【事例】愛媛県新居浜市の部活動地域展開 ─ 市内12校を4地域に分割した認定地域クラブ制度・令和10年度に土日休日廃止、令和13年度に平日含む学校部活動全廃を目指す長期ロードマップ
・愛媛県新居浜市の地域展開で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
| 自治体名 | 愛媛県新居浜市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約11.9万人(2020年国勢調査) |
| 中学校数 | 市立12校(東・川東・西・南・北・泉川・船木・角野・中萩・大生院・ひびき・別子) |
| 運営形態 | 市教育委員会が認定地域クラブ制度を整備。市内を川西・川東・上部西・上部東の4地域に分割し、各地域に「認定地域クラブ」を設置。令和8年度に一般クラブチームを公募・活動開始、令和10年度に土日の学校部活動を廃止して地域クラブへ展開、令和13年度に平日を含む学校部活動の廃止を目指す段階的ロードマップ。令和14年度以降は地域スポーツ担当課へ移行し、教育委員会から運営団体へ統括主体を移す計画 |
| 対象競技 | 陸上・水泳・バスケットボール・バレーボール・バドミントン・卓球・ソフトテニス・サッカー・軟式野球・ハンドボール・柔道・剣道・吹奏楽・美術部 等(スポーツ・文化芸術の全種目) |
| 保護者負担額 | 公費・私費(経済的支援が必要な世帯への適切な支援を実施) |
取り組みの概要
愛媛県新居浜市教育委員会は、令和5年度に「新居浜市部活動のあり方及び地域移行に関する検討委員会」を設置し、保護者・学校関係者・スポーツ文化関係者と国・県の方針を共有しながら、アンケート調査やヒアリングを重ねてきました。令和8年4月に「新居浜市部活動地域展開推進計画」を策定し、令和10年度に土日の学校部活動を廃止して地域クラブへ展開、令和13年度に平日を含む学校部活動の全廃を目指す段階的なロードマップを示しています。
市内12校の生徒数は令和7年度の3,043人から令和19年には2,088人へ12年間で3割超の減少が見込まれており、既に団体競技を中心に合同部活動・拠点校部活動・廃部が進んでいます。この状況への対応として、市内を4地域に分割し各地域に「認定地域クラブ」を設置する体制を構築します。
特徴的な取り組み
- 市内4地域分割による認定地域クラブ制度: 将来の生徒減少と地域特性を考慮し、川西地域(西・南・北中)、川東地域(東・川東中)、上部西地域(中萩・大生院中)、上部東地域(泉川・角野・船木・別子中)の4地域に分割。各地域に市の認定要件を満たした「認定地域クラブ」を適正数設置することを目指します。
- 令和8年度10月から一般クラブチームを活動開始: 令和8年7月に一般クラブチームと地域クラブチーム指導員を公募し、6月補正予算成立後の10月1日から経費支出を伴う本格的な活動を開始します。
- 令和10年度に土日の学校部活動廃止: 令和10年度の3年生引退時点(総体予選終了時点)で、土・日の学校部活動を廃止し、地域クラブとしての活動へ展開します。
- 令和13年度に平日を含む学校部活動全廃: 令和13年度の3年生引退時点で、平日を含む学校部活動の廃止を目指し、原則すべての部活動を地域クラブとして展開します。令和14年度以降は地域スポーツ担当課が統括します。
- 教員の兼職兼業と地域クラブ指導員の並列運用: 教職員は地域クラブ指導者として自分の希望する種目を指導できます。兼業届等の教員関連事務手続きを整備するとともに、兼業する教員は兼業届を提出して地域クラブ活動に参加します。
- 地域クラブの類型化と将来のクラブチーム化: クラブチーム型・単独校部活動型・合同部活動型・拠点校部活動型の4類型を設定し、将来的にはすべてクラブチーム化を目指します。文化部の個人活動が主となる活動については活動ごとに実情に合った運営手法を検討します。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 令和7年度3,043人の生徒数が令和19年には2,088人へ12年間で3割超減少見込み | 単独校・合同部活動から認定地域クラブへの段階移行を軸に、市内を4地域に分割して地域単位での活動規模を維持 |
| 団体競技を中心に合同部活動・廃部・休部が拡大中 | 4地域に認定地域クラブを適正数設置し、学校の枠を超えた参加者確保によってチーム編成を維持 |
| 教員が専門外の部活動顧問として土日も従事する負担 | 令和10年度に土日部活動を廃止し、教員は希望する種目のみ兼業届を提出して地域クラブ指導者として参加 |
| 地域クラブ活動参加時の費用負担と経済的格差 | 公費・私費の負担バランスを検討し、経済的支援が必要な世帯へ適切な支援を実施 |
| 地域クラブ指導者の確保とクラブ運営体制の整備 | スポーツ協会各競技団体・スポーツ少年団・総合型地域スポーツクラブ・民間スポーツ団体・文化団体等と連携し、指導者確保と研修を実施 |
成果・効果
令和7年度時点で、市内12校の運動部(計1,118人)と文化部(計340人)の実態が把握されており、特にサッカー部(3校合同)・軟式野球部(複数校合同)・ソフトボール部(合同)など、既に複数校による合同部活動が運営されています。運動部では36部の技術指導に苦慮している現状が明らかになっており、外部指導者導入校は29校に上ります。検討委員会では国・県方針との整合を取りつつ、令和8年4月にアンケート・ヒアリング等を経た推進計画を策定。令和8年7月からクラブチームの公募を開始するロードマップに沿って、全国でも具体的なスケジュールを明示した先進的な計画として整備されました。
出典
→ 原文: 新居浜市公式ホームページ 学校教育課「新居浜市部活動地域展開推進計画について」(新居浜市教育委員会 令和8年4月)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
新居浜市の最大の特徴は「令和10年度に土日廃止、令和13年度に全廃」という具体的な年度を明記した長期ロードマップです。多くの自治体が「段階的に取り組む」と方針を示すにとどまる中、新居浜市は現3年生が引退する時点(総体予選終了時点)を節目として廃止時期を明確に設定しています。この設計は、学校・保護者・地域団体それぞれが「いつ、何が変わるのか」を予測して準備できる利点があります。
「市内12校を4地域に分割」して各地域に認定地域クラブを設置するという構造も参考になります。学校単体では部員が集まらない地域特性を踏まえ、川西・川東・上部西・上部東の4ブロックに地理的・人口的な区分けを行っています。少子化が進む中規模都市が地域移行を設計する際、「自校完結」でも「全市一括」でもなく、地理・生徒数の両面から適切な圏域設定を行うことの重要性を示した実例です。
令和8年7月に一般クラブチームを公募し、同年10月から活動を開始するというスケジュールも着目すべき点です。計画策定(令和8年4月)からわずか半年で初の認定地域クラブを稼働させるこのペースは、多くの自治体が「計画策定から実施まで数年かかる」中では珍しく、迅速な実行に踏み切れた背景には令和5年度以来の検討委員会による3年間の準備期間があります。「計画策定の年度内に最初のクラブを立ち上げる」という意思決定の速度は他自治体にも示唆を与えます。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
新居浜市モデルで最も参考になるのは「廃止年度の明記」と「4地域分割という圏域設計」の組み合わせです。廃止年度を明記すると関係者から反発が出やすいのが現実ですが、新居浜市は令和5年度から検討委員会を設置して保護者・学校関係者・スポーツ文化団体と3年間かけて合意形成を図ったことで、明確な時期設定を計画書に盛り込むことができています。「廃止を言い出せない」と悩む自治体には、まず3〜5年のコミットメント期間を設けた検討委員会の設置が有効な打開策となります。また、「令和14年度から地域スポーツ担当課へ移行」という出口設計も重要です。部活動地域展開が教育委員会主導の過渡期施策であることを明示し、最終的には社会体育・生涯スポーツの領域で運営することを見据えた設計は、長期的な持続性の担保として参考になります。
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