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【事例】愛媛県八幡浜市の部活動地域展開 ─ 地域クラブをA・B・Cの3区分に分け支援項目ごとの負担主体を一覧表で明示

公開:2026.10.08 更新:2026.10.08
この記事でわかること

・地域クラブを部活動由来型A・地域支援型B・地域活動型Cの3区分に整理する八幡浜市の制度設計
・支援17〜19項目について公的支援・受益者負担・学校支援の負担主体を一覧表で公開する手法
・生徒輸送「浜っ子バス」と指導者資格取得助成(上限5万円)という2つの実務的な支援策

自治体名 愛媛県八幡浜市
人口規模 約2万9千人(令和8年1月31日現在・住民基本台帳29,250人)
中学校数 2校(八幡浜中学校・保内中学校)/市内小学校は12校
運営形態 行政直営(市教育委員会が認定制度を運営し、実施主体は地域クラブ)
対象競技 野球、サッカー、バスケットボール、卓球、バレーボール、ソフトテニス、剣道、柔道、水泳、陸上、レスリング、少林寺拳法、空手道、合気道、ダンス、吹奏楽、美術、創造、VYS、児童合唱
保護者負担額 月額会費は調査時点で未公表。受益者負担項目を方針で明示(スポーツ安全保険 生徒1人800円は加入必須、ユニフォーム・用具購入費、市外施設使用料、協会・連盟登録料など)

取り組みの概要

愛媛県八幡浜市は、2025年10月に「八幡浜市地域クラブ活動整備方針」を策定し、2026年1月に改訂しました。上位方針となる「八幡浜市立中学校の部活動及び地域クラブ活動の在り方等に関する方針」(令和7年7月策定)と、文部科学省の「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)に則った整備方針です。

八幡浜市は「部活動の地域展開」を単に中学校部活動の移行とは捉えず、①学校部活動の改革(教員が行う学校部活動から、地域指導員と希望教員が行う地域クラブ活動への転換)と、②地域における子供たちのスポーツ・文化芸術活動の環境整備という2つの柱で進めると定義しています。

対象も中学生に限定していません。市内12小学校でもスポーツ・文化芸術の課外活動が成り立たない状況が見られることから、幼児期・学童期の子供、学校部活動に所属していない生徒、障がいのある生徒、高校生など、参加を希望するすべての子供を対象としています。理念は「八幡浜の子は八幡浜で育てる」です。

特徴的な取り組み

  • 地域クラブをA・B・Cの3区分に整理: 地域クラブA(学校部活動由来型)は学校部活動が地域クラブ活動に移行するもので、野球・サッカー・バスケットボール・卓球・バレーボール・ソフトテニス・剣道(八幡浜剣道会)および吹奏楽・美術・創造・VYS。地域クラブB(地域支援型)は市スポーツ協会加盟団体で、八西柔道会(中体連登録あり)・八幡浜レスリング協会・八幡浜少林寺拳法協会・八幡浜市空手道連盟・八幡浜市合気道協会・ダンスフロム保内。地域クラブC(地域活動型)は非加盟団体で、八幡浜SC(水泳・中体連登録あり)・八幡浜SSC(陸上・同)・DANCE MORE八幡浜校・八幡浜児童合唱団です。
  • 支援項目ごとの負担主体を一覧表で公開: 方針の中核が「地域クラブ別支援体制一覧」です。指導者報酬、指導者資格取得助成、中体連登録料、大会参加費、市内施設使用料、生徒輸送、協会・連盟登録料、市外施設使用料、ユニフォーム購入費、保険料、用具類、学校備品、学校施設利用、部活動振興費などA区分17項目・B区分19項目・C区分17項目について、「公的支援/受益者負担/学校支援」のどれが負担するかを表で明示しています。
  • 生徒輸送バス「浜っ子バス」: 中学校から地域クラブ活動場所までの移動が必要な生徒に対し、市が交通手段を確保します(対象は地域クラブA)。保護者は「浜っ子バス」規程を確認し、活動計画書兼利用申込書を毎月末日の5日前までに提出します。乗降車の確認には連絡アプリを活用します。
  • 指導者資格の取得費用を市が助成: スポーツ活動助成事業を活用し、地域指導員に必要な公認スポーツ指導員資格の取得経費を、資格取得に要した受験料または受講料の額と5万円のいずれか低い額で助成します。
  • 部活動振興費(後援会費)の徴収ルールを明文化: 地域クラブのみに所属する生徒からは部活動振興費を徴収せず、年度途中で地域クラブに移った生徒は所属前月まで徴収します。学校部活動と地域クラブを両方掛け持ちする場合は徴収します。
  • 人材と団体のマッチング窓口: 市が設置する「浜っ子サークル銀行(団体登録)」「浜っ子人材銀行(個人登録)」への登録が認定要件に含まれており、指導者の発掘と紹介を市が担います。認定の有効期限は最長3年、指導者登録は最長4年です。
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課題と解決策

課題 解決策
部活動由来のクラブと既存の民間クラブ・協会加盟団体では、必要な支援の種類が大きく異なる 地域クラブをA(部活動由来型)・B(地域支援型)・C(地域活動型)の3区分に整理し、区分ごとに支援体制一覧を別表で作成した
何が公費負担で何が保護者負担になるのかが保護者に伝わらず不安が残る 17〜19項目それぞれについて「公的支援/受益者負担/学校支援」のどれが負担するかを一覧表で公開し、受益者負担の具体項目(保険料・ユニフォーム・市外施設使用料等)を列挙した
活動場所が所属中学校以外になる生徒の移動手段 生徒輸送バス「浜っ子バス」を地域クラブA向けに運行し、規程と利用申込様式を整備。乗降車連絡アプリで出欠確認も行う
地域指導員に求められる公認スポーツ指導者資格の取得費用が個人負担になる スポーツ活動助成事業で受験料・受講料と5万円のいずれか低い額を助成する
学校部活動から移った生徒に部活動振興費(後援会費)を二重に負担させてしまう恐れ 地域クラブのみ所属は徴収しない、年度途中移行は所属前月まで、掛け持ちは徴収するという3通りの取扱いを方針に明記した

成果・効果

方針には令和7年度の実績値が記載されています。公的負担として市が負担するものには、県中体連南予支部負担金26,000円・全南予総合体育大会分担金66,300円、中体連大会の参加費(出場生徒1人1,000円)、食料費(1回700円×必要回数)、宿泊費規定料金(県内7,550円・県外8,000円・四国外10,000円)が含まれます。

受益者負担として明示されているのは、中体連以外の協会・連盟関係の大会に係る経費(参加費・交通費・補食費・宿泊費)、用具類購入費、市外の施設使用料、協会・連盟登録料、保険料、ユニフォーム・練習着購入費です。スポーツ安全保険は加入を必須とし、生徒1人800円、指導者1人(〜64歳)1,850円・(65歳〜)1,200円と金額まで示しています。

一方、A区分とC区分の「指導者報酬」は第2・3回検討委員会で検討されたうえで「今後も検討を継続していく」とされ、調査時点で金額は確定していません。活動場所についても、地域クラブAの保内中・八幡浜中およびスポーツセンター・愛宕山テニスコートは「未定」と記載されており、整備途上にあることが方針上で可視化されています。

出典

→ 原文: 八幡浜市地域クラブ活動整備方針 2025.10(2026.1改訂)/八幡浜市教育委員会(PDF)

→ 人口: 八幡浜市住民基本台帳人口・世帯数の推移(八幡浜市公式ホームページ)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

この方針の価値は「地域クラブ別支援体制一覧」の1枚に集約されています。地域展開の説明会で最も多い質問は「結局いくら払うことになるのか」ですが、多くの自治体は会費の総額だけを示して個別項目の負担主体を曖昧にします。八幡浜市は逆に、指導者報酬から学校備品まで17〜19項目を並べ、公的支援・受益者負担・学校支援のどこに丸が付くかを区分別に見せました。しかも未確定の項目は「検討中」、活動場所は「未定」とそのまま書いています。確定していないことを確定したように書かない姿勢が、かえって信頼を担保しています。もう一点、A・B・Cの3区分は「部活動が移ったクラブ」と「もともと地域にあったクラブ」を同じ制度に無理に押し込まなかった設計で、既存の協会・民間クラブとの摩擦を避ける現実的な解です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

支援体制一覧を自前で作るには、まず市が「どこまで公費で持つか」を項目単位で決め切る必要があり、ここが最大の難所です。八幡浜市でも指導者報酬は複数回の検討委員会を経てなお継続検討中であり、報酬の結論を待たずに他項目から埋めて公開した点が実務上の突破口になっています。導入する自治体は、全項目の確定を待たず「決まった項目から表に書き込み、未確定は未確定と記す」運用を最初から宣言しておくとよいでしょう。また中学校2校・人口約2.9万人という規模だからこそ「浜っ子バス」のような市直営の輸送が成立します。学校数が多い自治体では同じ方式が車両数と運行管理で破綻するため、拠点校を絞って輸送対象を限定するか、クラブ所有車両への助成に切り替える設計変更が必要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

認定要件に規約・会則の必須記載事項(目的、役員の選任解任、総会、会員の入退会と参加費、予算決算の審議承認)を具体的に挙げ、スポーツ団体ガバナンスコードへの準拠と総会等での情報開示を求めている点は水準が高いです。認定期間を最長3年・指導者登録を最長4年に区切り、定期報告と現地確認で更新を審査する仕組みも機能しそうです。懸念は財源で、公的支援の中心が中体連関係経費と施設使用料減免に寄っており、指導者報酬の恒久的な財源が未確定のまま残っています。

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