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【事例】島根県浜田市の部活動地域展開 ─ 石見神楽52団体にも受け入れを調査し、休日は全部活動の地域展開をめざす方針を策定

公開:2026.10.23 更新:2026.10.23
この記事でわかること

・休日はすべての部活動の地域展開をめざす浜田市の方針(令和8年2月策定)の中身
・石見神楽52団体を含む3種類のアンケートで受け皿の実態を把握した方法
・体育協会への地域おこし協力隊配置など、推進役と指導者を確保する工夫

自治体名 島根県浜田市
人口規模 約4万8千人(令和6年度末時点・48,048人)
中学校数 8校(令和7年5月1日時点・生徒数1,191人)
運営形態 行政主導(市教育委員会が方針を策定。休日は地域のスポーツ・文化芸術団体等による地域クラブ活動へ展開する方針。運営団体は調査時点で未公表)
対象競技 休日のすべての部活動(運動部・文化部)
保護者負担額 調査時点で未公表(経済的に困窮する家庭への支援を含め、持続可能な費用負担の在り方を検討する方針)

取り組みの概要

島根県浜田市教育委員会は、令和8年2月に「浜田市立中学校における部活動の地域連携・地域展開に係る方針」を策定しました。休日の部活動はすべて、地域のスポーツ・文化芸術団体等による地域クラブ活動への展開をめざし、令和8年度から具体的な検討に入って、可能な部活動から順に地域展開を進めます。

市立中学校は令和5年の9校から令和7年には8校となり、生徒数は1,191人です。学校単独では大会に参加できない部も出ており、学校単位の部活動の維持が難しくなっています。

市は平成30年度から地域指導者を配置し、令和5年度からは部活動指導員の配置と複数校による合同部活動に取り組んできました。方針では、令和12年(2030年)の「島根かみあり国スポ・全スポ」を見据え、同年度末までの部活動の在り方を検討するとしています。

特徴的な取り組み

  • 石見神楽の団体を受け皿の候補に: 地域の伝統芸能である石見神楽の市内52団体に、中学生の受け入れについてアンケートを実施しました(令和7年10月・回答率59.6%)。約4割の団体にすでに中学生が所属しており、約6割が「中学生の受け入れを検討できる」と回答しています。
  • 地域展開型と地域連携型の二段構え: 休日は地域クラブ活動への展開(地域展開型)を基本とし、受け皿の確保が難しい場合は部活動指導員の配置や合同部活動(地域連携型)で活動機会を確保します。可能な場合は平日の地域展開にも取り組むとしています。
  • 体育協会に地域おこし協力隊を配置: 「浜田市スポーツ関係人材確保事業」として、地域おこし協力隊1人を浜田市体育協会に配置し、体育協会事務局と部活動の地域展開に関する事務を担っています(予算は報償費300万円・委託料100万円)。
  • 強化・育成の活動とは役割分担: 競技力の向上を主眼とする強化・育成の活動は、協会・連盟傘下のクラブや少年団など学校外と役割を分担すると明記しました。高校入試の個人調査報告書では、地域クラブ活動の記録も把握するよう努めるとしています。
  • 3種類のアンケートで受け皿の実態を把握: 生徒(令和6年2月)、スポーツ・文化芸術団体(令和7年9月)、石見神楽団体(令和7年10月)の3方向から調査し、方針の根拠にしています。
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課題と解決策

課題 解決策
生徒数の減少で、学校単独では大会に参加できない部が出ている 休日はすべての部活動の地域展開をめざし、受け皿がない場合は部活動指導員や合同部活動で機会を確保。受け入れ団体がない種目は、地域の協会・連盟等と協力して受け皿団体をつくる
受け皿側の指導者不足。指導者を派遣できる(できそう)と答えたスポーツ・文化芸術団体は2割未満 教員の兼職兼業の取扱いを検討し、地域団体の協力で指導者を発掘。体育協会に地域おこし協力隊を配置して地域人材の確保・育成を図る
活動場所の確保と、地域クラブへの移動負担 学校施設・社会教育施設・文化施設の利用制限を緩め、利用料を低くするなど使いやすい環境を整える。活動場所が偏らないよう配慮する
活動中の事故やトラブルの際に、管理責任の主体があいまい 運営団体等と協議の場を設けて共通理解を図り、国のガイドラインを踏まえて認定制度を検討。生徒には原則として保険への加入を求める

成果・効果

本格的な地域展開はこれからの段階で、地域クラブの数や参加者数は調査時点で公表されていません。方針の根拠となったアンケートでは、次の結果が示されています。

生徒向け(令和6年2月・1、2年生705人回答)では、約8割が今の部活動に満足する一方、約半数が「部活動とは別の競技や活動をしてみたい」「他の学校の生徒と活動してみたい」と回答しました。満足度を上げるために必要なこととしては、専門的で丁寧な指導(40.6%)、気軽に楽しめること(33.4%)が上位です。

スポーツ・文化芸術団体向け(令和7年9月・71団体回答)では約半数が、石見神楽団体向け(令和7年10月・31団体回答)では約6割が、中学生の受け入れを検討できると回答しました。受け入れの課題には、保護者の理解・協力(51.4%)、指導者の確保(45.7%)、活動日時の調整(45.7%)が挙がっています。

出典

→ 原文: 浜田市立中学校における部活動の地域連携・地域展開に係る方針(令和8年2月 浜田市教育委員会)

→ 案内ページ: 浜田市立中学校における部活動の地域連携・地域展開について(浜田市)

→ 教育委員会資料: 第247回浜田市教育委員会定例会資料(令和8年1月26日)

→ 人材確保事業: 浜田市スポーツ関係人材確保事業(浜田市)

→ 中学校: 浜田市統計資料「教育・文化」(浜田市)

→ 人口: 第2次浜田市総合振興計画後期基本計画の進捗評価について(浜田市)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

浜田市の方針で独自性が高いのは、地域の伝統芸能である石見神楽の団体を、文化分野の受け皿候補として正面から調査した点です。文化部の地域展開は吹奏楽や美術の受け皿探しで止まりがちですが、浜田市はすでに中学生が所属している地域の団体に目を向けました。52団体の約6割が受け入れを検討できると答えた結果は、学校の部活動の枠に収まらない地域固有の活動を、中学生の選択肢として位置づけ直す手がかりになります。また、体育協会の事務局を市が抱えている状況に対し、地域おこし協力隊を配置して事務と人材確保を担わせる発想は、国の制度を組み合わせて推進役を確保する実務的な手法です。方針段階で3方向のアンケートをそろえている点も、合意形成の材料として手堅いといえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

方針策定の段階でつまずきやすいのは、「すべての休日部活動を地域展開する」という目標と、受け皿の実態との差です。浜田市でも指導者を派遣できる団体は2割未満にとどまっています。同様の自治体は、受け入れ意向のある団体から種目を選んで先行させ、受け皿がない種目は合同部活動や部活動指導員でつなぐ二段構えを最初から計画に組み込むと、目標倒れを避けられます。地域おこし協力隊の活用は任期が最長3年程度に限られるため、任期中に事務の手順と団体とのつながりを体育協会の常勤体制へ引き継ぐ計画が欠かせません。伝統芸能の団体を受け皿にする場合は、保険・活動時間・指導者研修の要件を、スポーツ団体と同じ基準でどこまで求めるかを早めに整理しておくべきです。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

方針・教育委員会資料・アンケート結果が市の公式サイトで公開されており、意思決定の経過を外部から確認できます。認定制度や管理責任の整理を検討課題として明記している点も評価できます。一方で、展開の時期・種目・運営団体・会費は調査時点で未定であり、令和8年度からの具体的な検討の中で、財源と費用負担の設計を示せるかが持続可能性の鍵になります。

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