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【事例】和歌山県有田市の部活動地域展開 ─ 1校統合を機に教委直営「有和クラブ」設立・ホッケー移行と生徒ニーズ型の新設3クラブ

公開:2026.10.02 更新:2026.10.02
この記事でわかること

・学校統合後の自治体が10年先の生徒数試算を根拠に地域展開へ先手を打った経緯
・教育委員会直営の任意団体「有和クラブ」による移行型+新設型の2本立て運営
・生徒アンケートと広報紙の定期発行が運営候補の地域団体発掘につながった過程

自治体名 和歌山県有田市
人口規模 約25,172人(令和6年度成果報告書時点)
中学校数 1校(有和中学校・全生徒610人・部活動23部)
運営形態 教育委員会運営の任意団体「有和クラブ」(事務局:有田市教育委員会)
対象競技 ホッケー、軟式野球、剣道、柔道(ほかサッカー教室を開催)
保護者負担額 定期的な会費徴収なし(練習試合時の交通費実費とスポーツ安全保険料 年800円のみ)

取り組みの概要

有田市では令和6年度に市内の中学校が1校(有和中学校)に統合され、生徒数の増加により各部活動の所属人数はいったん回復しました。しかし市の出生数をもとにした試算では、10年ほど先には生徒数が現状の半分程度まで減少することが分かっており、学校単位での部活動維持は難しくなると見込まれています。市は令和4年度から国の実証事業に参加し、令和6年10月から教育委員会が運営する任意団体「有和クラブ」を設立。部活動指導員が日常的に指導しているホッケー部の休日活動をクラブ活動へ移行するとともに、「競技力をより高めたい」という生徒のニーズに応える形で軟式野球・剣道・柔道の3クラブを新設しました。いずれも有和中学校を活動場所に、週1回休日に活動しています。

特徴的な取り組み

  • 移行型と新設型の2本立て: ホッケーは既存部活動の休日をクラブ化した「移行型」、軟式野球・剣道・柔道は部活動を残したまま希望者が参加する「新設型」。生徒の志向に応じて2つの形を使い分け、新設型は満足度9割超という結果を得ました。
  • 生徒アンケートを起点にした広報戦略: 令和6年10月の生徒アンケートで「地域移行を知らない」が76%、「移行後に参加したいか」に「まだわからない」が64.7%と判明。これを受けて広報紙「部活動地域連携・移行に関する取組のお知らせ」を定期発行し、生徒・保護者だけでなく地元公民館にも配布しました。その結果、クラブ運営に興味を示す地域団体が現れるという具体的な効果につながっています。
  • 市外・小学生にも開かれた設計: 有和クラブの体制図には市外中学生や市内外の小学生の参加も位置づけられており、将来の広域展開を見据えた設計になっています。アンケートでサッカーへの興味が多かったことを受け、令和7年2月にはサッカー教室も開催しました。
  • 先進地との交流で制度設計を学習: つくば市教育委員会とのオンライン交流や兵庫県部活動地域移行シンポジウムへの参加など、他地域の知見を取り込みながら検討を進めています。
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課題と解決策

課題 解決策
「部活動にはお金がかからない」という保護者意識(現状は年2,000円の任意寄付のみ) 年6,000円なら年360万円・年12,000円なら年720万円という受益者負担の試算を公表し、保護者アンケートも実施して段階的に理解を醸成
行政が事務局を担うことによる会計面の制約(支払い・予算流用等) 将来的に運営を地域団体へ移す体制を検討し、令和8年度以降を見据えた受け皿団体との協議を並行実施
指導者同士の考え方の差で合意形成が難航 希望する教員の指導者登録と資格取得の促進、安全な指導のあり方に関する研修機会の設定
1校統合で課題意識が薄まり機運が停滞 10年先の生徒数半減試算と2年連続の教員アンケート結果を示し、慎重に説明を重ねて事業を開始

成果・効果

新設型の軟式野球・剣道・柔道では、希望する生徒が参加できる休日の活動日を設けたことへの満足が9割を超えました。参加生徒からは「顧問の先生が普段教えないことを教えてくれた」「新しい知識を得ることができた」といった声が、教員からは「自身が携われない日も活動日として設定でき、安心して任せられる」「地域の指導者が主で指導してくれることで、自身の予定で活動を休みにする必要がなくなり気持ちが楽になった」という声が報告されています。また、全員がスポーツ安全保険に加入して活動したことで、急なトラブルにも対応でき、大きな自己負担を防げたとしています。令和7年4月以降も継続できるチームから活動を続け、新たな競技クラブの参入と、受け皿団体への運営移管に向けた協議を進める方針です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 和歌山県有田市」(PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

有田市の事例が貴重なのは、「学校統合で当面の危機が去った自治体」が先手を打った点です。1校統合で部員不足が解消すると地域展開の機運は薄れがちですが、同市は10年先の生徒数半減試算を示して着手を正当化しました。もう一つの注目点は、広報を「お知らせ」ではなく「体制づくりの手段」として使ったことです。生徒の76%が地域展開を知らないというアンケート結果から広報紙の定期発行に踏み切り、公民館配布を通じて運営候補の地域団体を発掘するという、情報発信が担い手確保に直結した稀有な実例になっています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

教育委員会が任意団体の事務局を直接担う方式は、立ち上げの速さと管理面の安心感がある一方、有田市自身が「会計面ではデメリット(支払い関係、予算流用等)に直面した」と率直に記しています。導入する場合は、行政直営は3年程度の時限措置と割り切り、当初から受け皿団体への移管時期を協議する二段階設計が賢明です。また、会費ゼロからのスタートは参加の裾野を広げますが、受益者負担への転換時に反発を招きやすいため、有田市のように具体的な金額試算(年6,000円・12,000円の2案)を早期に公表し、議論の土台を作っておくことが重要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討会議・教員アンケート(2年連続)・生徒アンケート・広報発信とプロセスの透明性は高く、合意形成の丁寧さが際立ちます。一方、運営・財源とも現状は行政依存で、推進計画も作成途中です。市自身が行政事務局の限界を認識し、令和8年度以降の受け皿団体への移管協議を始めている点は健全ですが、移管先の確保と受益者負担の制度化が実現するまでは過渡期のモデルと位置づけるべきでしょう。

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