【事例】福岡県筑紫野市の部活動地域展開 ─ 5団体構成の実行委員会が指導者を派遣し1校ずつ休日を移す段階展開
・活動内容は変えず責任者だけを入れ替える筑紫野市の地域展開の考え方と、1校ずつ移す3年計画
・スポーツ協会・文化協会・校長会・教頭会・教委の5団体で構成する実行委員会と指導者バンクの設計
・地域展開後も指導を続けたい教員が約3割という調査結果と、費用・活動場所への保護者不安への対応
| 自治体名 | 福岡県筑紫野市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約10.6万人(2026年時点) |
| 中学校数 | 5校(生徒3,003人・部員2,393人/令和5年度) |
| 運営形態 | 「筑紫野市部活動地域展開実行委員会」(筑紫野市スポーツ協会・筑紫野市文化協会・筑紫野市中学校校長会・筑紫野市中学校教頭会・筑紫野市教育委員会で構成)が市の委託を受けて統括 |
| 対象競技 | 全種目(陸上・テニス・卓球・サッカー・バスケットボール・野球・バレーボール・バドミントン・剣道・ソフトボール・水泳・柔道・美術・吹奏楽・コンピュータ・放送・硬式テニス・新体操・体操・空手) |
| 保護者負担額 | 一定の受益者負担を求める方針。金額と徴収開始時期は実行委員会で決定(保護者アンケートでは月額3,000円以下の希望が多数) |
取り組みの概要
筑紫野市は令和6年度に「筑紫野市部活動地域移行検討協議会」を立ち上げ、部活動地域展開のあり方について協議を行い、令和7年3月に「筑紫野市部活動地域移行実施方針」を策定しました。
実施方針の起点となったのは、令和6年2月に市内中学校教員を対象に行ったアンケートです。「休日の部活動の地域移行後も指導者を担当しますか」という問いに「はい」と答えた教員は約3割にとどまりました。担当したくない理由としては「休日が取れない」「時間外勤務が常態化する」が突出して多く、次いで「プライベートが犠牲になる」「経験のない競技の指導」「賃金が正当に支払われていない」が並びました。方針はこの結果を受けて、現状の部活動を維持するためには指導者を一定数確保する必要があると明記しています。
令和7年度は実施方針に基づき「筑紫野市部活動地域展開実行委員会」を設置し、実施校の順番を決定しました。市は保護者・生徒向けに、地域展開後も基本的に現在の部活動の形をそのまま継続すること、これまでとの違いは顧問教員の責任下で行っていた活動が実行委員会の派遣した指導者の責任下で行われる点であることを明示しています。
特徴的な取り組み
- 5団体で構成する実行委員会が運営主体: 市からの委託を受けた実行委員会が地域クラブ活動全体を統括し、企画・運営や人材の確保、連絡・調整、その他の事務を担います。構成は筑紫野市教育委員会・筑紫野市立中学校・筑紫野市体育協会・筑紫野市文化協会から選出された委員です。運動部と文化部の統括団体を同じ卓に載せている点が特徴です。
- 1校ずつ移す段階展開: 令和7年度を準備期間とし、令和8年度中に天拝中学校、令和9年度中に筑山中学校・筑紫野中学校、令和10年度中に二日市中学校・筑紫野南中学校の休日部活動を地域展開します。実施方針は、市内5校一律の移行は実行委員会の負担が大きく指導者が十分に確保できるか不透明であることを、段階移行を選んだ理由として明記しています。
- 平日と休日で役割を分ける「基本運用」: 平日は学校部活動を継続して教員の「顧問」を引き続き配置し、外部指導者の派遣による「地域連携」で負担軽減を図ります。休日は学校管理外の地域クラブ活動へ移行しますが、活動単位・活動場所・活動用具・活動内容等は平日の部活動と共有し、生徒の環境変化を最小限にとどめる設計です。
- コーディネーターを「橋渡し役」に置く: 平日の顧問教員と休日の地域クラブをつなぐコーディネーターを配置し、出欠の連絡や相談、トラブル対応のほか、実行委員会や指導者バンクの運営にかかる事務を担わせます。配置体制は休日の学校管理業務(校内巡視、校舎や倉庫等の鍵の管理、保護者や来校者への対応)と併せて検討するとされ、休日に校門を誰が開けるかという実務まで含めて設計されています。
- 競技経験を問わない指導者バンク: 実行委員会に指導者バンクを設置し、体育協会・文化協会と連携して指導者の確保・育成に取り組みます。市は登録者を募集中で、指導時間の実績に応じて謝金を支払い、競技経験の有無は問わないとしています。
- 移行対象外の学校にも外部指導者: 段階移行の順番を待つ学校についても、外部指導者の配置による地域連携を推進して教員の負担軽減を図る方針です。移行が最後になる学校が3年間放置されない仕組みになっています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 地域展開後も指導者を担当してよいと考えている教員が約3割にとどまり、指導者が不足する | 実行委員会に指導者バンクを設置し、体育協会・文化協会と連携して確保・育成。競技経験を問わず募集し、指導時間の実績に応じて謝金を支払う |
| 市内5校を一律に移行すると実行委員会の負担が大きく、指導者を確保できるか不透明 | 令和8年度1校、令和9年度2校、令和10年度2校の段階移行とし、移行対象外の学校には外部指導者を配置して地域連携を進める |
| 生徒・保護者アンケートで「活動場所が学校以外になること」「費用負担の増加」への不安が最多 | 活動場所・活動用具・活動内容を平日の部活動と共有して環境変化を最小限にし、事業費を可能な限り抑えて費用負担が大きく増えないようにする |
| 受益者負担の導入による経済格差の体験格差化 | 困窮世帯への支援を必須事項とし、経済格差が体験格差につながらないよう十分に配慮した制度設計とする。金額と徴収開始時期は国・県補助金の動向と近隣市の動向、学校間の平等性を勘案して実行委員会が決定する |
成果・効果
令和5年度の実績では、市内5校の生徒3,003人に対し部員数は2,393人、入部率79.7%(運動部61.4%、文化部18.3%)と高い水準にあります。実施方針は「筑紫野市では、現在のところ生徒数は維持・微増で推移しており、今後数年間も同様の傾向が続くと見込んでいる」とし、生徒数の急減より先に教員側の持続可能性が限界を迎えている構図を示しています。
令和6年10月に市内小学5・6年生と中学1・2年生およびその保護者を対象に実施したアンケートでは、部活動に入部して良かったかという問いに生徒・保護者ともに9割前後が肯定的に回答しました。良かった理由の最多は「友人が増えた」で、「技術が向上した」「心や身体が成長した」が続いています。実施方針はこの結果から、部活動が生徒の居場所づくりとしても貢献度が高いと評価しました。
一方、休日の部活動がクラブチームに移行した場合の心配としては、生徒・保護者ともに「活動場所が学校以外になること」が最多で、保護者では「費用負担の増加」が続きました。許容できる費用は月額3,000円以下を望む声が多く、これらの結果が「現行の部活動の形を可能な限り継承しながら教員負担の軽減に資すること」「費用負担が大きく増えないよう可能な限り事業費を抑えること」という2つの方向性に直結しています。
出典
→ 原文: 筑紫野市「中学校部活動を地域展開します」(筑紫野市部活動地域移行実施方針・令和7年3月/筑紫野市教育委員会・筑紫野市部活動地域移行検討協議会)
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