【事例】佐賀県鳥栖市の部活動地域展開 ─ 受け皿が育つまで行政が運営主体を引き受け休日の学校部活動を終える
・休日の学校部活動を行わないと決め、認定地域クラブへ移す鳥栖市の方針
・受け皿不足を埋めるため市が当面の運営主体・実施主体を引き受ける3課連携体制
・運動部加入率57%・生徒数1,997人→1,300人という実態データの開示手法
| 自治体名 | 佐賀県鳥栖市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約7.4万人(74,167人・2026年4月末時点) |
| 中学校数 | 4校(鳥栖中・田代中・基里中・鳥栖西中/全校生徒1,997人・2025年5月1日現在) |
| 運営形態 | 行政直営(当面の間、市が地域クラブ活動の運営主体・実施主体を担う方針) |
| 対象競技 | バレーボール、バスケットボール、ソフトテニス、陸上競技、軟式野球、卓球、サッカー、剣道、バドミントン、空手道、体操競技、美術、吹奏楽、パソコン |
| 保護者負担額 | 調査時点で未公表(費用負担・徴収方法は推進会議で検討中) |
取り組みの概要
鳥栖市は、市立中学校の部活動を地域クラブ活動へ展開するため、令和7年12月1日に「鳥栖市立中学校部活動地域展開推進会議」を設置しました。識見を有する者、市立小中学校関係者、保護者代表、スポーツ及び文化芸術関係団体代表者、佐賀県の部活動地域展開担当者など15人以内で組織する会議体です。
令和8年2月24日の第2回会議では、市教育委員会が「鳥栖市立中学校部活動改革推進に関する推進体制の考え方について(案)」を示しました。この案で市は、休日の部活動を認定地域クラブによる地域クラブ活動へ移行し、同時に休日の学校部活動は行わないと明記しています。平日の部活動についても、休日の移行の進捗状況を考慮しながら同様に検討し、認定地域クラブへ移行するとしています。
市が全国的に見ても踏み込んでいるのは、受け皿となる運営団体・実施主体を外部に求めるのではなく、「当面の間、行政が担う」と自ら引き受けた点です。国のガイドラインが示す「運営団体=実施主体」のパターン①を基本とし、学校教育課・スポーツ振興課・文化芸術振興課の3課が連携して運営部門と実施部門を構成する相関図を提示しました。
あわせて市は、競技種目ごとに地域展開の進捗が異なることを前提に、種目ごとに学校部活動を行わないことも考えられると明記しています。全種目一斉ではなく、整った種目から順に学校部活動を終えていく設計です。
特徴的な取り組み
- 行政が運営主体・実施主体を引き受ける: 指導者の確保、教職員の兼職兼業対応、指導者への研修実施、生徒の入退会管理、会費の徴収と報酬支払、保険加入、活動場所の確保までを「運営部門」が担い、指導者の派遣・連絡調整・安全確保の取組を「実施部門」が担う体制図を公表しました。受け皿団体の不在を理由に着手が遅れる構造を、行政が主体を務めることで回避しています。
- 3課横断の推進体制: 学校教育課(学校部活動)・スポーツ振興課(運動部)・文化芸術振興課(文化部)の3課が運営・実施部門を支える構成とし、スポーツ協会・総合型地域スポーツクラブ・競技団体・文化芸術団体を「関係機関」として横に接続しています。
- 1,527人・1,350人規模のアンケートを起点にした検討: 令和7年2月に、小学5・6年生(対象1,527人/回答1,302人・回答率85%)、中学1・2年生(対象1,350人/回答884人・回答率65%)とそれぞれの保護者に調査を実施し、結果を4本のPDFで公開したうえで推進会議の資料としています。
- 部活動の実態を数値で開示: 運動部の加入率は市全体で57%(鳥栖中61%・田代中56%・基里中73%・鳥栖西中51%)、文化部は19%。指導体制は運動部の顧問114人に対し外部指導者8人・部活動指導員8人にとどまることを、会議資料で公表しています。
- 少子化の見通しを長期で提示: 市立中学校の生徒数は令和7年度1,997人から令和19年度には1,300人程度まで減少する見込みと算出しました(住民基本台帳の年齢別人口に市立中学校進学率85%を乗じて推計)。0歳人口485人という足元の数字も同じ資料に並べています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 受け皿となる運営団体・実施主体が地域に整っていない | 当面の間、市(行政)が運営主体・実施主体を担うと明記。国が示す「運営団体=実施主体」のパターン①を基本とし、学校教育課・スポーツ振興課・文化芸術振興課の3課で運営部門・実施部門を構成する |
| 指導者が不足している(運動部顧問114人に対し外部指導者8人・部活動指導員8人) | 運営部門の業務に「指導者の確保」「教職員の兼職兼業対応」「指導者への研修実施」を位置づけ、スポーツ協会・総合型地域スポーツクラブ・競技団体・文化芸術団体との連携を推進する |
| 競技種目ごとに地域展開の進み方が異なる | 全種目一斉ではなく、休日・平日ともに種目ごとに学校部活動を行わないことも想定する設計とし、整った種目から順次移行する |
| 生徒数が令和19年度に1,300人程度まで減る見込みで、現行の部活動数を維持できない | 推計値を推進会議の共通資料として提示し、部活動の維持ではなく地域全体での受け皿づくりを前提に議論を進める |
成果・効果
令和8年2月時点で、鳥栖市は「休日の学校部活動を行わない」という方針の方向性を推進会議で示す段階まで到達しています。今後は、市の部活動改革(部活動地域展開)に関する方針・推進計画等の策定に取り組むとともに、平成30年12月に策定した「部活動の在り方に関する方針」に地域展開の内容を追加する改定を進めるとしています。また、国のガイドラインで新設された認定制度について調査研究を行い、認定地域クラブの認定要件を検討する方針です。
会議資料では、指導者の確保・育成、活動場所の確保、移動手段の確保、生徒の安全・安心の確保など、国ガイドライン第3章が挙げる6項目について具体的な検討を進めると明記されており、保護者の費用負担・徴収方法・指導者への報酬支払も検討事項として整理されています。
出典
→ 原文: 鳥栖市「市立中学校部活動の地域展開について」
→ 原文: 鳥栖市「鳥栖市立中学校部活動地域展開推進会議」(第1回・第2回会議資料)
→ 原文: 鳥栖市教育委員会「鳥栖市立中学校部活動改革推進に関する推進体制の考え方について(案)」(令和8年2月・PDF)
→ 原文: 鳥栖市教育委員会「第1回鳥栖市立中学校部活動地域展開推進会議 資料1 鳥栖市の現状について」(PDF)
→ 原文: 鳥栖市「部活動に関するアンケート結果」
CONSULTING / 専門家に相談
受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?
設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。