【事例】石川県かほく市の部活動地域展開 ─ 3中学校905人・人口9年連続増加県内唯一の自治体・R6は全額公費負担・退職校長コーディネーターR5配置
・石川県かほく市の地域移行で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
| 自治体名 | 石川県かほく市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3.5万人(石川県内では例を見ない9年連続人口増加) |
| 中学校数 | 公立3校・全生徒数905人・17部活動(移行前数) |
| 運営形態 | 地域スポーツ団体・文化芸術団体(協会)運営型・かほく市教育委員会主導 |
| 対象競技 | 軟式野球・バスケットボール・バドミントン・ソフトテニス・卓球・バレーボール・柔道(3クラブ先行展開) |
| 保護者負担額 | 令和6年度は全額公費負担・令和7年度本格実施に向けて受益者負担試算 |
取り組みの概要
石川県かほく市は、石川県内では例を見ない地域全体人口が9年連続で増加している自治体です。中学生徒数についても令和4年度に減少のピークを迎えた後は増加傾向にあります。しかしながら部員数の減少が続き、活動が縮小化したり廃部になったりするなど、生徒たちの多様な活動を継続することが難しくなってきており、学校部活動の維持が困難となる前に、新たな地域クラブ活動の取組を推進しています。
同市の特徴は、令和4年度に部活動地域移行推進本部設置・骨子作成・アンケート調査実施・NPO法人との協議を行い、令和5年度に総括コーディネーター(退職校長)1名を配置、令和6年度に3競技で休日移行を開始するという段階的な準備を整えた点。令和6年度は全額公費負担で運営し、令和7年度本格実施に向けてガイドラインの策定・受益者負担の試算を進めています。
特徴的な取組
- 石川県内例を見ない9年連続人口増加の地域: 県内全体が人口減少傾向にあるなか、かほく市は地域全体人口が9年連続で増加している唯一の自治体。それでも部員数の減少は止まらず、地域移行が必要となる構造的課題を示唆。
- R4・R5・R6の3段階準備: 令和4年度に部活動地域移行推進本部設置・骨子作成・アンケート調査・NPO法人との協議。令和5年度に退職校長コーディネーター配置と意見交換会。令和6年度に3競技で休日移行開始。
- 令和6年度は全額公費負担: 立ち上げ期の家計負担を抑えるため、令和6年度の参加費は全額公費負担。「いきなり有料化」のハードルを回避。
- 退職校長を総括コーディネーターに配置: 令和5年度に退職校長1名を総括コーディネーターとして配置。学校現場の経験を活かした円滑な調整役を確保。
- NPO法人との協議モデル: 令和4年度に推進本部とともにNPO法人との協議を実施。多様な運営主体候補との対話で課題を抽出。
- 3校体制での地域クラブ整備: 3つの公立中学校(高松中学校・宇ノ気中学校・七塚中学校)・905人を対象に3クラブを展開。月20回という高頻度の活動を確保。
- R7年度本格実施に向けた準備: ガイドラインの策定・受益者負担の試算という具体的な準備作業を令和7年度本格実施に向けて進行中。
- 各学年の活動規模: 各学年クラブ平均で2年17人・1年15人と充実した参加を確保。3年生3人は最終学年特有の縮小傾向。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 地域全体人口は増加しているが、部員数の減少が続き活動縮小・廃部が増加 | 学校部活動の維持が困難となる前に、新たな地域クラブ活動の取組を3段階(R4骨子→R5コーディネーター→R6移行開始)で推進 |
| 運営主体の選定と意見集約 | 令和4年度にNPO法人との協議を実施し、令和5年度に拠点校との意見交換会・スポーツ団体や文化団体との意見聴取と意見交換会を実施 |
| コーディネーターの質確保 | 退職校長1名を総括コーディネーターに配置。学校現場の経験を地域移行の調整役として活用 |
| 家計の経済負担 | 令和6年度は全額公費負担。令和7年度本格実施に向けて受益者負担の試算を並行進行 |
| 令和7年度の本格運営の継続性 | ガイドラインの策定と受益者負担の試算を令和6年度内に進め、本格運用の前提条件を整備 |
| 保護者の理解促進 | 保護者説明会を開催し、ガイドラインの説明と協議を実施 |
成果・効果
令和4年度の準備開始から3年間の段階的取組で、令和6年度に3競技(軟式野球・バスケットボール・バドミントン・ソフトテニス・卓球・バレーボール・柔道のうち先行3競技)の休日地域移行を実現。指導者20名・運営スタッフ6名で月平均20回の活動を実施し、各学年クラブ平均で2年17人・1年15人という充実した参加を確保しました。令和6年度は全額公費負担という大胆な政策判断で立ち上げ期の家計負担を解消。令和7年度本格実施に向けてガイドラインの策定・受益者負担の試算を進めており、人口増加地域における持続可能な地域クラブモデルの構築が進んでいます。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 石川県(成果報告書概要)」
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
かほく市の事例で最も注目すべきは、「石川県内例を見ない9年連続人口増加」の自治体でありながら、部員数減少と部活動廃止の問題が顕在化している点です。これは、地域移行の課題が単なる人口減少問題ではなく、「学校単位で部活動を維持する仕組み」自体の構造的限界に起因していることを示唆します。人口増加地域でも地域移行が必要となる現実が、全国の自治体担当者にとって重要な気付きとなるはずです。
もう一つの特徴は、令和6年度の「全額公費負担」という大胆な政策判断です。多くの自治体が立ち上げ期から受益者負担を導入するなか、かほく市は本格実施前年度を「全額公費」とすることで、家計の経済的ハードルを完全に排除し、参加実績を積み上げる戦略を選択。並行して令和7年度本格実施に向けたガイドラインの策定・受益者負担の試算を進める二段構えの準備が好例です。退職校長1名を総括コーディネーターに据える設計も、学校現場とのコミュニケーション円滑化に寄与しています。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
「立ち上げ年度の全額公費負担」モデルを採用する場合、最大のハードルは予算規模と本格移行後の負担増ギャップです。かほく市のように1年限定で全額公費とし、本格実施年度から受益者負担を導入する場合、保護者には「いつから・いくら払うか」を予め明確に示すことが信頼確保の鍵となります。退職校長コーディネーター起用は、学校現場の経験を活用できる優れた手法ですが、退職校長個人のネットワークに依存しすぎないよう、複数年契約と引継ぎ計画を並行整備する必要があります。人口増加地域でも地域移行は必要という認識を関係者に共有することも、議論のスタートラインとして重要です。
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