トップ 事例を探す 佐賀県 【事例】佐賀県みやき町の部活動地域展開 ─ 教職員51人の兼職兼業意向を数値公表し「65%が指導に関わらない」を前提に推進計画を策定
全種目 👥 1~5万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 佐賀県

【事例】佐賀県みやき町の部活動地域展開 ─ 教職員51人の兼職兼業意向を数値公表し「65%が指導に関わらない」を前提に推進計画を策定

公開:2026.09.03 更新:2026.09.03
この記事でわかること

・教職員51名の兼職兼業意向を実数公表し「65%が指導に関わらない」を前提に置いたみやき町の計画設計
・小中学生・保護者・教職員への全数調査(回答率80〜88%)を根拠にした活動日数・時間の決め方
・令和6〜9年度の4か年年次計画と、費用負担に「家庭の経済状況に応じた手立て」を明記した点

自治体名 佐賀県三養基郡みやき町
人口規模 約2.6万人(令和8年7月末現在:25,708人・10,875世帯)
中学校数 3校(中原中学校・北茂安中学校・三根中学校)。令和6年度の生徒数は3校計615名
運営形態 新設する「みやき町地域スポーツ・文化クラブ」(略称:地域クラブ)が実施主体。事務局はみやき町教育委員会事務局内に設置し、指導は町内の各種専門団体・民間団体・教職員へ登録/委託する形
対象競技 限定列挙なし。推進計画は「当面は、現在中学校で運営される運動部活動や文化活動の種目、内容を中心とし」と規定。なお計画本文では、既に他校との合同チームや拠点校方式で活動している例として軟式野球部・女子剣道部が挙げられています
保護者負担額 未公表。「傷害保険費、大会参加費、指導者報酬などの一部として、一定額の運営費を徴収する」と方針のみ記載。あわせて「保護者の過度の負担とならないよう、教育委員会・地域クラブとして財源確保に努める。また、家庭の経済状況に応じた手立てを講じる」と明記されています

取り組みの概要

佐賀県みやき町教育委員会は、少子化と教員の働き方改革という2つの制約から現行体制での部活動維持が困難になったとして、令和7年3月に「みやき町地域スポーツ・文化クラブ推進計画」を策定しました。

計画策定に先立ち、令和7年1月10日から24日にかけて小学5年生から中学2年生の児童生徒・保護者・中学校教職員を対象とした大規模アンケートをMicrosoft Formsで実施しています。回答は小学生392名(回答率88%)、中学生363名(86%)、小中学生保護者334名(40%)、中学校教職員51名(80%)で、その結果を計画の根拠として明示しました。

休日の部活動の受け皿として、学校部活動と切り離した地域主体の組織「みやき町地域スポーツ・文化クラブ」を新設し、事務局を教育委員会事務局内に置く設計です。指導は町内の各種専門団体・民間団体・教職員に登録してもらい委託します。

令和7年度から部分的試行を開始し、令和7〜8年度を整備集中期間として段階的に展開、令和9年度の拡充までを4か年の年次計画として図示しています。平日の部活動についても段階的に地域展開を検討するとしています。

特徴的な取り組み

  • 教職員の兼職兼業意向を数値で公表し、それを制度設計の根拠にした: 教職員51名への調査で、「兼職兼業の許可を得て自分自身が指導に関わりたい」10名、「悩んでいる」8名、「行うつもりはない」33名という結果を公表しました。65%の教職員が指導に関わるつもりがないと回答したことを受け、計画は「部活動の指導を教職員のみで担うことが持続可能な活動という面において限界がきていることが分かる」と結論づけています。
  • 計画策定を全数調査アンケートで基礎づけた: 調査期間は令和7年1月10日から24日、Microsoft Formsを使用。回答は小学生(5・6年)392名(回答率88%)、中学生(1・2年)363名(86%)、小中学生保護者334名(40%)、中学校教職員51名(80%)です。設問は「大会出場への意向」「休日の活動日数・時間」「地域展開への保護者の意向」「教職員の兼職兼業意向」の4項目に絞られています。
  • 令和6〜9年度の4か年年次計画を図で明示: 令和6年度は部活動の現状把握・意識調査・課題の洗い出し・推進計画の策定、令和7年度は実施要項の整備・クラブの立上げ・指導者の募集・部分的試行・ガイドラインの策定、令和8年度は休日地域クラブ活動の開始(指導者配置・段階的実施・調整・課題の洗い出し)、令和9年度は休日地域クラブ活動の拡充、という工程を図で示しています。
  • 活動は「土日のいずれか1日・3時間程度」と先に決めた: 計画は活動時間を「土曜、日曜のいずれか1日で活動時間は3時間程度」と規定しています。これはアンケート結果と整合しており、児童生徒の約53%・保護者の71%が「土日のどちらかの活動がいい」と回答し、約54%の生徒が「3時間程度」が適当と回答した結果を踏まえたものです。
  • 費用負担に「家庭の経済状況に応じた手立て」を計画段階で明記: 運営費の徴収について「傷害保険費、大会参加費、指導者報酬などの一部として、一定額の運営費を徴収する」としたうえで、「保護者の過度の負担とならないよう、教育委員会・地域クラブとして財源確保に努める。また、家庭の経済状況に応じた手立てを講じる」と計画に書き込んでいます。
  • 大会参加の見通しを県中体連との協議状況とあわせて記載: 「佐賀県中学校体育連盟等が主催する大会等について、地区の予選会から地域クラブ参加が可能になる見込み。(現在、体育連盟で協議中)」と、協議中であることを含めて計画に明記しています。確定していない事項を確定的に書かない姿勢がうかがえます。

課題と解決策

課題 解決策
教職員51名のうち33名(65%)が地域展開後の指導に関わるつもりがないと回答し、指導者を学校内で確保できない 地域クラブの運営に町内の各種専門団体や民間団体等へ参画を依頼し、指導者には地域クラブ登録を行ったうえで指導業務を委託。報酬は運営費と町負担で賄う方向を検討する
運営費の徴収による保護者の経済的負担が生じる 「保護者の過度の負担とならないよう、教育委員会・地域クラブとして財源確保に努める」とし、あわせて「家庭の経済状況に応じた手立てを講じる」と計画に明記する
少子化により現行体制での部活動維持が困難になる見通し 令和6年度に現状把握・意識調査・課題の洗い出しを行い、令和7年3月に推進計画を策定。令和7〜8年度を整備集中期間として段階的に展開し、令和9年度の拡充までの工程を年次計画として図示する
地域クラブが県中体連主催大会に参加できるかが不確定 県中学校体育連盟と協議を継続し、「地区の予選会から地域クラブ参加が可能になる見込み(協議中)」と現在の状況を計画に明示する

成果・効果

令和7年3月時点では計画策定段階のため、活動実績としての成果数値は公表されていません。計画に記載された現状把握の数値は次のとおりです。令和6年度の中学校生徒数は3校計615名で、児童生徒数は増加傾向にあるものの令和12年度をピークに減少傾向となる見込みとされています。

令和6年度の設置部活動総数は28部(運動部25部・文化部3部)、部員数465名、加入率76%でした。クラブチームや社会体育等に所属している生徒は71名(加入率12%)です。

保護者の意向調査では、休日の部活動を地域クラブ等が担うことについて約84%が「賛成」「どちらかというと賛成」「やむを得ない」と回答しました。活動日数については児童生徒の約53%・保護者の71%が「土日のどちらかの活動がいい」と回答し、活動時間は約54%の生徒が「3時間程度」が適当と回答しています。

出典

→ 原文: みやき町地域スポーツ・文化クラブ推進計画について/みやき町

→ 原文: みやき町地域スポーツ・文化クラブ推進計画(令和7年3月)/みやき町教育委員会(PDF)

→ 原文: <中学校部活動の地域展開>佐賀県内の市町、着手めどは4割 2026年度から「改革実行期間」 指導者確保、財源など課題も/佐賀新聞

→ 原文: みやき町公式ホームページ(人口・世帯数)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

みやき町の推進計画で最も参考になるのは、教職員51名の兼職兼業意向を「関わりたい10名・悩んでいる8名・行うつもりはない33名」と実数で公表し、それを計画の出発点に据えた点です。多くの自治体は指導者確保を課題として挙げますが、自分の町で何人の教員が休日指導を引き受ける意思があるかを数値で把握している例は多くありません。65%が「行うつもりはない」という結果を前提に置いたからこそ、町内の専門団体・民間団体への委託という設計が必然として導かれています。回答率も小学生88%・中学生86%・教職員80%と高く、計画の根拠として十分な母数を確保しています。活動を「土日いずれか1日・3時間程度」と先に決めたのも、児童生徒と保護者の回答分布に沿った判断です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

同じ手法を採る場合、アンケートで不都合な結果が出たときにそれを公表できるかが最初のハードルになります。「教員の65%が指導に関わらない」という数字は、裏を返せば町として外部人材の確保に責任を負うという宣言でもあります。公表するなら、同時に受け皿の確保策を示せる段階で行うのが現実的です。もう一点は、計画に競技の限定列挙がないことです。「当面は現在中学校で運営される種目を中心」という規定は柔軟ですが、指導者が集まらない種目が生じたときの扱いが未確定です。導入時には、種目ごとに指導者の見込みを棚卸しし、開始年度を段階的に割り振っておくと現場が動きやすくなります。費用面では「一定額の運営費を徴収する」という方針のみで金額が未定のため、試行段階で実費を積み上げて早期に目安を示すことが求められます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進計画をPDFで公開し、アンケートの回答者数・回答率・設問ごとの分布まで示している点で、根拠の透明性は高い水準にあります。事務局を教育委員会事務局内に置く設計は立ち上げ期の推進力になる一方、地域主体の組織として自立させる時期の見通しは計画に明記されていません。運営費の金額も未定で、指導者報酬を運営費と町負担のどちらでどこまで賄うかも検討段階です。令和7〜8年度の整備集中期間に、費用と運営主体の2点をどこまで具体化できるかが持続可能性を左右します。

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