トップ 事例を探す 香川県 【事例】香川県観音寺市の部活動地域展開 ─ 令和9年4月に休日を全市一斉で地域クラブへ移し土日いずれか1日に集約
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 香川県

【事例】香川県観音寺市の部活動地域展開 ─ 令和9年4月に休日を全市一斉で地域クラブへ移し土日いずれか1日に集約

公開:2026.09.01 更新:2026.09.01
この記事でわかること

・令和9年4月の全市一斉開始と休日の学校部活動の原則廃止、土日いずれか1日への集約という設計
・運営団体が参加費集金・保険・指導報酬支払いを一元管理し、各認定クラブは活動に専念する体制
・顧問の約半数が専門外という実態と、部活動指導員拡充・兼職兼業による指導者確保の進め方

自治体名 香川県観音寺市
人口規模 約5.5万人(2026年時点)
中学校数 基本方針に記載なし(市内の中学生人口は2024年時点で1,201人、2034年には905人と約25%減の見込み)
運営形態 運営主体=観音寺市(基本方針等の策定)。外部委託を受けた運営団体「観音寺市地域クラブ」が事務を一元管理し、実施主体は各認定地域クラブ
対象競技 全種目(認定地域クラブの例として軟式野球A・軟式野球B・バレーボール・バスケットボール・卓球・剣道・吹奏楽など)
保護者負担額 参加者(保護者を含む)負担が原則。運営団体が指導報酬等に充てる参加費を集金し、各認定地域クラブは消耗品購入費・大会参加費等のためクラブ運営費を別途集金可。金額は基本方針に記載なし

取り組みの概要

観音寺市と観音寺市教育委員会は令和8年4月、「観音寺市中学校部活動及び地域クラブ活動基本方針」を策定しました。平成31年4月策定の旧方針「観音寺市立中学校に係る部活動の方針」(令和5年12月改訂版)は、これに伴い廃止されています。

市は令和6年度に「観音寺市部活動地域移行検討協議会」を立ち上げ、「学校部活動が担ってきた教育的意義を継承・発展させ、子どもの多様な活動を保障するとともに、部活動に係る教職員の負担を軽減することで、子どもへの関わりを充実させる」という基本的な考え方の下で全体構想をまとめました。基本方針は、この全体構想と協議会での検討結果、令和7年12月にスポーツ庁・文化庁が策定した「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」等を踏まえて示されたものです。

最大の特徴は開始時期の切り方です。休日の地域クラブ活動は令和9年4月から全市一斉に開始し、開始後は休日の学校部活動を原則廃止すると明記されています。一部の種目は令和8年度中に前倒しで始まる場合があるとされています。平日の活動については、休日の実施状況等を検証したうえで開始時期を検討する段取りです。

特徴的な取り組み

  • 令和9年4月・全市一斉スタートと休日部活動の原則廃止: 学校ごと・種目ごとの順次移行ではなく、休日の地域クラブ活動を全市一斉に開始します。開始後は休日の学校部活動を原則廃止すると基本方針に書き込んでおり、「移行済みの学校とまだの学校」が併存する期間を最小化する設計です。
  • 活動は土日のいずれか1日: 令和9年度からの活動イメージは、月・火・木・金が学校部活動、水曜が休養日(平日1日程度)、土日は地域クラブとして活動し、土日いずれか1日の実施です。学校の学期中は土・日のどちらか1日を休養日に設定すると明文化されており、休日が丸ごと部活動で埋まらない構造になっています。
  • 運営団体「観音寺市地域クラブ」が事務を一元管理: 運営主体である市が外部委託し、運営団体「観音寺市地域クラブ」が指導人材の管理、認定地域クラブと中学校との連絡調整に加え、参加者の募集、保険の加入、参加費の集金、指導報酬の支払い等の事務を一元的に管理します。各認定地域クラブが個別に会計や保険手続きを抱え込まない形です。
  • コーディネーターを運営団体に置く: 運営団体の中に、種目ごとの活動エリアの調整、各認定地域クラブと中学校・競技団体との連絡調整、各クラブの活動における課題の把握と指導・助言を担うコーディネーターを位置付けています。
  • 指導者は「指導を希望する教職員」と「地域の協力者」: 地域クラブの指導者を、指導を希望する教職員と地域の協力者と定義しています。中体連や吹奏楽連盟等の大会は学校部活動としての参加を可とする整理も併記されており、大会参加の道を閉ざさない設計です。
  • 保険加入を参加条件に: 参加者と指導人材は、自身の怪我等を補償する保険と個人賠償責任保険への加入が条件です。運営団体が種目の特性や怪我・事故の発生状況を踏まえて保険を選定し、加入を義務付けます。
  • 学校外施設も部活動と同水準で利用可能に: 活動場所は学校施設を基本としつつ、認定地域クラブが学校外の施設を利用する場合、市内中学校の部活動と同様の水準で利用できることとしています。

課題と解決策

課題 解決策
中学生人口が2024年の1,201人から2034年には905人へ約25%減少し、団体種目でチームが組めない 合同練習・合同部活動の推進(軟式野球は4チームを合同2チームに、新体操は合同練習)と拠点校部活動の推進を進めたうえで、地域クラブ活動へ展開する
令和6年度の調査で、自分の専門分野を受け持てている部活動顧問(教員)が約半数(51.1%)にとどまる 部活動指導員の拡充(令和6年度実績は文化部3名・運動部2名)、柔道・ソフトテニス・水泳など地域の活動団体・クラブチームとの協力・連携、教職員の兼職・兼業と人材バンク登録・派遣元団体の整備
各クラブが個別に会計・保険・報酬支払いを抱えると事務が破綻する 運営団体「観音寺市地域クラブ」が参加者募集・保険加入・参加費集金・指導報酬支払いを一元管理し、各認定地域クラブは活動に専念する
参加費の発生による家計負担 市が認定地域クラブ参加費の低廉化等を図るため必要に応じて対策を検討。クラブ運営費を集金するときは公正かつ適切な会計処理を行い、透明性確保のため関係者への情報開示を適切に行う

成果・効果

市が公表した移行の全体像図では、令和9年度以降に目指す姿として「生徒の活動の確保」と並んで「令和9年度には休日(土・日・祝日)の教員の立場での指導をゼロにする」という数値目標が明記されています。休日の指導を丸ごとなくすのではなく、教員が「教員の立場では」指導しない状態をつくるという整理であり、指導を希望する教職員は兼職兼業者として地域クラブの指導者に登録する道が用意されています。

令和6年度の中学校部活動調査では、専門性のある教員が51.1%、専門外が48.9%と、顧問のほぼ半数が専門外の種目を担当している実態が示されました。市はこの数値を「専門性ある指導者の確保」「教員の負担増」「指導へのやりがい」という3つの課題として整理し、部活動指導員の拡充と各種団体との協力・連携、教職員の兼職・兼業という3本の対策に結びつけています。

合同化はすでに動いており、軟式野球は4チームを合同2チームに再編、新体操は合同練習を実施しています。また地域クラブ活動としてプログラミング(国の実証事業)が挙げられており、既存の部活動にない種目を地域側から追加する動きも始まっています。

出典

→ 原文: 観音寺市「観音寺市中学校部活動及び地域クラブ活動基本方針」基本方針本文PDF・令和8年4月/観音寺市・観音寺市教育委員会)/香川県教育委員会「各市町の取組み」観音寺市立中学校の部活動「地域連携・地域移行」のこれから・2024年9月作成

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

観音寺市の設計で最も実務的なのは、運営団体に事務を集約した点です。参加者募集・保険加入・参加費集金・指導報酬支払いという、地域クラブ運営で最も手間がかかり最も事故が起きやすい4業務を「観音寺市地域クラブ」1か所に寄せ、各認定地域クラブは活動そのものに専念する構造にしました。認定制だけを導入して会計と保険を各クラブ任せにする自治体は多く、そこで数年後に未加入・未収金・領収書不備が表面化します。観音寺市はそれを制度開始前に潰しています。加えて「令和9年度には休日の教員の立場での指導をゼロにする」という、達成/未達が誰の目にも判定できる目標を掲げた点も特筆に値します。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

全市一斉方式は、開始日までに全種目分の指導者と認定クラブを揃えなければ「その種目だけ活動場所がない」という穴が空きます。観音寺市はその前段として、合同部活動(軟式野球4チーム→2チーム)と拠点校部活動を先に走らせ、地域クラブに移す前にチーム単位を整理しました。一斉方式を採るなら、この「移す前に統合しておく」工程を必ず挟むべきです。もう一つ、活動を土日いずれか1日に絞る方針は、週2日活動していた種目の保護者から反発が出やすいところです。観音寺市は休養日設定を基本方針本文に書き込み、市の方針として個別クラブの裁量から外しました。運用でなく方針で縛る形にしておくと、現場が個別交渉に晒されずに済みます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

「観音寺市地域クラブの認定等に関する要綱」を令和8年4月に策定して認定の根拠を明文化し、クラブ運営費の集金時には公正かつ適切な会計処理と関係者への情報開示を求める規定を置いた点は、透明性の担保として妥当な水準です。保険も参加者・指導人材の双方に加入を義務付け、運営団体が種目特性に応じて保険を選定する形をとっています。残る不確定要素は金額で、参加費・クラブ運営費とも水準は基本方針に記載がなく、低廉化対策も「必要に応じて検討」の段階です。令和9年4月の一斉開始に向け、実際の月額がどこに着地するかが持続可能性の分岐点になります。

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