【事例】宮城県白石市の部活動地域展開 ─ 市の財団が運営する総合型クラブで吹奏楽・バスケ部活動を支援
・宮城県白石市が既存の公益財団法人を活用した部活動地域支援の仕組み
・吹奏楽・バスケに絞ったスモールスタートの費用構造と財源モデル
・行政主導型総合クラブが8年かけて設立にこぎつけた合意形成プロセス
| 自治体名 | 宮城県白石市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3万人(29,929人) |
| 中学校数 | 5校(生徒数695名) |
| 運営形態 | 公益財団法人白石市文化体育振興財団(行政主導型総合型地域スポーツ・文化クラブ) |
| 対象競技 | バスケットボール、吹奏楽(部活動支援)、ほかグランドゴルフ・卓球・ニュースポーツ等 |
| 保護者負担額 | バスケットボール:1,000円/回(月4回=月額4,000円)、吹奏楽:1,000円/回(年6回) |
取り組みの概要
白石市は宮城県南部に位置する人口約3万人の市で、中学校5校に695名の生徒が在籍しています。少子化が進む中、学校単独での部活動維持が難しくなっていることへの対応として、公益財団法人白石市文化体育振興財団が中核となり、令和5年(2023年)3月に「白石市総合型地域スポーツ・文化クラブ」を設立しました。
クラブの設立には約8年の検討期間がありました。平成27年(2015年)に一度検討会議が開かれましたが、県と市の方針の相違から設立は見送られました。その後、令和3年度に財団がスポーツ教室等の運営実績をもとに検討を再開。令和4年度には、施設管理ノウハウと市内スポーツ協会のネットワークを持つ財団が最適な運営主体であるとの判断のもと設立が決定しました。
現在は「健康いきいきEnjoy教室(ニュースポーツ)」を中心とした多世代向けプログラムに加え、令和5年度から中学校部活動の支援を本格化。吹奏楽部とバスケットボールスクールを新たに開講しています。
特徴的な取り組み
- 既存の公益財団法人を運営主体に活用:指定管理者として市内文化体育施設(白石市文化体育活動センター「ホワイトキューブ」等)の運営実績を持つ財団が母体となることで、施設確保・行政との調整・スポーツ協会との連携を一元化。市から年間100万円の補助金を受ける体制を整えました。
- 部活動支援の二本柱:吹奏楽とバスケ:吹奏楽は年6回(1,000円/回)で70名の中学生が参加。バスケットボールスクールは月4回(1,000円/回・月額4,000円)で20名が参加しており、既存の部活動の地域受け皿として機能しています。
- 多世代・多種目の複合クラブ構成:グランドゴルフ、ビニールバレー、卓球、ボウリング、ニュースポーツ(ポッチャ・ユニカール・囲碁ボール等)、幼児向け体づくり教室など、中学生から60歳以上の高齢者まで幅広い世代が参加できる構成を実現しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 2015年の初回検討時に県と市の方針が合わず設立が頓挫 | 令和3年度以降、財団主導で方針を整理し直し、宮城県スポーツ協会との意見交換を重ねて令和4年度に合意形成 |
| 活動場所の確保 | 財団が指定管理する白石市文化体育活動センター(ホワイトキューブ)等を優先活用し、施設問題を解消 |
| 指導者不足(有資格者1名) | 白石市スポーツ協会および各競技協力団体と連携し、合計6名の指導体制を確保 |
| 持続可能な財源の確保 | 市補助金100万円+会員収入228万円を組み合わせた年間328万円の予算規模を構築。受益者負担(回数制会費)と公的支援のバランスを実現 |
成果・効果
令和5年3月の設立以来、クラブは会員数72名(大人・高齢者・幼児・中学生)を擁しています。部活動支援では吹奏楽70名・バスケットボール20名の中学生が地域クラブとして活動しており、学校部活動の受け皿として着実に機能しています。年間予算328万円のうち市補助金は100万円(約30%)にとどまり、残りを会員収入で賄う財政的自立度の高い運営モデルを設立初年度から実現しています。
会員からは「子供の自主性につながっている」「朝の着替えなども自分で行い、教室に行く段取りをするようになった」(バスケ会員の声)、「集団活動や人の話を聞くこと、それを理解して行動に移すことを学べている」(体づくり教室会員の声)など、スポーツを通じた子どもの自立心・社会性向上の効果も報告されています。
出典
→ 原文: 白石市文化体育振興財団 白石市総合型地域スポーツ・文化クラブ 公式ページ
→ 参考: 総合型地域スポーツクラブ全国協議会 クラブ情報(マルチスポーツプラットフォーム)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
白石市の事例で特に注目すべきは、「新法人をゼロから設立する」のではなく「既存の公益財団法人に役割を委ねる」という戦略です。指定管理者として施設運営のノウハウを持ち、すでにスポーツ教室等を運営していた財団を母体とすることで、立ち上げコスト・施設確保・行政との調整負担を大幅に削減しています。2015年に一度失敗した教訓を活かし、慎重な合意形成プロセスを経て設立にこぎつけた点も参考になります。
部活動支援の種目を「吹奏楽」と「バスケットボール」に絞ったスモールスタート方式も現実的な判断です。全種目を一斉移行しようとすると指導者確保・施設調整の負担が急増しますが、まず需要の高い2種目から実績を積む手法は、小規模市でも無理なく始められる方法として有効です。会費を「回数制(1,000円/回)」とした設計も、参加しやすい価格帯を実現しつつ活動実績に応じた収入確保を可能にしています。
人口約3万人規模の市でも、既存の財団インフラを活用すれば年間328万円(うち市補助金100万円)という比較的小さな予算規模で複合クラブを運営できることは、同規模自治体にとって参考になる数字です。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
最大のハードルは「既存の指定管理者や財団に余力があるかどうか」という点です。白石市の場合、財団がすでにスポーツ教室を運営しており、そのノウハウを活用できました。同様の財団がない自治体では、地域のスポーツ協会や既存の総合型地域スポーツクラブを母体として検討することが第一歩になります。また、種目の選定は「地域でニーズが高く、指導者を確保しやすい競技」から始めることが、継続的な運営の鍵となります。
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