【事例】富山県の部活動地域展開 ─ 県内12市町実証・部活動応援企業20社登録・人材バンク64名・3年で実施市町3倍拡大
・富山県が3年で実施市町を4→12へ3倍拡大した段階的展開戦略
・部活動応援企業制度(登録20社)と人材バンク「パスネットとやま」64名登録の県主導支援設計
・県スポーツ協会・首長部局・教育委員会の三層連携による広域支援機能と他都道府県への応用ポイント
| 自治体名 | 富山県(県内15市町村のうち12市町で実証) |
|---|---|
| 人口規模 | 994,799人(面積4,248km²) |
| 中学校数 | 公立中学校76校(生徒数23,948人・部活動988部) |
| 運営形態 | 都道府県主導型 ― 富山県教育委員会保健体育課が主導・市町村・運営団体・応援企業の三層連携 |
| 対象競技 | 全競技対象(指導者派遣・財政支援・施設提供を企業マッチング) |
| 保護者負担額 | 地域クラブごとに設定(〜1,000円が67%)/人材バンク登録者64名で指導者確保 |
取り組みの概要
富山県では、令和3年度より「地域部活動検討委員会」を開催して県内全15市町村で情報共有を進め、令和4年度からは企業や総合型地域スポーツクラブも委員に招聘しました。令和6年度のスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)」では、県内15市町村のうち12市町(高岡市・射水市・魚津市・氷見市・滑川市・黒部市・砺波市・小矢部市・南砺市・上市町・立山町・朝日町)で実証を実施。県教育委員会保健体育課が事務局となり、首長部局(生活環境文化部スポーツ振興課)と県スポーツ協会と連携して人材バンクや指導者研修を運営しています。
特徴的な取り組み
- 3年で実施市町を3倍に拡大: 令和3年度の実践研究は4市町、令和4年度は8市町、令和5年度は10市町、令和6年度は12市町と毎年実施市町を増やし、令和7年度から新たに1町が実証事業に参加。県内全域への部活動地域移行の意識浸透が進んでいます。
- 部活動応援企業制度(登録20社・応援中8社): 指導者派遣・施設提供・財政的支援・社内制度整備の4類型で企業を登録。北日本放送KNB「こんにちは富山県です」(令和7年1月18日放送)でPR動画を制作・周知し、表彰企業として三晶MEC株式会社(バドミントン指導者派遣・財政的支援)を表彰しました。
- 人材バンク「パスネットとやま」64名登録: 県スポーツ協会の人材バンクに指導者64名を登録。各競技団体への指導者派遣協力を県スポーツ協会主催の競技団体担当者会議で依頼し、量的確保を進めています。
- 段階的指導者研修体制: ①コンプライアンス研修(参集84名+オンデマンド310名)、②救命研修(年2回・延べ171名)、③自由選択研修4種(アンガーマネジメント・アスリートトレーニング・ダッシュ王・子ども心理)。スポーツエキスパート、部活動指導員、部活動顧問、地域クラブ指導者の4者を対象としています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 指導員の人材確保(15市町中15市町が課題と回答) | 県スポーツ協会の人材バンク「パスネットとやま」で64名登録、各競技団体への派遣協力依頼、部活動応援企業制度で企業からの指導者派遣も組み合わせ |
| 指導者謝金(13市町)・受益者負担(12市町)の設定 | 市町村アンケートを実施し、地域クラブの経費割合(諸謝金68.6%・人件費14%)と受益者負担(〜1,000円が67%)の妥当額を共通理解化 |
| 部活動応援企業制度・人材バンクの認知不足 | 令和7年度はweb広告・PR動画・県政番組での周知強化、各PTA会議での説明、応援企業表彰式の実施で登録社数増加を狙う |
成果・効果
令和3年度4市町からスタートした実証事業は、毎年実施市町数を増やし令和6年度には12市町まで拡大。検討委員と全市町村担当者を交えたグループ協議を年2回実施することで、実証事業を実施していない市町村にとっても「自分たちの取組を見つめ直す機会」となり、令和7年度から新たに1町が実証事業に参加することが決まりました。部活動応援企業マッチングは8件成立し、財政的支援が増加。北日本放送との県政番組制作で県全体に部活動地域移行の現状を伝え、認知向上に寄与しています。市町村アンケートでは、地域移行の問題点として「指導員の人材確保」(15市町)「指導者謝金」(13市町)「受益者負担」(12市町)「運営資金の確保」(11市町)が上位を占め、県全体で取り組むべき課題が明確化されました。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 富山県」
→ 参考: 富山県公式ホームページ「富山県部活動応援企業」
→ 参考: 富山県部活動応援企業 申請フォーム
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
富山県モデルの最大の特徴は、都道府県が「中間支援組織」として機能している点です。多くの都道府県が市町村に丸投げになりがちな部活動地域移行において、富山県は①検討委員会の運営、②人材バンクの整備(64名登録)、③部活動応援企業制度の運用(20社登録)、④指導者研修の標準化、⑤PR動画・県政番組による広報という5つの広域支援機能を担っています。市町村単独では難しい「企業との大規模マッチング」「県内競技団体との連携」「研修の質的標準化」を県が担うことで、各市町村は地域クラブ運営や保護者対応にリソースを集中できる構造になっています。
もう1点注目すべきは、3年で実施市町を4→12と3倍に拡大した「段階的展開戦略」です。一気に全市町村で開始するのではなく、毎年4〜2市町ずつ追加することで、先行市町の成果と課題を後発市町に伝える「世代間学習」が機能しています。検討委員会で全市町村担当者がグループ協議に参加できる仕組みは、未実施市町にとっても貴重な学びの場となり、令和7年度新規参加につながっています。
📋 他都道府県が導入する際の想定ハードルと解決策
富山県モデルを他都道府県で展開する際の最大のハードルは、県スポーツ協会との連携設計です。富山県では県スポーツ協会の人材バンク「パスネットとやま」を地域クラブ指導者確保に活用していますが、都道府県によってはスポーツ協会と教育委員会の連携が薄い、人材バンクが未整備という地域も少なくありません。先行整備として、まず競技団体担当者会議への定期参加と、人材バンクの設置(既存組織の拡張で構わない)から始めるのが現実的です。
部活動応援企業制度の構築には、申請書様式・PR動画制作・表彰制度設計など事務局負担が大きく、年間500〜1,000万円規模の予算が必要です。スポーツ庁の地域スポーツクラブ活動体制整備事業を活用しつつ、地元放送局との共同制作(富山県の場合はKNB北日本放送)でPR動画コストを抑える、自県内の経済同友会・商工会議所と連携して企業募集の窓口を共有するなど、既存ネットワークの活用が有効です。富山県の20社登録は3年がかりの成果であり、初年度は5〜10社規模からのスタートが現実的な目標と言えます。
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