【事例】愛媛県宇和島市の部活動地域展開 ─ コミュニティ・コーチ52人と26部の「みなし認定」で保護者の新たな負担をゼロに
・既存部活動を「みなし認定地域クラブ」とし26部の休日活動を先に移行させた宇和島市の進め方
・コミュニティ・コーチ52人の登録と兼職兼業許可要綱による指導者確保の仕組み
・生徒数の12年後減少率42%を校別に公開し、保護者の新たな負担ゼロを明示した合意形成の手法
| 自治体名 | 愛媛県宇和島市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約6万5千人(令和8年推計人口64,620人) |
| 中学校数 | 6校(城南・城北・城東・吉田・三間・津島)/令和8年度の生徒数1,516人 |
| 運営形態 | 行政直営(市教育委員会が推進計画を統括。令和8年度は「コミスクえひめ」と連携・委託。実施主体は地域団体・民間事業者) |
| 対象競技 | 剣道、サッカー、体操競技・トランポリン、柔道、バドミントン、ビリヤード、美術、eスポーツ・ドローン・プログラミング、メディア制作、音楽・ボランティア、地域活動 |
| 保護者負担額 | 「新たな金銭的負担が生じることはありません(部活動の時の負担と変わらず)」と市が明示。ただしスポーツ安全保険料は加入義務あり |
取り組みの概要
愛媛県宇和島市は「宇和島市部活動地域展開推進計画」を策定し、令和8年3月に改訂しました。市はこの計画を「段階的に地域展開を推進するための『道しるべ』」と位置付けています。
計画の起点になっているのは、生徒数の減少見通しを具体的な数字で示したことです。市内の中学生は令和6年度の1,625人から、12年後の令和18年には941人まで減少する見込み(減少率約42%)としています。さらに計画本文には学校別・年度別の生徒数推移表が掲載され、減少率は城南中32.9%、城北中31.9%、城東中11.4%、吉田中52.2%、三間中47.0%、津島中56.3%と、校ごとの差まで公開されています。
愛媛県の推進方針は『できるところから できるものから』で、県目標は「令和10年度末までに全ての学校部活動で休日の地域展開を実現(前期)」「平日も含め地域クラブ活動の拡充や持続化・安定化に向けた改革を推進(後期)」です。これを踏まえ、宇和島市は令和8年度以降の目標を再設定しました。
特徴的な取り組み
- コミュニティ・コーチ(CC)52人を登録: 地域の指導者を「CC:コミュニティーコーチ」として確保・雇用し、兼職兼業の仕組みも整備しています。令和8年9月18日現在で登録CC数は52名。平日の指導を行っている部活動顧問や部活動指導員が、休日はCCとして活動するケースもあります。市は兼職兼業許可要綱を別に定めています。
- 26部を「みなし認定地域クラブ化」: 新たなクラブ設立を待たずに休日の地域展開を進めるため、既存の部活動を「みなし認定地域クラブ」として扱う仕組みを採っています。令和8年9月18日現在で26部が休日の地域展開対象です。
- 保護者の新たな負担をゼロと明示: 市は「新たな金銭的負担が生じることはありません(部活動の時の負担と変わらず)」と公表しています。ただしスポーツ安全保険への加入は義務付けられており、保険料は家庭負担です。
- 認定地域クラブ12団体(令和8年9月18日現在): 宇和島剣道会(剣道)、宇和島JYFC(サッカー)、宇和島体操教室(体操競技・トランポリン)、宇和島地域創生クラブ(地域活動)、宇和島撞球Jr.クラブ(ビリヤード)、うわじま未来テックラボ(eスポーツ・ドローン・プログラミング)、うわじまメディアラボ(メディア制作・情報発信)、おかえりクラブ(ボランティア・音楽活動)、津島柔道会(柔道)、べにばらART LAB(美術)、みうらはぐくみクラブ(バドミントン・ボランティア)、三間剣道会(剣道)。従来の部活動にない分野(ビリヤード、eスポーツ・ドローン、メディア制作、地域活動)が複数含まれる点が特徴です。
- 令和8年度は外部組織へ委託: 計画では令和8年度期の取組を「コミスクえひめとの連携(委託)」と明記し、運営団体との連携によるコーディネート機能の充実を図るとしています。
- 完了年度までのロードマップを数値で宣言: 「令和10年度の9月1日からは、運動部については、休日は学校部活動ではなく、全てクラブチーム等の活動として実施する」「平日の部活動についても、できるものから順次クラブチーム等へ地域展開する」「文化部活動についても、段階的に地域展開を目指す」「令和13年度末までに、平日を含めた部活動の地域展開の完了を目指す」の4点を目標として公表しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 生徒数が令和6年度の1,625人から令和18年に941人へ減少する見通しで、学校単位の部活動継続が困難になる | 減少率約42%と学校別の推移表を推進計画で公開し、地域展開が不可欠である根拠を生徒・保護者・地域と共有した |
| 休日の指導を担う人材の確保 | 地域の指導者を「コミュニティ・コーチ(CC)」として登録・雇用する制度を整備し、令和8年9月時点で52名を確保。兼職兼業許可要綱も定め、平日の顧問が休日にCCとして指導できるようにした |
| 受け皿となる地域クラブの新規設立を待つと移行が進まない | 既存の部活動を「みなし認定地域クラブ」として扱う仕組みを採り、令和8年9月時点で26部の休日活動を地域展開の対象とした |
| 地域クラブ化による保護者の費用負担増への不安 | 「新たな金銭的負担が生じることはありません(部活動の時の負担と変わらず)」と市が明示し、負担が変わる部分(スポーツ安全保険料)のみを切り分けて示した |
| 地域クラブ活動は学校の管理運営下にないため、事故時の責任関係が変わる | 賠償責任に関する資料を公開し、認定に関する要綱・コミュニティコーチ配置要綱・兼職兼業許可要綱・選手等派遣旅費補助金交付要綱を個別に整備した |
| 市の職員・学校だけではコーディネートの実務が回らない | 令和8年度の取組として「コミスクえひめとの連携(委託)」を計画に位置付け、運営団体との連携でコーディネート機能を補完した |
成果・効果
令和8年9月18日現在、認定地域クラブ12団体、コミュニティ・コーチ登録52名、「みなし認定地域クラブ化」による休日地域展開の部活動26部という実績が公表されています。中学校6校・生徒数1,516人(令和8年度)の規模に対し、CC52名という指導者層が確保されている点が実務的な成果です。
認定クラブの分野構成も注目に値します。剣道・サッカー・柔道・バドミントン・体操といった従来型の競技に加え、ビリヤード、eスポーツ・ドローン・プログラミング、メディア制作・情報発信、ボランティア・音楽活動、地域活動が認定されています。市は推進計画の取組方向性として「新たな種目等の開発なども検討し、生徒の多様なニーズに応じた活動が行えるような環境を整備します」と掲げており、それが認定実績に反映されています。
保護者向けには通信(VOL.1〜6)を発行し、賠償責任についての資料も個別に公開しています。
出典
→ 原文: 宇和島市立中学校における部活動の地域移行について(宇和島市公式ホームページ)
→ 原文: 宇和島市部活動地域展開推進計画 令和8年3月改訂/宇和島市教育委員会(PDF)
→ 人口: 行政区別人口(宇和島市公式ホームページ)
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