【事例】京都府舞鶴市の部活動地域展開 ─ 令和3年度から12クラブ9競技・参加費ゼロで東西分散合同練習と「基礎部活」を4年間継続
・舞鶴市が令和3年度から4年間継続した12クラブ9競技の地域クラブ活動と、柔道で実現した「学校顧問負担ほぼゼロ」の達成経緯
・東西2カ所の分散合同練習拠点による地理的制約への対応と、参加率86%(柔道)を達成した種目別設計
・「基礎部活」(ゆる部活・トレーナー部活)という競技にとらわれない参加層拡大のアプローチと費用ゼロ運営の財源課題
| 自治体名 | 京都府舞鶴市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約7.6万人(75,790人・令和6年4月1日) |
| 中学校数 | 7校(生徒数1,941人) |
| 運営形態 | 舞鶴市教育委員会・スポーツ振興課・文化振興課(首長部局)合同運営、各競技団体・連盟が活動実施主体 |
| 対象競技 | 柔道・剣道・ソフトボール・陸上競技・バスケットボール・ソフトテニス・卓球・軟式野球・基礎部活(ゆる部活・トレーナー部活)計9種目12クラブ |
| 保護者負担額 | 月会費0円・年会費0円(スポーツ安全保険800円/年別途) |
取り組みの概要
舞鶴市は人口約7.6万人、五老ヶ岳を境に城下町として発展した西地区と明治時代に軍港として整備された東地区の2つのエリアからなる京都府北部の都市です(令和6年度)。公立中学校7校に1,941名の生徒が在籍し、62の運動部活が活動しています。東西間は自転車での移動が難しく、市街地周辺でも活動場所への移動距離が長いという地理的制約が、地域クラブ運営の構造的な課題となっています。
舞鶴市は令和3年度に国の地域部活動推進事業を受け、柔道・剣道・陸上競技の3種目で地域クラブ活動を開始した先行自治体です。令和4年度にソフトボールと「基礎部活」を追加、令和5年度には10種目13競技団体の協力のもとで大幅拡大、令和6年度はスポーツに加え文化系も取り入れ、9競技12クラブ体制で実施しました。令和6年度中に「舞鶴市部活動地域展開推進計画」を策定し、令和8年度2学期の休日部活動全面停止を目指しています。
運営体制は教育委員会(学校教育課)が受入実施団体・学校との調整・費用支払いを担い、首長部局(スポーツ振興課・文化振興課)が活動場所の確保・競技・文化団体への説明・指導者研修を担う教育委員会と首長部局の合同運営体制です。全クラブ参加費ゼロ(スポーツ安全保険のみ実費)で指導者80名・運営スタッフ20名が12クラブを支えています。
特徴的な取り組み
- 東西2カ所の合同練習拠点設置による地理的制約への対応:五老ヶ岳で東西に分断される地理的特性に対し、ソフトテニス・卓球・バスケットボールなど複数の種目で東西2カ所に分けた合同練習を実施。「2カ所に分けることで交通の不便が緩和され、生徒にとって参加しやすい状況であった」と報告書にも明記されており、広域市町村における分散拠点型の運営モデルを実践しています。
- 「基礎部活」(ゆる部活・トレーナー部活)という独自カテゴリの導入:競技の勝ち負けにこだわらないレクリエーションスポーツ(ゆる部活)と運動の基礎となるストレッチ・トレーニング(トレーナー部活)を「基礎部活」として分類し、舞鶴ちゃったスポーツクラブが運営。スポーツが得意でない生徒や部活動に所属していない生徒も参加できる設計で、競技系クラブとは異なる参加層の取り込みを図っています。
- 令和3年度から4年間継続した実証で推進計画策定まで到達:柔道・剣道・陸上競技の3種目からスタートした舞鶴市の取り組みは、令和6年度に12クラブ体制まで拡大し、推進計画(令和6年度策定)の基盤となりました。柔道については毎週土曜日に年26回実施する形が定着し、「学校顧問の負担はほぼなくなった」という成果が確認されています。参加率は柔道86.0%・剣道70.0%・ソフトボール77.8%と高く、令和3年度から継続した種目ほど参加率が高い傾向があります。
- スポーツ・文化指導者100名以上が参加した意見交換会による地域連携の構築:令和6年8月21日に「地域移行・連携のための説明会・意見交換会」を舞鶴市総合文化会館で開催(二部構成)。スポーツ・文化団体指導者と中学校教員が100名以上集まり、今後の地域展開の方向性について話し合いを実施。「各競技種目において、地域の指導者と中学校顧問が定期的に話し合いを持ち連携を深め、地域移行を進めていくベースをつくることができた」(報告書より)。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 東西に分断される地理的特性で合同練習への参加が困難 | ソフトテニス・卓球・バスケットボール等で東西2カ所に合同練習拠点を分散。城南中・伊佐津中・前島・丸山(ソフトテニス)、城北中・城南中・青葉中・白糸中(卓球)など複数会場で運営し、徒歩・自転車圏内での参加を実現 |
| 部活動所属生徒の参加率が全体の約30%にとどまる(特に陸上・卓球・ソフトテニスで低い) | 中学校顧問総数を目標に指導者確保を強化し、参加可能な生徒数を最大化。令和6年度末に生徒・保護者向けの広報を実施。次年度以降に人材バンクと指導者研修を導入して参加促進を図る |
| 持続可能な財源の確保(現在は参加費ゼロだが試算上は月2,200円以上が必要) | 令和8年度2学期の全面停止まで保護者負担を求めない方針を維持。令和7年度中にクラブ活動参加費の補助制度等を具体的に検討。本格展開時に費用が数倍になる見込みのため、国・府・市の複数財源確保を計画 |
| コーディネーター未配置で指導主事が実質的な調整役を担う | 令和6年度は学校教育課の指導主事が学校・競技団体へのヒアリング・助言・連絡調整を実施。次年度以降は専任コーディネーターの役割明確化・予算化、資質向上のための研修を検討 |
成果・効果
令和6年度は9競技12クラブが稼働し、指導者80名・運営スタッフ20名体制で合計338名の生徒(部活所属807名の41.9%)が実証事業に参加しました。種目別では柔道43名(86.0%)、剣道42名(70.0%)、ソフトテニス64名(36.4%)、バスケットボール55名(40.7%)などで多くの参加者を確保。令和3年度から継続してきた柔道では毎週土曜日の定例活動が定着し、学校顧問の負担がほぼなくなるという地域移行の本来目的を達成した事例が生まれています。
令和6年度には舞鶴市部活動地域展開推進計画(案)のパブリックコメント(令和7年1月)を経て令和7年3月に推進計画を策定。令和8年度2学期に休日部活を全面停止するロードマップが明確になりました。子どもの声として「学校の部活動と違い地域クラブ活動では色々な先生に教えてもらえるのが嬉しい」「他の市の道場からもたくさんの生徒が来るので、活気があって自分も頑張ろうと思える」といった声も集まっています。
出典
→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業報告書(京都府・福知山市・舞鶴市・綾部市)|スポーツ庁
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
舞鶴市の最も参考になる点は「4年間の継続実証」の蓄積です。令和3年度に3種目でスタートし、令和6年度に12クラブ体制まで積み上げた舞鶴市の記録は、地域移行が一夜にして完成するものではなく、試行錯誤と段階的な拡大の繰り返しによって実現するものであることを示しています。柔道の「学校顧問負担がほぼなくなった」という成果は、令和3年度からの3年間の積み重ねの上に生まれています。年度単位で成果を求めすぎず、継続することが重要というシンプルな教訓を体現した事例です。
「基礎部活」(ゆる部活・トレーナー部活)という発想は、地域クラブを「競技の上達」だけに特化しない設計として注目に値します。競技が苦手な生徒、部活動に所属していない生徒、また「ゆっくり楽しみたい」という生徒も参加できる場を作ることで、地域クラブへのアクセスを広げています。特に少子化が進む地域では、参加人数を確保するために種目の多様化だけでなく「関わり方の多様化」も必要になってくる時代を先取りした取り組みです。
東西2拠点制は、広域市町村が避けられない移動問題に対するシンプルかつ効果的な解決策です。交通不便な地域では「1会場集約」が参加率低下の原因になりますが、2カ所に分けることで参加しやすさを確保しながら合同練習の効果(他校生徒との交流・多様な指導者)も維持できます。「どこに何か所の拠点を置くか」という空間設計が地域クラブの参加率を左右することを、舞鶴市の実証が数値で示しています。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
舞鶴市モデルの「参加費ゼロ」は令和8年度2学期の全面移行まで継続する方針ですが、持続可能な運営試算では月会費最低2,200円が必要と明示されています。実証期間中は補助金でカバーできても、本格展開時には費用が数倍に膨らむ見通しです。他地域で同様のモデルを参考にする際は、実証段階のコスト構造を分析したうえで「移行後の費用設計」を同時に検討することが重要です。舞鶴市が保護者アンケートで「月3,000円まで」という結果を把握しているように、費用の許容範囲を先に調査してから制度設計に入ることをお勧めします。また、「基礎部活」の設計は舞鶴ちゃったスポーツクラブという総合型地域スポーツクラブの存在が前提です。受け皿となる団体がない場合は、地域のスポーツ少年団や体育協会と連携して、競技を問わない「多種目体験型クラブ」を新設することを検討してみてください。
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