トップ 事例を探す 長野県 【事例】長野県佐久穂町の部活動地域展開 ─ 南佐久郡6町村広域連携×総括コーディネーター事務局×JR小海線運賃補助モデル
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【事例】長野県佐久穂町の部活動地域展開 ─ 南佐久郡6町村広域連携×総括コーディネーター事務局×JR小海線運賃補助モデル

公開:2026.07.07 更新:2026.07.07
この記事でわかること

・6町村が負担金拠出で共同運営する広域連携モデルの体制図と財源構造
・総括コーディネーター事務局を佐久穂町教委内に置く運営集中方式の実務
・JR小海線運賃補助+バス手配の広域移動設計と、月謝導入への段階的移行プロセス

自治体名 長野県佐久穂町(南佐久郡6町村広域連携の事務局所在地)
人口規模 南佐久郡6町村合計 約21,625人(令和6年度時点)
中学校数 公立4校(川上中・南牧中・小海中・佐久穂中)+私立1校(大日向中)
運営形態 南佐久郡中学校部活動運営委員会(6町村共同)/総括コーディネーター事務局を佐久穂町教育委員会内に設置
対象競技 令和7年度で12種目(サッカー・卓球・男女バレーボール・陸上・柔道・男女バスケットボール・剣道・スキー・野球・スケート・吹奏楽・美術)
保護者負担額 令和6年度まで無償/令和7年度から保険料を保護者負担化/令和9年度から月謝導入検討中(保護者アンケートで40%が「月3,000円程度でよい」と回答)

取り組みの概要

長野県南佐久郡に位置する佐久穂町・小海町・南相木村・北相木村・南牧村・川上村の6町村は、令和2年7月の郡教育委員会・校長会合同研修会で「部員3人のバレーボール部」の現状を目の当たりにしたことを契機に、単独町村では持続困難となった中学校部活動を広域連携で立て直す取組を始めました。令和3年11月に4種目で試行を開始し、令和5年4月には「南佐久郡中学校部活動運営委員会」を正式組織化。佐久穂町教育委員会内に総括コーディネーター事務局を設置し、6町村が負担金を拠出する共同財政・共同運営の仕組みを構築しました。令和6年度時点で8地域クラブ活動・生徒172名・指導者30名(教員22人+地域指導者8人)が参加し、令和9年度には休日部活動の地域クラブ活動への完全移行を予定しています。

特徴的な取り組み

  • 6町村共同財政・共同運営: 各町村が負担金を拠出し「南佐久郡中学校部活動運営委員会」を組織。運営委員会総会で活動内容と予算を承認し、6町村の教育長・校長会・PTA代表が方針決定に関与する。人口約2万人・4中学校の小規模地域でも持続可能な体制を実現している。
  • 総括コーディネーター事務局を佐久穂町教育委員会内に設置: 事務局が指導者への謝金支払・旅費・保険手続き・学校連絡調整・移動手段手配を一手に担う「広域連携の要」として機能。地域クラブ活動ごとに活動進度が異なるため、定期連絡会で情報共有と統一的な方向づけを行っている。
  • 兼職兼業教員が主体の指導体制からのシフト: 令和5年5月時点で指導者19人中16人が教員(兼職兼業届)だったが、令和7年度は指導者38人のうち地域指導者が14人まで拡大。柔道は全員が兼職兼業ではない地域指導者で編成している。
  • JR小海線活用と運賃補助: 川上中(川上村)〜佐久穂中(佐久穂町)間は30km・所要45分と広域だが、活動当日は5時間授業で移動時間を確保。JR運賃補助は令和5年度が約35万円(半数の生徒が利用)、令和6年度は約64万円(7割の生徒が利用)と拡大し、赤字路線の活性化にも寄与している。
  • 大会出場を可能にする「南佐久チーム」編成: 令和5年7月、バスケットボール部がない学校や部員数不足の3校の生徒が合同の地域クラブ活動として「南佐久チーム」を組み大会に出場。予選リーグを突破しトーナメント戦にも進んだ。廃部となった中学校の生徒が他校に転校を考えるほど深刻な状況だったが、広域連携で解決した象徴的な事例となっている。

課題と解決策

課題 解決策
各町村単独では単一部活動の存続が困難(部員3人のバレー部等) 4中学校の生徒が集まる合同地域クラブ活動を編成し、令和7年度は12種目まで拡大。選択可能種目が7種目(令和4年度)から12種目(令和7年度)に増加。
広域移動(最大30km・45分)による生徒負担 活動日は5時間授業で移動時間を確保。町村所有バス・借上げバス手配、JR小海線運賃補助(令和6年度予算約64万円)で7割の生徒が公共交通を利用。
財源が各町村一般財源と国委託金に依存(令和5年度370万円→令和7年度1,000万円超→令和9年度2,000万円超見込み) 令和7年度から保険料を保護者負担化。令和9年度から月謝制導入を検討(保護者アンケートで40%が「月3,000円程度でよい」と回答)。地域内施設への寄附型自動販売機設置構想・企業協賛の検討も進めている。
指導者確保・教員の人事異動リスク 兼職兼業教員から地域指導者への段階的シフト(教員16→14人、地域指導者3→14人)。事務局業務の集約と指導者人材バンクの整備を検討中。

成果・効果

令和6年度実績で8地域クラブ活動・生徒172名・指導者30名が参加。令和7年度は12種目・指導者38人体制に拡大しました。南牧中学校では生徒数減少にもかかわらず部活動加入率がR4年度72%→R7年度90%と上昇しており、選択肢拡大が加入率向上に寄与しています。大会面でも「南佐久チーム」が予選リーグ突破・上位大会進出を果たし、自治体の枠を越えた合同活動が競技継続と大会参加の機会を守っています。地域内外の関係機関が役割分担して支える体制が定着し、「地域の子供を育てる仕組み」として機能し始めています。

出典

→ 原文: スポーツ庁『令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 事例集』特集① 長野県南佐久郡6町村(pp.11-16)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

南佐久郡モデルの本質は、単独町村では成立しない部活動を「6町村×4中学校×約500生徒」の広域プールで再構築した点にあります。人口21,625人・平均生徒数127人/校という規模で12種目を維持できているのは、①総括コーディネーターを佐久穂町教育委員会内に置く事務局集中方式、②6町村が負担金を出し合う共同財政、③JR小海線という既存インフラを運賃補助で活用する移動設計の3点セットが噛み合っているためです。中山間地・小規模町村が今後直面する「単独維持不能」の局面で参照される先行モデルになりつつあります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

最大の壁は「どの自治体が事務局を担うか」の合意形成です。南佐久郡では令和2年7月の郡教育委員会・校長会合同研修会で問題意識を共有してから、令和5年4月の正式組織化まで約3年を要しました。他地域が導入する場合、①郡単位の教育長会・校長会が既に存在するか、②事務局を置く自治体の教育委員会に負担金管理と指導者謝金支払の実務体制があるか、を先に確認する必要があります。移動距離の壁は、既存の公共交通機関を運賃補助で優先活用し、不足分をバス手配で埋める組み合わせが現実解です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

運営委員会総会での予算・活動内容承認、6町村教育長・校長会・PTAが方針決定に関与する多層構造は、透明性の面で高い水準にあります。財源面は令和5年370万円→令和9年見込み2,000万円超と5倍以上に膨張する見込みで、保護者負担導入(保険料R7・月謝R9)と企業協賛・寄附型自販機の複線化が持続性の鍵。指導者の教員依存度(当初16/19)を段階的に地域指導者に移す設計は、教員人事異動リスクへの適切な対応です。

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