トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県北茨城市の部活動地域展開 ─ 行政主導型で7つの地域クラブを立ち上げ・対象部活動の生徒78.3%が加入・会費0円運営
全種目 👥 1~5万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県北茨城市の部活動地域展開 ─ 行政主導型で7つの地域クラブを立ち上げ・対象部活動の生徒78.3%が加入・会費0円運営

公開:2026.08.20 更新:2026.08.20
この記事でわかること

・総合型クラブがない北茨城市が行政主導型で7つの地域クラブを立ち上げた仕組み
・会費0円・中体連は部活動として出場する設計で対象生徒の78.3%が加入した要因
・登録時の資格確認とプロクラブ指導者を招いた研修による指導者の品質管理手法

自治体名 茨城県北茨城市
人口規模 約4.0万人(39,898人)
中学校数 4校(生徒数891人・20部活動)
運営形態 行政主導型(市教育委員会が事務局・運営団体となり各クラブへ指導委託)
対象競技 体操、卓球、軟式野球、ソフトテニス、柔道
保護者負担額 会費0円(市の補助により参加費を徴収せず。スポーツ安全保険料 年800円のみ)

取り組みの概要

北茨城市の中学校生徒数は平成26年度の1,209人から令和5年度には945人まで減少し、競技クラブの活動が活発化したこともあって中学校で運動部に入部する生徒が激減しています。多くの競技で単独校では団体戦が組めない事態となる中、市は生徒の活動の場を確保するため、令和4年度に検討委員会を立ち上げ、令和5年度から各中学校で1部活動ずつ地域クラブへの移行を実施。令和6年度は兼職・兼業の教員や既存のクラブ・スポーツ少年団・スポーツ協会の協力を得ながら4つの地域クラブを新たに立ち上げ、磯原体操スクール・中郷卓球クラブ・JIN(軟式野球)・北茨城ソフトテニスクラブ・NIB・NIG(いずれもソフトテニス)・中郷柔道スポーツ少年団の計7クラブ体制としました。市内に総合型地域スポーツクラブがないため、市教育委員会が事務局として指導者募集・参加者募集・活動調整・活動費管理を担う「行政主導型」で進めているのが特徴で、該当する部活動に加入している生徒の78.3%が地域クラブに加入しています。

特徴的な取り組み

  • 受け皿がない地域での行政主導型モデル: 総合型クラブが存在しない市で、市教委(生涯学習課がクラブの監督・会計管理・新規クラブ開拓、学校教育課が学校との折衝)が運営団体となり、既存の少年団や競技クラブ・兼職兼業教員へ指導委託する形で7クラブを組成しました。
  • 市の補助による会費0円運営: 令和6年度も市の補助により保護者から参加費を徴収せず、負担はスポーツ安全保険料(年800円)のみ。経済的な理由で参加をあきらめる生徒を出さない設計です。
  • 指導者の質を担保する登録・研修制度: 登録時に指導資格・指導歴を確認したうえで指導者委託し、令和6年度は29人を登録。水戸ホーリーホックアカデミーヘッドオブコーチの鳥羽俊正氏を講師に「小学生年代の指導者に求められる役割」研修会を開催し、地域クラブ・スポーツ少年団の指導者39人が参加しました(受講者の92.1%が「とても参考になった」と回答)。
  • 大学研究者をオブザーバーにした検討体制: 筑波大学の長谷川准教授をオブザーバーとして部活動の地域移行に関する検討委員会を年2回開催し、専門的知見を取り入れています。
  • 中体連大会へは部活動として出場: 各クラブとも大会参加は部活動の枠組みを維持し、練習計画や子どもたちの様子は指導者と部活動顧問が直接連絡を取り合って調整しています。

課題と解決策

課題 解決策
運営主体がないため市教委担当課の業務量が増大している 運営団体の整備や人材の確保など、持続可能な運営ができる組織体制の整備を進める
指導者と学校・事務局の連携不足(指導者アンケートで指摘) 次年度は協議する機会を設けて繋がりを強化。指導者研修会も年1回から3回に増やす方針
指導者研修の機会が少ない オンライン研修等を活用した複数回開催と、普通救命講習など安全確保・見守りに重点を置いた研修を実施
吹奏楽部は移行の目処が立っていない 令和7年中にほとんどの運動部活動の移行を完了させたうえで、文化部の受け皿を引き続き検討

成果・効果

令和7年1月に実施した生徒アンケートでは、地域クラブに参加した生徒の70.6%が「技術が向上したと思う」と回答しました。理由として「今いる学校の練習と違うメニューで練習できたから」「そのスポーツを長年してきた人から指導を受けて、試合の立ち回りかたなどが以前より上手になったから」などが挙げられています。登録指導者29人は指導資格・指導歴を確認したうえで委託したため安心して指導を任せられ、地域クラブでの指導者トラブルは発生していません。スポーツ協会・スポーツ少年団の協力もあり、令和7年中にはほとんどの運動部活動が移行できる予定です。

出典

→ 原文: スポーツ庁 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 茨城県北茨城市(茨城県教育委員会掲載PDF)

→ 参考: 茨城県教育委員会「部活動地域展開」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

北茨城市の78.3%という加入率は、移行初期の自治体としては非常に高い水準です。要因は3つに整理できます。第一に会費0円(保険料のみ)で参加の経済的ハードルを外したこと。第二に、既存部活動を移行した「ケースA型」7クラブ・11部活動という設計で、生徒にとって”いつもの仲間と同じ競技を続ける”連続性が保たれたこと。第三に、中体連大会へ部活動として出場する枠組みを残し、保護者・生徒の「大会に出られなくなるのでは」という不安を封じたことです。受け皿となる総合型クラブがない自治体は全国に多く、行政主導型でまず移行を成立させてから運営主体を育てるという北茨城市の順序は、同条件の小規模市町村にとって現実的なロードマップといえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

行政主導型の宿命として、北茨城市自身が認めるとおり担当課の業務量増大が最大のハードルです。指導者募集・参加者募集・活動調整・会計管理を教育委員会2課で担う体制は、クラブ数が7を超えて拡大する局面で必ず限界が来ます。導入する場合は、移行の進捗と並行して運営団体の法人化や統括団体への事務移管の時期をあらかじめ決めておくべきです。また会費0円は加入率を押し上げる強力な手段ですが、市の補助が前提のため財政状況に左右されます。有料化する際の激変緩和(段階的な値上げ・就学援助世帯の免除)まで見据えた財源設計が必要です。指導者面では、登録時の資格・指導歴確認とプロクラブ関係者を招いた研修という北茨城市の品質管理手法は、小規模自治体でも真似しやすい実務です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

筑波大学准教授をオブザーバーとする検討委員会、立場別アンケートの毎年度実施、指導者の登録時審査と研修義務化など、小規模市としては検証と品質管理の仕組みが整っています。指導者トラブル0件という実績もその表れです。一方で持続可能性の論点は明確で、①市補助頼みの会費0円がいつまで維持できるか、②市教委直営の事務局体制をどう法人格のある運営主体へ引き継ぐか、の2点に集約されます。運動部の移行完了が見えた今、次の焦点は吹奏楽部を含む文化部の受け皿づくりです。

CONSULTING / 専門家に相談

受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?

設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。

🏢 クラブ立ち上げ
🤝 行政調整・仲介
📊 事業計画策定

HOW TO START

3ステップで
相談を始められます

  • 01フォームから状況を送信
  • 02オンラインで初回ヒアリング
  • 03最適な支援プランを提示
専門家に相談する →
企業の方へ
部活動地域展開の市場・本サイトの読者層に関心のある企業向けのご案内ページをご用意しています。
FOR BUSINESS →