【事例】埼玉県川越市の部活動地域展開 ─ 包括協定大学連携・専用推進基金・小学生ニーズ調査で令和8年度全面移行へ
・川越市が設置した「学校部活動地域連携・地域移行推進基金」の仕組みと財源確保の設計
・東邦音楽大学との包括協定を活用した文化部(吹奏楽29名・4回)実証事業の内容と成果
・小学生3,914件アンケートで把握した「学校部活にない種目」への需要と令和8年度全面移行の計画
| 自治体名 | 埼玉県川越市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約35万人(2024年時点) |
| 中学校数 | 19校(令和6年6月現在) |
| 運営形態 | 教育委員会・文化スポーツ部の連携、東邦音楽大学(包括協定)・地域スポーツクラブとの協力 |
| 対象競技 | 運動部・文化部(全種目) |
| 保護者負担額 | 実証段階では市費負担(本格移行後は受益者負担を段階的に導入予定) |
取り組みの概要
埼玉県川越市(人口約35万人)は、令和4年度から「川越市立中学校の部活動地域移行検討委員会」を設置し、休日の部活動の地域連携・地域移行について検討を進めてきました。令和7年3月には「川越市立中学校における部活動地域連携・地域移行推進計画【令和7年度〜令和13年度】」を策定。令和8年度(3年生の大会等終了後)から、休日及び平日を含めた地域クラブ活動への全面移行を段階的に進める方針を打ち出しました。市立中学校の生徒数は令和5年度8,618人から令和10年度には7,651人(6年間で666名減)、令和15年度には6,988人まで減少する見込みで、少子化への対応が急務となっています。令和5〜7年度を「改革推進期間」として実証事業を先行実施し、令和8〜10年度の「改革実行期間(前期)」以降の受け皿整備につなげていく計画です。
特徴的な取り組み
- 小学生アンケートによる多様化する需要の把握:令和6年12月、小学5・6年生を対象に実施したアンケート(回答3,914件)では、バスケットボール(923票)・バドミントン(824票)・美術(677票)に続き、パソコン(617票)・ダンス(44票)など学校部活動には設置されていない種目への需要が確認された。この調査結果をもとに、子どもたちの多様なニーズに対応できる地域クラブ活動の種目設計・優先順位付けに活用している。
- 東邦音楽大学との包括協定を活用した文化部実証:市が包括協定を締結する東邦音楽大学から指導者を派遣し、令和6年度に東中学校吹奏楽部29名を対象に4回の実証事業を実施(令和7年2〜3月)。大学卒業生5名がパート別・個別指導を行い、アンケートでは指導内容に「満足」「わかりやすかった」という回答が大多数を占めた。令和7年度は実施箇所・回数を増やして継続する。
- 「川越市学校部活動地域連携・地域移行推進基金」の設置:地域移行は年度単位の一定期間を要する取り組みであるため、長期的な財源確保と年度を超えた機動的な運用を可能にする財政措置として推進基金を設置。具体的な活用方法は「川越市立中学校の部活動地域移行検討委員会」と調整しながら予算化を図り、受益者からの費用負担についても段階的に導入していく方針。
- 部活動指導員・支援員の配置と人材バンクの整備:令和5年度から市内6校に8名の部活動指導員を配置(吹奏楽・男子バレーボール・女子バスケットボール・剣道×2・男子卓球・バドミントン・女子バレーボール)。さらに、教育委員会内に「人材バンク」を設置し、部活動指導員等の確保と各学校への指導者マッチング機能を担う体制を整備している。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 令和6年時点で270部活(運動部210・文化部60)の全受け皿を地域団体で一斉確保することが困難 | 段階的な地域連携→地域移行の二段階アプローチ。令和5〜7年度は実証を先行し、令和8年度以降に本格移行 |
| 学校部活に設置されていない種目(パソコン・ダンス等)への生徒需要に対応できていない | 小学生アンケートで種目別需要を数値化し、地域クラブ活動の種目設計・実証種目の選定に活用 |
| 年度単位の予算制約で機動的な財源確保が難しい | 「川越市学校部活動地域連携・地域移行推進基金」を設置し、年度をまたいだ安定的な財源確保を実現 |
| 文化部の専門指導者の確保が困難 | 市が包括協定を結ぶ東邦音楽大学から指導者を派遣。人材バンクで指導者のマッチングも推進 |
成果・効果
令和6年度の文化系実証事業では、東中学校吹奏楽部29名が参加し、令和7年2〜3月の間に4回の指導を受けました。東邦音楽大学卒業生5名がパート別・個別に指導を行い、実施後のアンケートでは指導内容について「満足」「わかりやすかった」という回答が大多数を占めました。「土日の活動を中心に指導を受けたい」という声も多く寄せられており、地域の専門家による指導への高い需要が確認されています。これを踏まえ、令和7年度は実施箇所・回数を増やして継続実施します。また、令和5年度から配置を始めた部活動指導員については、吹奏楽で年間44回、その他の運動部各部で年間22回の指導実績を積み上げており、教員の負担軽減と指導の質向上の両立を実現しています。
出典
→ 原文: 川越市「川越市立中学校における部活動地域連携・地域移行推進計画【令和7年度〜令和13年度】」(令和7年3月)
→ 参考: 川越市「令和6年度 中学校文化系部活動の地域クラブ活動移行に向けた実証事業を実施しました!」
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
川越市の取り組みで特筆すべき第一点は、「川越市学校部活動地域連携・地域移行推進基金」の設置です。地域移行は複数年にわたる取り組みであるため、単年度の予算制約を受けると機動的な対応が難しくなります。推進基金という形で財源を確保し、検討委員会が活用方法を調整しながら予算化する仕組みは、財政基盤を持つ中核市だけでなく、単年度予算の制約を抱えるあらゆる規模の自治体に示唆を与えます。既存の教育振興基金の活用枠を広げたり、企業・団体からの寄付を受け入れる仕組みを加えたりすることで、自治体規模に関わらず転用できる考え方です。
第二点は、包括協定を結ぶ東邦音楽大学を起点にした文化部実証の設計です。多くの自治体で文化部、特に吹奏楽の指導者確保が課題となる中、ゼロから外部指導者を探すのではなく「既に包括協定がある大学の卒業生」を活用するという発想は、動き出しが格段に早くなります。市内に音楽大学・芸術大学・体育大学がある自治体では、包括協定の枠組みを活用できる可能性があります。「包括協定が先か、実証が先か」という問いに、川越市の事例は「包括協定という既存の関係を起点にする」という明確な答えを示しています。
令和6年12月の小学生アンケート(3,914件)でパソコン617票・ダンス44票が集まった事実も見逃せません。学校部活動では提供できない種目への需要が数値化されると、「地域移行=今ある部活をそのまま地域に移す」という発想を超え、新しい種目・活動形態を整備する根拠になります。川越市が令和8年度から目指す「こどもたちの多様なニーズに合った活動」という方向性は、このアンケート結果に裏付けられています。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
川越市の「推進基金」モデルを転用する際、規模の小さな自治体では基金の原資確保が課題になりえます。ただし、基金の額よりも「年度をまたいで柔軟に使えるお金の枠組みを持つこと」が本質です。既存の教育振興基金や地域スポーツ振興基金の活用範囲を広げるだけでも同様の効果が得られる場合があります。また、東邦音楽大学との連携モデルを参考にする場合、市内に音楽大学がなくても地元の短期大学・専門学校・カルチャースクールとの協定締結で類似の効果が期待できます。文化部の吹奏楽・演劇・美術については、地元の専門教育機関との連携が指導者確保の近道となりえます。
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