳)
中学校数 18校(市立・西脇中学校みらい分校を含む)
運営形態 市教育委員会(学校支援課)主導・市域4エリアに「認定地域クラブ」を配置する構想(部活動支援モデル/地域クラブモデルの2類型併用)
対象競技 軟式野球、サッカー、バスケットボール、吹奏楽、合唱 ほか21競技種目(ダンス・護身術・体操など部活動になかった種目も選択肢に)
保護者負担額 月額1,000〜3,000円程度を目安(週1回・月4回程度の場合。方針に明記)

取り組みの概要

和歌山市教育委員会は、令和7年3月の骨子案公表を経て、令和8年3月に「和歌山市学校部活動の地域展開等の在り方に関する方針」を策定しました。背景には、少子化による部活動の種目数減少や野球・サッカー等での合同チームの増加、専門的指導力のある教員の不足、教員の長時間労働を前提とした運営があります。令和7年度の市立中学校は生徒数7,099人・部活動加入率80%(運動部55%・文化部25%)と加入率自体は高水準を保っており、市は「将来にわたって子供たちが主体的に『やりたいこと』を選択し、多様な活動に参加できる機会の確保」を目的に、まず休日から段階的に地域展開を進め、校区を越えて生徒が興味関心に応じて選択できる仕組みづくりを目指しています。

特徴的な取り組み

  • 市域4分割×認定地域クラブ制: 市を4つのエリアに分け、エリアごとに1つの「認定地域クラブ」を配置して公的支援を行う構想です。国の認定要件(活動時間・休養日等)に加え、市独自要件として「総合型地域スポーツクラブに登録済またはスポーツ少年団に加盟していること」を上乗せし、認定クラブには財政支援・学校施設の優先利用や使用料減免・学校備品活用のメリットを設けます。
  • 「週末部活動なしの週」方式による段階移行: 令和10年度に週末部活動のない週を月2回(原則第2・4週)設定し、休日の部活動を縮小しながら地域クラブ活動を拡大する具体的な運用を明示しています。
  • 文化部を含む21競技種目ごとの検討委員会: 中体連専門部・総合型クラブ・スポーツ少年団・PTA連合会・競技団体で構成する検討委員会を、合唱・吹奏楽を含む21競技種目ごとに設置。ダンス・護身術・体操など従来の部活動になかった種目も含めて選択肢を広げる方針です。
  • 2つの運営モデルの併用: 顧問と人材バンク登録指導者がローテーション指導する「部活動支援モデル」(地域連携型)と、総合型クラブ等が実施主体となる「地域クラブモデル」(地域展開型)を競技特性に応じて使い分けます。教員は兼職兼業の承認により有償で指導に従事できます。
  • 1人1台端末を使った生徒向け広報: 保護者向けの連絡ツールに加え、生徒本人に端末経由で広報チラシを配布し、当事者である子どもの理解促進を図ります。

課題と解決策

課題 解決策
活動場所の確保 認定地域クラブへの学校施設の優先利用・使用料減免・学校備品活用を制度化
受益者負担の在り方(困窮家庭への支援を含む) 週1回・月4回程度で月額1,000〜3,000円程度という目安を方針に明記し、困窮家庭支援を検討課題として公式に位置付け
指導者の確保・コーディネーターの配置 人材バンク登録指導者のローテーション指導、教員の兼職兼業の有償化、指導者資格は不要とし登録後の研修制度で資質向上を図る設計

成果・効果

令和8年3月の方針策定を受け、令和8年度は制度設計とコーディネーター(運営主体)の選定・実証事業、令和9年度は競技の設定・指導者募集・学校施設の割り当てなど受け皿整備を行い、令和10年度に「週末部活動なしの週」を月2回設定して休日の地域展開を開始、令和11年度には中間評価を踏まえて休日の部活動廃止を目指すという4か年のロードマップが確定しています。移行の実績数値はこれからですが、部活動加入率80%という現状データと目標年次・受益者負担の目安を方針段階で具体的に示した点は、大都市型の計画としては透明性の高い設計といえます。

出典

→ 原文: 和歌山市学校部活動の地域展開等の在り方に関する方針(PDF・令和8年3月・和歌山市教育委員会)
→ 原文: 和歌山市 学校支援課(方針掲載ページ)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

和歌山市の方針で特筆すべきは、「週末部活動なしの週」を月2回(第2・4週)設定するという移行の運用ルールまで方針段階で書き切った点です。多くの自治体が「段階的に移行する」とだけ記して現場任せになる中、部活動を止める週を明示すれば、生徒・保護者・受け皿クラブの全員が同じカレンダーで準備できます。また、認定要件に「総合型クラブ登録またはスポーツ少年団加盟」を上乗せしたことで、実態のない団体の参入を防ぎつつ既存の地域スポーツ資源へ誘導する設計になっています。県庁所在地・人口35万人規模で受益者負担の目安(月1,000〜3,000円)まで明記した例は少なく、計画の透明性という点で参考価値が高い事例です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

市域を4エリアに分けてエリアごとに1認定クラブを置く方式は、エリア内の中学校数・生徒数に対してクラブの運営能力が追いつくかが最大のハードルです。1クラブに複数校・複数種目が集中するため、コーディネーターの力量と事務局体制が成否を分けます。和歌山市も令和8年度をコーディネーター選定と実証に充てており、導入を検討する自治体は「クラブ認定」より先に「統括人材の確保」から着手すべきです。また「週末部活動なしの週」は、大会日程との衝突が必ず起きるため、中体連・競技団体と年間カレンダーを事前にすり合わせておくことが不可欠です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

骨子案(令和7年3月)から確定版(令和8年3月)まで1年かけて21競技種目の検討委員会を経た策定プロセスは、合意形成の手続きとして丁寧です。認定制度に財政支援・施設減免を紐付けたことで、クラブ側のインセンティブと市の関与のバランスも取れています。一方、認定クラブが各エリア1つに限られる構造は、当該クラブの運営悪化がエリア全体の活動停止に直結するリスクを内包しており、令和11年度の中間評価で複数クラブ化や補完体制をどう扱うかが持続可能性の焦点となります。

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