【事例】福井県あわら市の部活動地域展開 ─ 市独自の4段階指導者研修制度で質を確保
・福井県あわら市の地域移行で直面した指導者の質の確保の課題と解決策
・市独自の4段階指導者研修制度の設計と運用方法
・他の自治体が参考にすべき指導者認定制度設計の視点
| 自治体名 | 福井県あわら市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約2.6万人(令和6年度時点) |
| 中学校数 | 2校 |
| 運営形態 | 総合型地域スポーツクラブ(あわら市) |
| 対象競技 | 陸上競技、卓球、バドミントン、ソフトテニス、野球等(8種目) |
| 保護者負担額 | 調査時点で未公表 |
取り組みの概要
福井県あわら市は、地域クラブ活動の指導者に対する市独自の研修制度を整備しました。コーチングや救命講習のようなスポーツ指導に関する研修の中に、いじめや人権に関する内容を盛り込むなど、技術指導だけでなく子供たちの健やかな成長を支える人材の育成を目指しています。令和5年度に休日部活動の地域クラブ活動への移行を開始し、陸上競技・卓球・バドミントンなど8つの部活動を市の総合型地域スポーツクラブが運営する地域クラブ活動へ移行。令和6年度には指導者研修制度を体系化し、受講を指導者として従事するための条件に設定しました。
特徴的な取り組み
- 4種類の必須研修の体系化: ①安全管理研修(AED・熱中症対策・緊急時初動マニュアル等、年1回全指導者対象)②指導者研修会(地域クラブ活動の運営方針・ガイドライン共有・保護者と指導者間の課題共有等、欠席者は後日受講可能)③資質向上研修(基本的なコーチング技法・ハラスメント防止・生徒の多様性・人権への配慮した接し方、大学教員等の外部講師)④生徒指導・生徒理解研修の4種を体系化。全研修の受講を指導者として従事する条件に設定。
- 欠席者への柔軟対応と継続確認: 指導者研修会は欠席者が後から受講できる体制を構築し、全指導者が確実に研修を受講している体制を維持。コーディネーターが月1回程度訪問し、生徒の活動の様子や指導者の指導の実態を確認している。
- 生徒指導観点の全研修への織り込み: 生徒指導は独立した研修としてではなく、①〜④全ての研修に生徒指導の観点が含まれる形で設計。子供のメンタルケアや人権に関する内容が各研修を通じて繰り返し問われる構造になっている。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 技術指導力はあっても安全管理や人間関係のトラブル未然防止などの知識・技能が不足している指導者がいる | 安全管理・ハラスメント防止・生徒理解を含む4種類の必須研修を体系化し、受講を活動条件とした |
| 指導者の高齢化が進む中、現代のスポーツ活動環境に適した指導方法の導入と若い指導者の確保が必要 | 大学教員等の外部講師を活用した資質向上研修を導入し、研修内容を毎年アップデート |
| 研修の未受講者への対応 | 欠席者に対して働きかけを行い、全指導者が確実に受講している体制を構築 |
成果・効果
研修制度により、指導者の質が確保され、基準を満たした指導者が地域に配置されるようになりました。保護者の安心感が大きく向上し、地域のスポーツ活動に対する信頼感も高まりました。研修を通じて指導者の指導力や安全管理意識が向上し、実際の指導に活かされています。令和8年度には市独自の指導者認定制度への発展が検討されており、本研修を受講した指導者をあわら市が独自に公認する制度への移行が視野に入れられています。
出典
→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)事例集(スポーツ庁, 令和7年)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
あわら市の事例の核心は、「指導者資格を持っていれば十分ではない」という問題意識を制度設計に落とし込んだ点にあります。公認スポーツ指導者の資格は競技技術の指導に重点が置かれていますが、子供の人権保護やメンタルケア、安全管理など、地域クラブ活動の指導者には競技指導以外のスキルも求められます。あわら市では、これらを網羅した4種類の必須研修を市独自に設計し、受講を活動条件としました。
特に「生徒指導の観点を全研修に織り込む」という設計は示唆に富んでいます。子供のメンタルケアや人権への配慮は、安全管理研修でも、コーチング研修でも、繰り返し問われるべきテーマです。単独の研修科目として設けるだけでなく、あらゆる場面で問われる姿勢として位置付けることで、指導者の日常的な行動変容につながります。将来的に市独自の指導者認定制度への発展を見据えている点も、持続可能な仕組み構築の観点から注目されます。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
最大の課題は研修コンテンツの設計と外部講師の確保です。あわら市では大学教員等の外部講師を活用していますが、適切な講師確保が難しい自治体もあるでしょう。対策としては、都道府県のスポーツ協会や大学スポーツ学部と連携して研修プログラムの共同開発・共同実施を行う方法が有効です。また、オンライン受講の仕組みを構築することで参加しやすい環境を整えることも重要です。あわら市でも欠席者対応の仕組みを整備しており、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド研修が今後の標準形態となるでしょう。
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