【事例】長崎県大村市の部活動地域展開 ─ 令和8年度に全6校で実施・困窮世帯への費用支援と部活動育成会経由の指導者謝金増額
・令和7年度を環境整備期間とし、令和8年度に市内全6校で部活動地域展開を一斉実施
・経済的困窮世帯への部活動費用の一部支援を、実施と同じ年度に予算措置
・新たな運営団体を作らず、既存の中学校部活動育成会が払う外部指導者謝金の増額分を市が補助
| 自治体名 | 長崎県大村市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約9.7万人(2026年4月1日時点の推計人口:97,457人・42,422世帯) |
| 中学校数 | 6校・生徒3,067人(2025年5月1日時点。玖島478人・西大村520人・萱瀬45人・郡683人・大村614人・桜が原727人) |
| 運営形態 | 市が全6校で実施。外部指導者への謝金は市中学校部活動育成会が支払い、その増額分を市が補助する構成 |
| 対象競技 | 全6校の部活動が対象。種目別の内訳は公表資料に記載なし |
| 保護者負担額 | 金額は未公表。経済的困窮世帯に対して市が部活動の費用を一部支援する |
取り組みの概要
長崎県大村市は、令和8年度から市内全6校で中学校の部活動地域展開を実施します。令和7年度の施政方針説明では「中学校の休日における部活動の地域移行については、令和8年度からの完全実施に向け、引き続き環境整備を進めます」とされ、1年の準備期間を経て全校同時に実施する段取りが取られました。
令和8年度の施政方針説明は、この実施に3つの施策を紐づけています。1つ目は「こどもたちがスポーツ・文化芸術活動に将来にわたって継続的に親しむ機会を充実させるため、中学校の部活動地域展開を全6校で実施します」という実施そのものです。
2つ目は費用面の手当てで、「こどもたちの生活環境に左右されず、一人のこどもも取り残さない地域社会の構築を目指し、経済的困窮世帯に対し部活動の費用を一部支援します」と明記されています。地域展開に伴って生じる保護者負担の増加を、実施と同じ年度に予算措置で受け止める構成です。
3つ目は指導者の確保で、「外部指導者の質・量を持続的に確保するため、本市中学校部活動育成会が外部指導者に支払う謝金の増額分を補助します」とされています。市が直接指導者へ謝金を払うのではなく、既にある中学校部活動育成会の支払いを補助で底上げする形をとっています。
特徴的な取り組み
- 全6校同時実施という選択: モデル校から段階的に広げるのではなく、令和8年度に市内全6校で部活動地域展開を実施すると施政方針で宣言しています。市内の中学校が6校と限られており、令和7年度を環境整備の年に充てたうえで一斉に切り替える判断です。
- 経済的困窮世帯への費用支援を同時予算化: 地域展開の実施と同じ年度に、経済的困窮世帯に対する部活動費用の一部支援を措置しています。「こどもたちの生活環境に左右されず、一人のこどもも取り残さない地域社会の構築を目指し」という目的が施政方針に明記されており、費用負担の増加が参加機会の格差に直結しないよう先手を打つ設計です。
- 既存の部活動育成会を謝金の支払経路として使う: 外部指導者への謝金は市中学校部活動育成会が支払い、市はその増額分を補助します。新たな運営団体を立ち上げて支払経路を作り直すのではなく、既に機能している組織の支払能力を補助で引き上げるという方式です。
- 謝金の増額を「質・量の持続的確保」と結びつけて説明: 施政方針は謝金増額の目的を「外部指導者の質・量を持続的に確保するため」と説明しています。指導者不足を人材募集の問題としてだけ扱うのではなく、報酬水準の問題として整理し、予算措置で対応する立て付けです。
- 長崎県の推進計画を土台にした実施: 長崎県教育委員会は令和4年7月27日に「長崎県運動部活動地域移行推進計画Ⅰ」の初版を策定しており、大村市の取組はこの県計画の枠組みの中に位置づけられます。県計画では指導者の育成・資質向上、生徒のニーズに合った部活動の運営方法の検討、スポーツ環境の整備および人材確保が柱とされています。
- 生徒数の開きが大きい6校を同じ制度で動かす: 令和7年5月1日時点の生徒数は、最少の萱瀬中学校が45人、最多の桜が原中学校が727人と16倍の開きがあります。市全体の中学生は3,067人で、規模の異なる6校を同一年度に地域展開へ移す難しさを抱えた条件下での全校実施です。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 地域展開に伴って保護者の費用負担が増え、経済的な理由で参加できない生徒が生じる | 経済的困窮世帯に対して部活動の費用を一部支援する予算を、地域展開の実施と同じ令和8年度に措置する |
| 外部指導者を数だけ集めても、報酬水準が低いままでは質と継続性を確保できない | 市中学校部活動育成会が外部指導者に支払う謝金の増額分を市が補助し、報酬面から指導者の質・量の持続的確保を図る |
| 受け皿となる組織を新設すると、事務局体制の構築に時間がかかり実施が遅れる | 既存の中学校部活動育成会を謝金の支払経路として活用し、市は補助という形で関与する方式を選ぶ |
| 生徒数45人の学校と727人の学校が混在し、同じ方式では活動が成立しない種目が出る | 公表資料では学校規模別の対応は示されていない。全6校で実施するという方針のもとで、規模差への対応は今後の運用課題として残る |
| 初年度から全校で実施すると、想定外の運用課題が同時多発的に生じる | 令和7年度を「令和8年度からの完全実施に向けた環境整備」の期間と位置づけ、前年度のうちに準備を集中させる |
成果・効果
令和8年度に開始する取組のため、参加者数や種目数などの実績値は現時点で公表されていません。予算・制度面で確定しているのは、全6校での実施、経済的困窮世帯への部活動費用の一部支援、中学校部活動育成会が支払う外部指導者謝金の増額分の補助という3点です。
市内の公立中学校は6校・生徒3,067人(令和7年5月1日時点)で、内訳は玖島478人・西大村520人・萱瀬45人・郡683人・大村614人・桜が原727人です。人口は令和8年4月1日時点の推計で97,457人・42,422世帯となっています。
出典
→ 原文: 大村市「令和8年度施政方針説明」
→ 原文: 大村市「令和7年度施政方針説明」
→ 原文: 令和7年度 大村市の教育(大村市教育委員会・令和7年8月)PDF
→ 原文: 大村市「大村市推計人口」
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