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全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 愛知県

【事例】愛知県犬山市の部活動地域展開 ─ 市内4校の「休日合同クラブ」を経て軟式野球・サッカー・バレーボールの10地域クラブが始動、地域クラブ認定要綱を定め令和8年9月の休日完全展開へ

公開:2026.11.02 更新:2026.11.02
この記事でわかること

・学校単位の休日部活動を市全体の「休日合同クラブ」に移してから、受け皿が見つかった種目を地域クラブに切り替えた犬山市の手順
・兼職兼業教員の団体・犬山サッカー協会・部活動指導員の団体が運営する10クラブと、学校施設・備品を無償で提供する支援
・中小学校体育連盟の大会参加要件、教職員の兼職兼業への消極姿勢、クラブごとに月1,000〜6,000円と幅のある会費という課題

自治体名 愛知県犬山市
人口規模 約7.1万人(70,660人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載)
中学校数 公立中学校4校(犬山中学校・城東中学校・南部中学校・東部中学校、生徒1,790人・運動部51部)
運営形態 地域の団体が運営する地域クラブ(兼職兼業の教職員による団体、犬山サッカー協会、部活動指導員による団体)。軟式野球・サッカーは市の委託金で体制を整備。教育委員会の学校教育課が推進役となり、スポーツ交流課に配属した部活動地域移行コーディネーターが地域クラブと学校の調整を担う
対象競技 軟式野球、サッカー、バレーボール(令和7年9月開始・3種目10クラブ)
保護者負担額 クラブにより月1,000〜6,000円(サッカーは月1,000円=年12,000円、軟式野球は月6,000円で年76,800円〈ユニフォーム・帽子代を含む〉)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年

取り組みの概要

犬山市は令和8年9月から中学校の土日の部活動を完全に地域展開することを目標に、段階を踏んで準備を進めてきました。令和5年10月に2校のソフトボール部を合同部活動として試行して課題を検証し、令和6年10月からは種目ごとに市内の中学校を会場にした「休日合同クラブ」を月2回程度始め、令和7年9月からは土日の部活動をすべて休日合同クラブ・休日合同バンドで行っています。学校単位の部活動を市全体の活動に移したうえで、令和7年9月に軟式野球・サッカー・バレーボールの3種目10クラブが地域クラブとして活動を始めました。スポーツ・文化団体、学校関係者、保護者代表などで構成する「部活動地域移行検討委員会」を年4回開き、令和7年4月には部活動地域移行コーディネーターを置いています。令和8年3月には「犬山市地域クラブ認定要綱」を策定しました。

特徴的な取り組み

  • 休日合同クラブから地域クラブへの3段階: 「各学校ごとの活動→市内での合同による活動→地域クラブでの活動」という順序で進めています。軟式野球は令和6年9月から続けてきた休日合同クラブが、兼職兼業の教職員を中心とする地域クラブ「INUYAMA-JHBC」に生まれ変わりました。一部抜粋の表では休日月4回・9時〜12時、指導者4人、会費月6,000円です。
  • サッカー協会が運営団体に: 犬山サッカー協会は、サッカー部の外部指導員として携わってきた関係から運営団体となり、「犬山・城東・南部・東部地域サッカークラブ」を休日月4回、指導者11人で運営しています。統括責任者2名・主任指導者4名・運営補助者6名を置き、指導者謝金の対応、保険加入、保護者説明まで協会が担い、会費は月1,000円です。バレーボールは部活動指導員や兼職兼業の教職員による団体が、平日2回・休日4回活動しています。
  • 「犬山市部活動地域移行 News」での周知: 地域展開の方針や進み具合に加え、生徒や保護者の疑問への回答、休日合同クラブや地域クラブの活動の様子を載せ、市ホームページと学校のメール配信で届けています。地域クラブへの参加費用が受益者負担であることもNewsで周知し、市は「特に混乱はない」としています。
  • 学校施設・備品を無償で提供: 体育施設は地域クラブ・休日合同クラブの希望を聞いて土日の午前・午後に優先的に使えるようにし、体育館・体育倉庫・部室の鍵を貸与しています。照明代を含めて学校施設の利用に金銭的負担はなく、施設の割り振りはコーディネーターが担当します。大会や練習試合のユニフォームは、中学校と交渉して部活動で使っていたものを貸与しました。
  • 管理責任は地域クラブと確認: 検討委員会で、活動中の生徒同士のトラブルや事故を含めた管理責任の主体は地域クラブであることを確認しました。週1回の活動のため初動の遅れに注意すること、教育委員会・学校との情報共有の体制もあわせて確認しています。
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課題と解決策

課題 解決策
地域クラブが愛知県中小学校体育連盟の大会に参加するための要件が課題。他市町の生徒を受け入れると中小学校体育連盟の大会に参加できなくなる 運営マニュアルより先に「犬山市地域クラブ認定要綱」「兼職兼業に関する要綱」「犬山市学校部活動ガイドライン」等の検討を優先し、認定要綱を令和8年3月に策定。大会参加に向けて「認定地域クラブ」の体制整備を進め、県中小学校体育連盟に情報提供を働きかける
他のスポーツ協会の団体は地域展開に理解はあるが、人材が少なく高齢化している。教職員アンケートでは多くの教職員が兼職兼業届を出して指導に関わることを望んでいない 愛知県の「あいち地域クラブ活動人材バンク」を活用し、ハンドボールの指導者1名を部活動指導員として採用。一般社団法人SKY WEB FAMILIAがソフトボール・ハンドボール・ソフトテニスなどの地域クラブを立ち上げる予定で、1年間は教職員の兼職兼業で支援するよう要請した
会費がクラブによって2,000円程度から6,000円程度まで大きな幅がある 令和7年12月に文部科学省が示した月額1,000〜3,000円を参考値として示し、地域クラブの実情に応じて会費を設定するよう助言。当初は「地域クラブの自立自走を促すため、市として経済的支援は考えていない」としていたが、検討委員会で支援も必要との意見が多く、今後の課題として判断する
剣道・ハンドボール女子は地域展開の見通しが立っていない 1市だけでは難しい種目として「面的・広域的な取組」が必要と整理し、近隣市町と連携して持続可能な地域クラブの在り方を探る

成果・効果

市は、多くの部で令和8年9月からの地域展開が可能になったことを成果に挙げています。令和8年4月から水泳とバスケットボール女子が、令和8年9月から卓球・ソフトテニス・ソフトボール・バスケットボール男子・ハンドボール男子が地域クラブとして活動する予定です。スポーツ少年団の指導者が部活動指導員として関わっていた種目では、中学生をスポーツ少年団に受け入れて新たな地域クラブを作ったほか、高等学校の教職員が中学校にない陸上競技・ラグビーの地域クラブを創設し、中学生・保護者に周知しています。指導者には犬山市民総合大学スポーツ学部の講座を2回以上受講してもらう形で研修を行いました。令和8年2月の生徒アンケート(市内1・2年生、975人/1,158人が回答)では、休日合同クラブ・休日合同バンド・地域クラブに参加している生徒は590人(50.9%)で、市は「生徒のニーズに合った地域クラブ活動の構築が十分にできていない」として、多様なニーズに応じたクラブの創設が必要だとしています。平日の部活動は週3回程度に縮小しており、市は平日を生徒が主体的に取り組む「諸活動」の時間として活用するよう各中学校に働きかけています。合意形成の過程では、休日の部活動が続く教員と無くなった教員との不公平感も課題として記録されています。

愛知県中学校総合体育大会への参加(令和8年度)

犬山市の地域クラブが中学校の大会に出られるかどうかは、競技によって異なります。愛知県中小学校体育連盟は、令和8年2月17日付「令和8年度 愛知県中学校総合体育大会 地域クラブ活動の参加について(確定版)」(第2号)で、地域クラブ活動の参加を競技ごとに3つに区分しました。犬山市で活動中・活動予定の競技を当てはめると次のとおりです。

区分(令和8年度) 犬山市の該当競技
県大会からの参加が可能 バレーボール、ソフトテニス、ハンドボール(事前に県中小学校体育連盟への加盟申請が必要)
支所・支部大会からの参加が可能 水泳(事前に県中小学校体育連盟への加盟申請が必要)
地域クラブとしての参加不可
(原文:参加を見送る競技)
軟式野球、サッカー、バスケットボール、卓球、ソフトボール

※県大会の整備状況です。支部・支所の整備状況によっては、従来どおり学校からの参加となります。

犬山市で最初に始動した軟式野球・サッカーは、令和8年度は地域クラブとしては大会に参加できません。愛知県には独自の「愛知県中学校総合体育大会に関わる地域移行部活動参加規程」があり、市町村主体で発足し教育委員会等が「地域移行部活動」と認めたチームは、学校部活動として支所大会から参加できます。犬山市の地域クラブがこの扱いになるかどうかは、成果報告書には記載がありません。競技別の詳しい条件は愛知県×軟式野球の出場資格で解説しています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 愛知県犬山市」(報告書検索システム)

→ 原文: 愛知県中小学校体育連盟「令和8年度 愛知県中学校総合体育大会 地域クラブ活動の参加について(確定版)」(第2号・令和8年2月17日)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

犬山市の事例は、学校単位の休日部活動をいきなり地域クラブに移すのではなく、市内4校の生徒が種目ごとに集まる「休日合同クラブ」を挟んだ点に特徴があります。令和6年10月の月2回から令和7年9月の全休日へと合同の活動を広げたことで、生徒が他校の生徒と練習する形に慣れ、受け皿の団体が見つかった種目から地域クラブに切り替えられるようになりました。軟式野球では休日合同クラブを指導していた兼職兼業の教職員がそのまま地域クラブ「INUYAMA-JHBC」を作り、サッカーでは外部指導員として関わっていたサッカー協会が運営団体になっています。合同クラブの期間に指導者と団体の関係を作っておく進め方は、受け皿が少ない自治体でも取り入れやすい手順です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

他地域が移植する際に最も大きいのは大会参加の要件です。犬山市は、他市町の生徒を受け入れると中小学校体育連盟の大会に参加できなくなり、1市だけでは地域展開が難しい種目もあるため、大会参加の要件が緩和されなければ市町を越えた取組は難しいとしています。認定要綱を作っても、県の中学校体育連盟の大会規定と合わなければ地域クラブの生徒が大会に出られないため、県単位の規定を事前に確認しておく必要があります。指導者の面では、教職員の多くが兼職兼業での指導を望んでおらず、スポーツ協会の団体も高齢化しているため、民間の総合型スポーツ運営団体や人材バンクに頼る割合が増えます。会費が月1,000円から6,000円までクラブで異なる点も、保護者への説明と困窮世帯への配慮をどうするかが課題になります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会を年4回開き、地域クラブ認定要綱・兼職兼業に関する要綱・学校部活動ガイドラインを整え、管理責任は地域クラブにあると確認したことで、責任の所在は比較的明確です。財源は軟式野球・サッカーへの委託金と会費で、市は当初、地域クラブへの経済的支援を考えていなかったため、支援を入れるかどうかの判断が残っています。所管を学校教育課からスポーツ交流課へ移すことも課題に挙げられており、令和8年9月以降の管理運営の担い手を固められるかが持続性を左右します。

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