【事例】福岡県豊前市の部活動地域展開 ─ 市教委直営で休日のバスケットボール・剣道3クラブを会費なしで実施、令和9年度の中学校再編に合わせ拠点校化と新設の任意団体による運営へ
・受け皿団体が見つからない中、市教委が運営団体となり休日のバスケットボール・剣道3クラブを会費なしで続けた豊前市の体制
・スポーツ協会会員の提案から任意団体の設立が決まり、令和8年度から運営を移すまでの協議の経緯
・令和9年度の中学校再編に合わせて部活動を拠点校化し、種目と外部指導者を集約してから地域クラブへ移す道筋
| 自治体名 | 福岡県豊前市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約2.3万人(22,948人・令和8年1月31日現在、令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 市立中学校4校(八屋中学校・角田中学校・千束中学校・合岩中学校、生徒521人・令和7年5月1日現在。運動部21部) |
| 運営形態 | 行政直営(豊前市教育委員会が運営団体となり、指導者の派遣と謝礼の支払い等の事務を担当)。学校教育課が中学校との協議・調整、生涯学習課が地域スポーツ団体との協議・調整と受け皿の設立への協力を担い、中学校教諭OBのコーディネーター1名を配置。令和8年度から新たに設立する任意団体による運営へ移る方針 |
| 対象競技 | バスケットボール(男子・女子)、剣道の3クラブ(令和7年度) |
| 保護者負担額 | 参加会費なし(令和7年度)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
豊前市の中学生は平成17年の649人から令和7年には521人に減り、角田中学校は27人、合岩中学校は47人という小規模校です。各学校の部活動の数は減り、合同や拠点校方式で活動している部もある一方、廃部になった部も少なくありません。近郊にはスポーツのクラブチームも少なく、送迎面や高額な会費等の問題もあって、子どもたちがやりたいスポーツをできない状況が進んでいると市は捉えています。市は中学校4校を2校(うち1校は小規模特認校の義務教育学校)に再編する計画を進めており、令和8年度に義務教育学校、令和9年度に新中学校が開校する予定です。この再編に合わせ、できるだけ子どもたちがやりたいスポーツを選べる環境を整えることを目的に、令和5年度に部活動改革検討協議会を設置しました。令和6年度からは市教育委員会が運営主体となって先行の地域クラブ活動を始め、令和7年度も千束中学校の男子・女子バスケットボールと合岩中学校の剣道の3クラブを、令和7年9月から休日に週1回、午前中に実施しました。
特徴的な取り組み
- 市教委が運営団体となり部活動指導員を派遣: 3クラブとも「市区町村運営型」で、教育委員会が指導者の派遣と謝礼の支払いなどの事務を担います。指導者は各クラブ1人の計3人で、主な属性は部活動指導員です。活動場所は中学校体育館、移動手段は徒歩と自転車で、会費は取っていません。大会には中体連の部活動として参加しています。
- 受け皿が見つからない中で任意団体の設立へ: 運営主体として総合型地域スポーツクラブやスポーツ協会等を検討してきましたが、団体の人材不足もあり運営の受託には至りませんでした。令和7年度、スポーツ協会の会員から任意団体を設立して運営するという提案があり、教育委員会・コーディネーターとの協議と検討協議会での検討を経て、新たに設立する運営団体が運営を担うことが決まりました。新団体には負担金の徴収、謝金の支払い、事故・トラブルの際の連絡体制などを担ってもらう予定です。
- 学校再編を見越した拠点校化: すべての中学校が小規模で、学校ごとに今の部活動を維持することも、学校ごとに地域クラブとして活動することも難しい状況です。市は既存の部活動をまず拠点校方式にして種目を集約し、各学校の外部指導者も集約して人材を確保したうえで地域クラブへつなげる方針です。以前から検討していたサッカーの地域クラブも、中学生への指導方法の違い等から、まず中学校の拠点校方式の部活動として立ち上げ、地域の指導者は外部指導者として協力する形にしました。
- 中学校教諭OBのコーディネーター: 退職教員をコーディネーターに配置し、各中学校の校長等から部活動の現状を聞き取り、部活動顧問や外部指導者の意見も集めて、学校側の意見を取りまとめました。運営団体の設立の協議にも加わり、助言を行っています。
- 14名の検討協議会: 部活動改革検討協議会は、市教育委員会、市内中学校長、PTA連合会、市スポーツ協会、地域スポーツ団体、市スポーツ推進審議会、市スポーツ推進委員会、スポーツ指導員、地域活動指導員の14名で構成されます。令和8年1月13日の協議会で「豊前市立中学校部活動地域展開ガイドライン(案)」とロードマップ(案)を協議し、今後の方針を決めました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 中学生への指導者が不足し、市内のスポーツ団体の経営体力も厳しく、受け皿となる実施団体がなかなかない | 新たに設立する運営団体とともに規約等を整備し、実施団体の設立・募集と指導者の募集を行う。団体だけでなく個人でも指導者となりうる人材を確保する |
| 小・中学生での指導方法の違い、働いている指導者が休日に指導できるか、指導者資格の有無といった指摘がスポーツ団体等からある。市内に大学や企業(実業団)がなく、地域で確保できる人材の量も少ない | 受け皿となる申し出のあったクラブとの協議を続け、他のスポーツ団体とも生徒の受け入れや指導者派遣の可能性を探る。スポーツ協会等と連携した種目別の指導者リストの作成と、県等の指導者バンク情報の活用を進める(令和7年度は指導者に関する取組は実施できなかった) |
| 全校が小規模で生徒数も年々減っており、学校ごとの部活動の維持も、学校ごとの地域クラブ化も難しい | 既存の部活動を拠点校方式にして種目と外部指導者を集約し、令和9年度の新中学校の開校時から、新たな種目は休日の部活動を地域クラブとして活動できるよう学校と協議する |
成果・効果
令和7年度の3クラブの参加者は、千束中学校男子バスケットボールクラブが14人(1年3人・2年6人・3年5人)、女子バスケットボールクラブが4人(1年1人・3年3人)、合岩中学校剣道クラブが10人(1年6人・2年1人・3年3人)でした。市は総括で、行政が丸抱えするのではなく持続可能な地域クラブとするために地域団体による運営と実施を目指してきた中で、任意団体の設立が実現できることになった点を挙げています。コーディネーターの配置によって、部活動顧問や外部指導者の意識を聞き取り、今後の地域展開に向けた助言を受けられたことも成果としています。一方で、調整不足もあり新たな種目の地域クラブ活動を増やすことはできず、実施主体については「指導者がいない」「働いている指導者も多く、これ以上時間がとれない」といった人材不足が依然として課題です。アンケート結果を参考に、学校再編に合わせてサッカー・バドミントン・ダンス等のニーズの高い新たな地域クラブの設立も検討しています。ロードマップでは、令和9年度の学校再編による部活動の統合に合わせて休日の部活動を地域へ展開し、運営団体による運営、受益者負担(会費)の検討、教職員の兼業兼務への協力を進めるとしています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 福岡県豊前市」(報告書検索システム)
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