【事例】高知県土佐清水市の部活動地域展開 ─ NPO法人が中学1校の2部活動を受託し、卒業生が地元高校の部を立ち上げる中高連携
・中学校1校・生徒174人の市でNPO法人が2部活動を受託し、中体連に地域クラブとして出場する運用
・保険料と施設使用料を市が負担し、他市町村からの参加生徒まで対象に含めた費用設計
・地域クラブの卒業生が地元高校の硬式テニス部を生み、中高が一緒に練習する連携の作り方
| 自治体名 | 高知県土佐清水市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約1.2万人(11,973人/令和6年度報告時点) |
| 中学校数 | 1校(清水中学校)・生徒174人・部活動11部 |
| 運営形態 | NPO法人スポーツクラブスクラムへの委託(高知県教育委員会→土佐清水市教育委員会→NPO法人の再々委託) |
| 対象競技 | バドミントン、硬式テニス(地域移行)/卓球、サッカー(地域連携) |
| 保護者負担額 | バドミントン 月500円(年6,000円)/硬式テニス 年会費10,000円。スポーツ安全保険料は市が負担 |
取り組みの概要
土佐清水市の中学校は、統廃合を繰り返した結果2013年に清水中学校1校のみになりました。当時350名だった生徒数は、2024年(令和6年度)には174名と11年でほぼ半分になっています。隣の中学校までは自動車で1時間程度かかり、合同部活動という選択肢も取りにくい地理条件です。
市は令和4年度に2部活動を地域移行し、令和5年度は地域移行3部活動・地域連携2部活動、令和6年度は地域移行2部活動(バドミントン・硬式テニス)・地域連携3部活動という構成で運営してきました。受け皿はNPO法人スポーツクラブスクラムで、高知県教育委員会からの委託を市教育委員会が受け、NPO法人へ再々委託する形です。
地域移行した2クラブは、いずれも中体連の大会に「地域クラブ」として参加しています。バドミントンは1〜3年の7名が月4回・週1回、16時30分から18時30分に市民体育館で活動。硬式テニスは総合公園テニス場などで月4回・週1回、17時30分から19時30分に活動しています。
特徴的な取り組み
- 中学校の地域クラブが地元高校の部を生んだ: 令和6年度、地域クラブでバドミントンや硬式テニスを続けてきた卒業生を中心に、地元の清水高校で硬式テニス部が発足しました。インターハイ出場を目標に活動し、各大会で好成績を収めています。高校生と練習を共にする中学生が先輩の姿を追って練習に励むという、地元の中学校から高校へつなぐ流れが生まれています。
- 高校を検討会の委員に加えた: 令和4年度から実施している検討・運営会議に、令和6年度から清水高校が委員として新たに加わりました。中学校・市教育委員会・地域スポーツクラブ・部活動指導者・スポーツ推進委員に高校が並ぶことで、進学後の受け皿まで含めた協議ができる体制になっています。令和7年度には高校が高台移転して中学校と隣接するため、さらに連携が進む見込みです。
- 保険料を自治体が負担する: 生徒と指導者の補償を考慮し、スポーツ安全保険の加入料を市が負担しました。対象は生徒9名・指導者8名で、他市町村から参加している生徒の保険料も市の負担対象としています。あわせて利用施設の使用料も減免しました。
- 帰りだけスクールバスを出す: 学校から練習場所まで徒歩約15分の距離を、部活動終了後にスクールバスで学校まで送迎しています。令和4年度のアンケートで保護者から「スクールバスを活用し、子どもの安全面を考慮してほしい」という意見が複数寄せられたことを受け、教育委員会内での協議を経て令和5年4月から実施しました。指導者からは「特に冬場などは道が暗く危険であるため、生徒の安全面を考慮すると送迎があるのは安心」という声が出ています。
- 市外の大会は市のマイクロバスで移動: 高知市など市外で開催される大会には市のマイクロバスを使い、2日間でのべ20人の生徒を送迎しました。運転手の賃金は時給2,100円で、学校教育係の予算で対応しています。
- 体験教室で競技人口そのものを増やす: 県補助金の子どものスポーツ環境整備事業を活用し、幼児から高校生を対象に硬式テニスや卓球の体験教室を実施しました。部活動加入者の減少そのものに手を打つ取り組みです。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 指導者の後継者不足。令和6年度は年度途中で指導者が退職し、地域連携部活動が3部から2部に減った | 部活動の指導者に検討会の委員となってもらい課題を協議。今後は指導者の複数体制の構築と後継者の育成を目指すとしている |
| 全国中学校体育大会における指導者資格の問題 | 検討・運営会議で継続的に協議する課題として整理し、県教育委員会にも委員として参加してもらっている |
| 中学校が1校しかなく、隣の中学校まで自動車で1時間かかる | 幡多地区6市町村の「部活動に関わる意見交換会」で近隣市町村と情報共有。他市町村から参加する生徒の費用負担も含めて調整している |
| 活動場所への移動が生徒・保護者の負担になっている | 練習後の帰りをスクールバスで送迎。市外の大会は市のマイクロバスを利用する。行きの送迎は今後の検討課題として明示されている |
| 部活動加入者そのものが減少している | 幼児から高校生を対象とした体験教室を地域スポーツクラブと連携して開催し、将来的な競技人口の増加を目指す |
成果・効果
令和6年12月27日から令和7年1月14日にかけて、地域移行実証事業の対象部活動の保護者・生徒・学校にアンケートを実施しました。保護者が参加理由として挙げたのは「学校部活動より専門的な指導が受けられる」「他の学校の友達と一緒にできる」「小学校から継続して地域クラブで活動している」などです。所属して良かったこととして「専門的な指導を受けることができた」「希望する種目を小学校から続けられた」「レベルにあった指導を受けられた」が挙がっています。
生徒が挙げた参加理由には「中学校に希望する種目がない」が含まれ、1校しかない中学校では校内に受け皿がない生徒が確実に存在することを示しています。一方、悩んだこととしては、生徒・保護者ともに「活動場所への移動」が最初に挙げられ、保護者からは「個人の金銭的負担が大きい」という声も出ています。
学校側は「やや働き方改革につながっている。理由は、部活動を行っている時間に教材研究や校務分掌等に取り組むことができるから」と回答し、良かった点として「教員の負担が減った」「生徒が意欲的に取り組むようになった」を挙げています。今後への要望としては「連絡係の先生の配置もなくしてほしい」「他の部活動も地域移行をしてほしい」という、さらに踏み込んだ声が記録されています。競技面では、小学校・中学校と一貫した指導を続けたバドミントンで県大会個人ベスト4という結果が出ています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 高知県土佐清水市」(PDF)
→ 検索システム: スポーツ庁 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 報告書検索システム
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