【事例】徳島県美馬市の部活動地域展開 ─ 平日は部活動指導員・休日は地域指導者を同じ元教員が担う穴吹中学校野球クラブ
・平日は部活動指導員、休日は地域指導者を同じ元教員が担う「指導者を替えない」移行の設計
・市教育委員会が自ら運営団体となり、合同チームの送迎を市費単独で負担する財政判断
・地域移行への賛成度が全体54%から68%へ上がった美馬市のアンケート推移
| 自治体名 | 徳島県美馬市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約2.7万人(26,527人/令和6年度報告時点) |
| 中学校数 | 7校(うち1校休校中)・生徒591人・部活動35部 |
| 運営形態 | 行政直営(美馬市教育委員会教育総務課が運営団体。推進体制は「美馬市教育委員会部活動の地域移行推進協議会」) |
| 対象競技 | 軟式野球(穴吹中学校野球クラブ) |
| 保護者負担額 | 会費は徴収せず。スポーツ安全保険は個々での対応 |
取り組みの概要
美馬市は総面積の約8割を森林が占める徳島県西部の市で、中学校7校(うち1校休校中)に生徒591人が在籍しています。35ある部活動のうち6つが合同チームで、単独でチームを組めない部活動や、生徒が希望する部活動が校内にないケースが生じています。卓球・ソフトテニス・柔道・剣道など個人種目の入部生徒が全体の約5割を占め、練習場所の調整も課題でした。
市の基本方針は「今現在、活動中の中学生が、取り組みやすいよう環境整備を行いながら、同時に令和7年度末をめざし、休日において部活動が地域移行できるよう条件を、行政主導で整えていく」というものです。受け皿団体が育つのを待つのではなく、市が運営団体になって先に1つ動かすという順序をとっています。
その最初の1つが、令和6年4月に始まった穴吹中学校野球クラブです。穴吹中学校では軟式野球部の設置が学校運営上困難になっていましたが、この事業により野球を続けたい生徒の希望をつなぎました。参加者は2年生9人・1年生1人で、月4回・週1回、午前9時から12時に穴吹中学校グラウンドで活動しています。
特徴的な取り組み
- 平日と休日で指導者を変えない: 指導者は元教員(60歳代・部活動指導経験あり)1名で、平日は部活動指導員、休日は地域クラブの指導者として同じ人物が指導にあたっています。指導者が入れ替わらないため生徒が戸惑わず、一貫した活動ができたと報告されています。
- 教員は副顧問として事務を担う: 主となる指導者を確保したうえで、事務的な業務に携わる副顧問を置く体制にしました。指導は外部、事務連絡は学校という切り分けが、教員の働き方改革につながったと評価されています。
- 合同チームの送迎を市費単独で負担: 部活動の合同チーム編成に伴う送迎を市の単独費で負担し、生徒・顧問・保護者の負担を軽減しました。部員数の多い部活動についても、他の活動場所の借用と送迎を公費で負担しています。
- 送迎にICTを活用: タブレットを使い、指導者が送迎車両を予約し、保護者が生徒の見守りを行える機能を利用しました。国土交通省のモデル事業を活用し、今後は予約窓口を一本化して地域の交通協会が対応する体制を目指しています。
- 実技中心の指導者研修を年3回: 指導者研修を年3回・のべ40人の参加で実施。「ウオーミングアップとクーリングダウンの重要性」「けがの応急処置法」などを扱い、講師は専門的な知識と実践力のある地域おこし協力隊に依頼しました。参加者は部活動指導員のほか、スポーツ少年団・スポーツ協会・スポーツ推進員・総合型地域スポーツクラブの指導者です。
- 県西部4市町での連携協議: 令和6年8月、美馬市を含む徳島県西部4市町で連携協議を実施し、各市町の現状と課題を情報交換しました。各市町の地域移行担当者が窓口になって連携する体制づくりを進めています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 生徒数の減少で単独校のチーム編成が難しい | 野球・サッカー・バレーボールで合同チームを編制し、送迎費を市費単独で負担。さらに県西部4市町での広域連携協議を開始した |
| 地域移行を進めるうえで指導者の人材不足が最大の課題 | 推進協議会やスポーツ団体へ働きかけを継続。人材バンク登録者は令和6年度時点で軟式野球の元教員1名にとどまることを報告書で公表している |
| クラブを運営できる体制が地域側に育っていない | 当面は市教育委員会が運営団体となって1クラブを走らせ、スポーツ団体との協議を重ねて受け皿づくりを進める。体験教室など「できる活動」から実現を目指す |
| 学校関係者には周知できたが保護者への周知が不十分 | 校長会を通じた学校側への周知に加え、保護者・地域への広報に取り組む方針を明記している |
| 活動中の事故への備え | 学校施設を活動場所とし、AEDを単独で設置して活動時に手元へ置く運用とした。他の活動場所でも同様の機材設置を進める |
成果・効果
市内の中学生・教員・保護者・小学校高学年児童を対象としたアンケートでは、地域移行への賛成度が令和5年度の全体54%から令和6年度は68%へ上昇しました。内訳は生徒44%→62%、保護者66%→68%、教員82%→87%です。期待することとしては「専門の指導者から指導が受けられる」「地域が活性化する」が挙がり、一方で不安としては指導者の人数や質の確保、学校との連携、トラブル対応の体制が挙げられています。
穴吹中学校野球クラブの参加者からは「スポーツ少年団でしていた野球が部活動でできて嬉しい」「監督がとても丁寧に教えてくれるので、上手になっている」という声が、保護者からは「指導経験者が監督で、保護者として信頼して任せることができる」「教員の負担軽減に大きくつながっている」という声が報告されています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 徳島県美馬市」(PDF)
→ 検索システム: スポーツ庁 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 報告書検索システム
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