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全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 愛媛県

【事例】愛媛県宇和島市の部活動地域展開 ─ コミュニティ・コーチ52人と26部の「みなし認定」で保護者の新たな負担をゼロに

公開:2026.10.08 更新:2026.10.08
この記事でわかること

・既存部活動を「みなし認定地域クラブ」とし26部の休日活動を先に移行させた宇和島市の進め方
・コミュニティ・コーチ52人の登録と兼職兼業許可要綱による指導者確保の仕組み
・生徒数の12年後減少率42%を校別に公開し、保護者の新たな負担ゼロを明示した合意形成の手法

自治体名 愛媛県宇和島市
人口規模 約6万5千人(令和8年推計人口64,620人)
中学校数 6校(城南・城北・城東・吉田・三間・津島)/令和8年度の生徒数1,516人
運営形態 行政直営(市教育委員会が推進計画を統括。令和8年度は「コミスクえひめ」と連携・委託。実施主体は地域団体・民間事業者)
対象競技 剣道、サッカー、体操競技・トランポリン、柔道、バドミントン、ビリヤード、美術、eスポーツ・ドローン・プログラミング、メディア制作、音楽・ボランティア、地域活動
保護者負担額 「新たな金銭的負担が生じることはありません(部活動の時の負担と変わらず)」と市が明示。ただしスポーツ安全保険料は加入義務あり

取り組みの概要

愛媛県宇和島市は「宇和島市部活動地域展開推進計画」を策定し、令和8年3月に改訂しました。市はこの計画を「段階的に地域展開を推進するための『道しるべ』」と位置付けています。

計画の起点になっているのは、生徒数の減少見通しを具体的な数字で示したことです。市内の中学生は令和6年度の1,625人から、12年後の令和18年には941人まで減少する見込み(減少率約42%)としています。さらに計画本文には学校別・年度別の生徒数推移表が掲載され、減少率は城南中32.9%、城北中31.9%、城東中11.4%、吉田中52.2%、三間中47.0%、津島中56.3%と、校ごとの差まで公開されています。

愛媛県の推進方針は『できるところから できるものから』で、県目標は「令和10年度末までに全ての学校部活動で休日の地域展開を実現(前期)」「平日も含め地域クラブ活動の拡充や持続化・安定化に向けた改革を推進(後期)」です。これを踏まえ、宇和島市は令和8年度以降の目標を再設定しました。

特徴的な取り組み

  • コミュニティ・コーチ(CC)52人を登録: 地域の指導者を「CC:コミュニティーコーチ」として確保・雇用し、兼職兼業の仕組みも整備しています。令和8年9月18日現在で登録CC数は52名。平日の指導を行っている部活動顧問や部活動指導員が、休日はCCとして活動するケースもあります。市は兼職兼業許可要綱を別に定めています。
  • 26部を「みなし認定地域クラブ化」: 新たなクラブ設立を待たずに休日の地域展開を進めるため、既存の部活動を「みなし認定地域クラブ」として扱う仕組みを採っています。令和8年9月18日現在で26部が休日の地域展開対象です。
  • 保護者の新たな負担をゼロと明示: 市は「新たな金銭的負担が生じることはありません(部活動の時の負担と変わらず)」と公表しています。ただしスポーツ安全保険への加入は義務付けられており、保険料は家庭負担です。
  • 認定地域クラブ12団体(令和8年9月18日現在): 宇和島剣道会(剣道)、宇和島JYFC(サッカー)、宇和島体操教室(体操競技・トランポリン)、宇和島地域創生クラブ(地域活動)、宇和島撞球Jr.クラブ(ビリヤード)、うわじま未来テックラボ(eスポーツ・ドローン・プログラミング)、うわじまメディアラボ(メディア制作・情報発信)、おかえりクラブ(ボランティア・音楽活動)、津島柔道会(柔道)、べにばらART LAB(美術)、みうらはぐくみクラブ(バドミントン・ボランティア)、三間剣道会(剣道)。従来の部活動にない分野(ビリヤード、eスポーツ・ドローン、メディア制作、地域活動)が複数含まれる点が特徴です。
  • 令和8年度は外部組織へ委託: 計画では令和8年度期の取組を「コミスクえひめとの連携(委託)」と明記し、運営団体との連携によるコーディネート機能の充実を図るとしています。
  • 完了年度までのロードマップを数値で宣言: 「令和10年度の9月1日からは、運動部については、休日は学校部活動ではなく、全てクラブチーム等の活動として実施する」「平日の部活動についても、できるものから順次クラブチーム等へ地域展開する」「文化部活動についても、段階的に地域展開を目指す」「令和13年度末までに、平日を含めた部活動の地域展開の完了を目指す」の4点を目標として公表しています。
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課題と解決策

課題 解決策
生徒数が令和6年度の1,625人から令和18年に941人へ減少する見通しで、学校単位の部活動継続が困難になる 減少率約42%と学校別の推移表を推進計画で公開し、地域展開が不可欠である根拠を生徒・保護者・地域と共有した
休日の指導を担う人材の確保 地域の指導者を「コミュニティ・コーチ(CC)」として登録・雇用する制度を整備し、令和8年9月時点で52名を確保。兼職兼業許可要綱も定め、平日の顧問が休日にCCとして指導できるようにした
受け皿となる地域クラブの新規設立を待つと移行が進まない 既存の部活動を「みなし認定地域クラブ」として扱う仕組みを採り、令和8年9月時点で26部の休日活動を地域展開の対象とした
地域クラブ化による保護者の費用負担増への不安 「新たな金銭的負担が生じることはありません(部活動の時の負担と変わらず)」と市が明示し、負担が変わる部分(スポーツ安全保険料)のみを切り分けて示した
地域クラブ活動は学校の管理運営下にないため、事故時の責任関係が変わる 賠償責任に関する資料を公開し、認定に関する要綱・コミュニティコーチ配置要綱・兼職兼業許可要綱・選手等派遣旅費補助金交付要綱を個別に整備した
市の職員・学校だけではコーディネートの実務が回らない 令和8年度の取組として「コミスクえひめとの連携(委託)」を計画に位置付け、運営団体との連携でコーディネート機能を補完した

成果・効果

令和8年9月18日現在、認定地域クラブ12団体、コミュニティ・コーチ登録52名、「みなし認定地域クラブ化」による休日地域展開の部活動26部という実績が公表されています。中学校6校・生徒数1,516人(令和8年度)の規模に対し、CC52名という指導者層が確保されている点が実務的な成果です。

認定クラブの分野構成も注目に値します。剣道・サッカー・柔道・バドミントン・体操といった従来型の競技に加え、ビリヤード、eスポーツ・ドローン・プログラミング、メディア制作・情報発信、ボランティア・音楽活動、地域活動が認定されています。市は推進計画の取組方向性として「新たな種目等の開発なども検討し、生徒の多様なニーズに応じた活動が行えるような環境を整備します」と掲げており、それが認定実績に反映されています。

保護者向けには通信(VOL.1〜6)を発行し、賠償責任についての資料も個別に公開しています。

出典

→ 原文: 宇和島市立中学校における部活動の地域移行について(宇和島市公式ホームページ)

→ 原文: 宇和島市部活動地域展開推進計画 令和8年3月改訂/宇和島市教育委員会(PDF)

→ 人口: 行政区別人口(宇和島市公式ホームページ)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

宇和島市の要は「みなし認定地域クラブ化」と「コミュニティ・コーチ」の組み合わせです。地域展開が止まる典型的な原因は、受け皿となる法人の設立を待つうちに年度が過ぎることですが、宇和島市は既存の部活動をそのまま地域クラブとみなし、指導者だけをCCとして個人登録に切り替えました。団体の設立という重い工程を後回しにして、指導体制の切り替えを先に完了させる順序です。結果として26部・CC52名という規模が令和8年9月時点で成立しています。もう一つ評価したいのは、減少率42%という数字を校別に公開した点です。津島中56.3%、吉田中52.2%という数字を保護者が自分の学校の欄で見れば、地域展開が選択ではなく前提だと伝わります。説明資料として、抽象的な「少子化が進んでいます」より圧倒的に強い。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

みなし認定方式は立ち上がりが速い反面、「実態は従来の部活動のまま」になりやすい弱点を抱えます。宇和島市はCCの登録と兼職兼業許可要綱でそこを補いましたが、導入する自治体は、みなし認定の有効期間をあらかじめ区切り、期限までに運営団体の自立(規約・会計・総会)へ移行する条件を付けておくべきです。宇和島市自身も令和9年度以降の取組に「認定クラブチームの自立支援と持続可能な運営のサポート体制強化」を置いています。もう一点、CC52名という水準は人口約6.5万人・中学校6校でこそ成立する密度です。学校数の多い自治体で同じ比率を狙うと採用と研修が追いつかないため、拠点校方式で指導者1人あたりの受け持ち生徒数を上げる設計を併用する必要があります。コーディネート業務を外部委託した宇和島市の判断も、自前の人員で抱えられない規模では有効な選択肢です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

認定に関する要綱・コミュニティコーチ配置要綱・兼職兼業許可要綱・選手等派遣旅費補助金交付要綱・賠償責任の資料をそれぞれ個別の文書として公開しており、制度の根拠が追跡可能な点は高評価です。令和10年9月1日に運動部の休日完全移行、令和13年度末に平日を含む完了という期限付きの目標設定も、進捗を外から検証できる形になっています。懸念は財源の持続性で、保護者の新たな負担をゼロとする方針を維持するには、CC報酬の公費負担を長期にわたり確保し続ける必要があります。

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