トップ 事例を探す 徳島県 【事例】徳島県小松島市の部活動地域展開 ─ 参加費0円の3クラブを実証し、教員アンケートから提言書を作成して改革の3本柱を確定
全種目 👥 1~5万人 🏫 大規模校(300人以上) 📍 徳島県

【事例】徳島県小松島市の部活動地域展開 ─ 参加費0円の3クラブを実証し、教員アンケートから提言書を作成して改革の3本柱を確定

公開:2026.09.03 更新:2026.09.03
この記事でわかること

・参加会費0円・3クラブという小規模実証から、指導者確保の限界まで率直に公表した小松島市の姿勢
・教員・生徒・保護者の3種アンケートと月1回の校長会協議を経て提言書を作成した合意形成の手順
・教育委員会学校課への部活動コーディネーター配置と、拠点校方式・学校施設活用による負担軽減

自治体名 徳島県小松島市
人口規模 約3.3万人(令和8年8月末日現在:33,452人・16,906世帯/住民基本台帳・外国人含む)
中学校数 2校(小松島中学校・小松島南中学校)。全生徒数722人、域内の部活動数20部(令和6年度時点)
運営形態 市区町村運営型。主な運営団体は小松島市教育委員会学校課(正式な運営主体が決定するまでの暫定)。令和5年度は小松島中学校・小松島南中学校を拠点校とする拠点校方式
対象競技 男子新体操、ソフトテニス、バドミントンの3クラブ(ただしソフトテニスは指導者の個別的事由により実施できず)
保護者負担額 0円/年(参加会費の徴収なし・令和6年度時点)

取り組みの概要

徳島県小松島市は、令和3年度に小松島中学校が徳島県のモデル校となったことを起点に、令和4年度から市が「地域運動部活動推進事業」等を受託して部活動の地域展開に向けた準備を進めてきました。

背景にあるのは生徒数の減少です。令和6年度時点でも規定人数でのチーム編成が困難な部活動があり、数年内に同様の状況となることが危惧される部活動も増加しつつあると市は説明しています。市立中学校は2校、全生徒数722人、部活動数20部という規模です。

令和6年度には教育委員会学校課へ部活動コーディネーター1名を配置し、学校・保護者・地域・学識経験者・教育委員会が一堂に会する「小松島市学校部活動改革推進協議会」を設置しました。あわせて教員向け・生徒向け・保護者向けの3種類のアンケートを実施し、その結果を踏まえた協議を重ねています。

実証事業として男子新体操・ソフトテニス・バドミントンの3クラブを運営していますが、指導者が見つからずそれ以上の拡大ができていない状況にあります。ソフトテニスは指導者の個別的事由により実施できませんでした。この経過を踏まえ、令和7年1月に「小松島市部活動改革に関する提言書」を教育長へ提出しています。

特徴的な取り組み

  • アンケートと協議を経て「提言書」という文書に落とし込んだ: 令和7年1月、「小松島市部活動改革に関する提言書」を小松島市教育委員会教育長へ提出しました。「学校部活動運営の適正化への工夫」「種目ごとの現状を踏まえた持続可能な改革」「市全体でのスポーツ・文化活動の環境づくり」の3本を柱とし、以後この提言に沿った取組を行うとしています。協議の結論を文書化して以後の判断基準にする進め方です。
  • 参加会費0円で運営し、活動場所は学校施設と高校を使う: 参加会費は年間0円で徴収がありません。活動場所は小松島高校・小松島中学校・小松島南中学校で、移動手段は「学校への通学と同様の通学手段(自転車・徒歩等)」とされています。指導者は退職教員(部活動指導員)・教員(兼職兼業)・市費職員で構成されています。
  • 月1回の市中学校長会で継続的に意見交換を重ねた: 令和6年度は月1回の市中学校長会において部活動の地域展開について幾度も意見交換を実施しました。あわせて「これからの部活動を検討するためのアンケート」を教員向け・生徒向け・保護者向けの3種で実施し、結果を踏まえた協議を行っています。
  • 教員から「地元で指導したい」という具体的な意見を引き出した: 意見交換とアンケートを通じて、「地元で指導したい」という具体的な意見が聴取できたと市は報告しています。「休日には自分の専門分野で社会貢献したい」と考えている教員がいることが分かり、地域展開に前向きな考えがあることを確認できたとしています。
  • 専門性のある部活動指導員の配置で指導の質を担保: 専門性のある部活動指導員が地域クラブを指導することで、専門的な指導ができ、質の保証につながったと市は評価しています。3クラブの年間平均参加生徒実数は各学年10人、活動回数は月2〜3回、指導者3人・運営スタッフ3人という体制です。

課題と解決策

課題 解決策
現在実施している地域クラブ以外の種目について、適切な指導者や受け皿の確保に至っておらず、指導者が見つからないため地域クラブを拡大できない(ソフトテニスは指導者の個別的事由により実施できず) 教育委員会学校課に部活動コーディネーター1名を配置し、市中学校長会で月1回の意見交換を重ねて、教員の兼職兼業による地域クラブ指導や拠点校指導の可能性を掘り起こす
地域ぐるみで部活動改革を協議する場がなかった 学校・保護者・地域・学識経験者・教育委員会が一堂に会する「小松島市学校部活動改革推進協議会」を設置し、教員・生徒・保護者の3種アンケート結果を踏まえた協議を実施。令和7年1月に提言書として結実させる
生徒数の減少で規定人数でのチーム編成が困難な部活動があり、数年内に同様の状況となる部活動も増える見込み 小松島中学校・小松島南中学校を拠点校とする拠点校方式で活動し、学校の枠を超えて生徒が参加できる形を実証する
活動場所の調整や参加者の移動が負担になる 小松島高校・小松島中学校・小松島南中学校の学校施設を活動場所として使用し、移動手段を通学と同じ自転車・徒歩等に揃える

成果・効果

3クラブを実施し、年間平均参加生徒実数は各学年10人(3年10人・2年10人・1年10人)でした。活動回数は月2〜3回、指導者3人・運営スタッフ3人(指導者のみ)という体制です。

教員の意識面では、「地元で指導したい」という具体的な意見が聴取でき、「休日には自分の専門分野で社会貢献したい」と考えている教員がいることが分かり、地域展開に前向きな考えがあることを確認できたと市は報告しています。

専門性のある部活動指導員が地域クラブを指導することで専門的な指導ができ、指導の質の保証につながりました。また学校施設が使用できることで活動場所の調整や参加者の移動における負担が減り、事故等のリスク軽減につながったとされています。学校施設の開放を実証研究できたことで、具体的な課題も明らかになりました。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(概要)/スポーツ庁(PDF・徳島県小松島市の項)

→ 原文: 令和5年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 運動部活動の地域移行に向けた実証事業 成果報告書(概要)/スポーツ庁(PDF・徳島県小松島市の項)

→ 原文: 市の人口/小松島市

→ 原文: 教育委員会 学校課/小松島市

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

小松島市の事例で注目したいのは、「うまくいかなかったこと」まで含めて公表している点です。3クラブのうちソフトテニスは指導者の個別的事由により実施できず、それ以外の種目も指導者が見つからないため拡大できていないと明記しています。地域展開の事例紹介は成功例に偏りがちですが、市は指導者確保という最大のボトルネックを率直に示したうえで、部活動コーディネーターの配置と月1回の中学校長会での意見交換という具体的な手を打ちました。その積み重ねから「地元で指導したい」「休日には自分の専門分野で社会貢献したい」という教員の声を引き出し、令和7年1月の提言書に結実させています。実証で得た知見を文書として残し、以後の判断基準にする流れは、担当者が交代しても方針が揺れない設計として参考になります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この進め方を他地域で採る場合、提言書という形式が実効性を持つかどうかは、そこに数値目標と期限が入っているかで決まります。小松島市の提言は「学校部活動運営の適正化への工夫」「種目ごとの現状を踏まえた持続可能な改革」「市全体でのスポーツ・文化活動の環境づくり」という3本柱で、方向性を示す性格の文書です。導入時には、柱ごとに「いつまでに何種目」「指導者を何人確保」といった到達点を併記しておくと、次年度以降の進捗管理がしやすくなります。また参加会費0円は実証事業の補助が前提であるため、事業終了後にどの費目を誰が負担するかを、実証中の早い段階で試算しておく必要があります。中学校2校という小規模だからこそ校長会での合意形成が機能した面もあり、学校数が多い自治体では別途、学校単位の窓口設計が要ります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

学校・保護者・地域・学識経験者・教育委員会が参加する協議会を設置し、3種のアンケートを経て提言書を教育長へ提出するという手順は、意思決定の正当性を担保する構造として妥当です。一方で運営団体は「正式な運営主体が決定するまで」教育委員会学校課が担う暫定状態にあり、参加会費0円も実証事業の財源に支えられています。指導者確保が進まなければクラブ数を増やせない構造も残ったままです。提言書の3本柱を、運営主体の確定時期と費用負担の設計にどう落とし込むかが、持続可能性を左右します。

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