トップ 事例を探す 岡山県 【事例】岡山県津山市の部活動地域展開 ─ 地域クラブ「リスト一覧」で受け皿を可視化し参加率を大幅増
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 岡山県

【事例】岡山県津山市の部活動地域展開 ─ 地域クラブ「リスト一覧」で受け皿を可視化し参加率を大幅増

公開:2026.07.24 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・地域クラブの「リスト一覧」配布で参加率が約2%から16.8%へ増えた津山市の手法
・種目をA(学校存続)とB(地域移行)に精選する現実的な線引き
・年2回のアンケートで効果を検証するデータドリブンな進め方

自治体名 岡山県津山市
人口規模 約9.5万人(2025年1月時点)
中学校数 8校(市立・中学生総数 約2,396人)
運営形態 特定の1団体に集約せず、既存の複数の地域クラブ団体に委ねる/学校部活動と併存させる方式。市教委が「地域クラブ活動のリスト一覧」を試行的に作成・配布
対象競技 サッカー・バレーボール・剣道・陸上・野球・バスケットボール・卓球・水泳等の運動系、オーケストラ・将棋・書道等の文化系(吹奏楽部は当面、休日活動を例外扱い)
保護者負担額 調査時点で未公表

取り組みの概要

津山市は令和6年9月に「津山市立中学校部活動の在り方及び地域連携・地域移行の基本方針」を策定し、令和8年度の本格実施に向けて準備を進めています。市立中学校8校を対象に、学校部活動を種目ごとに精選し、令和7年3月に「学校部活動精選の方向性」を公表しました。種目をA(学校で無理なく指導体制を維持でき併存実施する種目)とB(地域クラブに委ね市内全体では開設しない特定種目)に分類して精選を進めています。受け皿として「地域クラブ活動のリスト一覧」を試行配布し、生徒の受け皿を可視化しました。令和7年11月下旬〜12月上旬には中学1〜3年生を対象としたアンケートを実施し、1,886人(回答率78.7%)から回答を得ています。リスト掲載団体への参加は16.8%ですが、リスト外を含めると約33.7%の生徒が既に何らかの地域クラブ活動に参加している実態が判明しました。

特徴的な取り組み

  • 地域クラブ活動のリスト一覧の配布: 前年度は参加率約2%でしたが、掲載団体の拡充に伴い参加生徒が大きく増加。ホームページ・SNS・動画で周知しています。
  • 種目のA/B精選と個別協議: Bに分類する特定種目について複数の種目関係団体と協議し、具体的な種目名を令和7年度中に順次公表する方針です。
  • 年2回のアンケートによる効果検証: 令和6年度2〜3月と令和7年11〜12月に生徒アンケートを実施し、リスト配布の成果と令和8年度以降の生徒動向を検証しています。

課題と解決策

課題 解決策
リスト掲載が男子向け競技に偏り、女子が参加しやすい種目や文化・芸術系団体が極端に少ない 女子が参加しやすい競技の掲載拡大、吹奏楽部の検討と併せた文化・芸術団体のリスト掲載を検討
令和8年度に学校部活動の活動時間が短くなる中、現存の地域クラブで平日放課後・休日の活動を補えるか不透明(送迎・費用・活動場所の負担) リストの示し方の工夫、ニーズに合った活動の場の整備、負担軽減策の検討

成果・効果

リスト配布により、参加生徒は約2%から16.8%へ大幅に増加しました。参加者の約1割が「リストを見て興味がわいた」と回答し、配布の一定の成果が確認されています。令和8年度以降の意向調査で「学校部活動に所属する」を選んだ生徒は76.6%と、本年度加入率78.9%(1・2年生)とほぼ同水準で、部活動離れは限定的でした。地域クラブ活動を考える生徒は39.5%となっています。自由記述の意見が前回254件から今回57件に減少しており、周知活動により基本方針への理解が進んだと市は分析しています。

出典

→ 原文: 部活動地域移行に関するアンケート調査の結果について(津山市公式)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

津山市の事例が際立つのは、「受け皿を新設する」のではなく「既にある受け皿を可視化する」ことから始めた点です。地域クラブのリスト一覧を配るだけで参加率が約2%から16.8%へ跳ね上がったという事実は、多くの自治体が抱える「受け皿がない」という認識が、実は「受け皿が見えていない」に過ぎない可能性を示しています。さらに種目をA(学校存続)とB(地域移行)に精選する方針は、全種目を一律移行する無理を避け、指導体制を維持できる種目は残すという現実的な線引きです。年2回のアンケートで効果を測る姿勢も、データドリブンな政策形成の好例といえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

リスト方式の弱点は、掲載団体が偏ると選択肢の格差が生まれる点です。津山市でも男子向け競技に偏り、文化・芸術系や女子向け種目が不足するという課題が明確に出ています。導入自治体は、リストを作る段階で意図的に文化系・女子向け団体へ声をかけ、掲載バランスを設計する必要があります。もう一つのハードルは、リストに載せた団体が学校部活動の縮小分を実際に受け止められるかという容量の問題です。津山市は送迎・費用・活動場所の負担を課題として明示しており、リスト公開と並行して活動場所の確保や負担軽減策を用意することが求められます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

基本方針・精選の方向性という2つの公表文書で制度の骨格を明文化し、年2回のアンケートで検証する仕組みは、透明性と改善サイクルの両面で評価できます。特定団体に依存せず複数の地域クラブへ分散する構造は、一つの団体の撤退が全体を揺るがすリスクを抑え、持続可能性に資します。一方、保護者負担額やB種目の運営団体が未確定である点は、令和8年度の本格実施に向けて詰めるべき事項です。

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