【事例】長野県松本市の部活動地域展開 ─「まつチャレ」ブランドで9種目・令和9年3月完全移行を目指す独自モデル
・松本市の地域移行で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
| 自治体名 | 長野県松本市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約23.4万人(2025年1月時点) |
| 中学校数 | 約19校(公立) |
| 運営形態 | 多様な団体・民間事業者による登録制地域クラブ(「まつチャレ」として市が認定) |
| 対象競技 | 陸上競技、ソフトテニス、バレーボール、バスケットボール、卓球、軟式野球、サッカー、バドミントン、剣道(計9種目) |
| 保護者負担額 | 受益者負担(会費あり。詳細は各クラブによる設定) |
取り組みの概要
松本市では、過去10年間で中学生が約800人減少する少子化の進展と、教員の部活動指導負担の増大という2つの課題を背景に、学校部活動の地域移行を本格化させています。市は独自ブランド「まつチャレ」(まつもとチャレンジクラブ)を設け、多様なスポーツ団体・民間事業者が登録・運営する地域クラブ活動への移行を推進しています。令和9年3月(2027年3月)を目標に学校部活動を廃止・完全移行する計画で、長野県の地域クラブ活動推進ガイドラインに準拠しながら、松本市独自のサポート体制を整えています。
特徴的な取り組み
- 「まつチャレ」ブランドの確立:地域クラブ活動に市独自の名称とブランドを付与し、生徒・保護者・地域への認知度向上を図っています。登録した運営団体は「まつチャレ」として市の公開リストに掲載され、信頼性の担保にもなっています。
- まつチャレサポートデスクの設置:新たに地域クラブを立ち上げようとする団体や、移行を検討する学校・保護者の相談窓口として「まつチャレサポートデスク」を設置。登録手続き、補助制度の案内、施設・指導者の調整を一元的に支援します。
- 移行補助制度の整備:地域クラブ活動への移行経費(指導者謝礼、スポーツ保険加入、備品購入、会場使用料等)を市が補助する制度を設け、立ち上げ期の財政的障壁を下げています。
- 活動時間・休息日のルール明文化:平日は最大2時間・週末は最大3時間、週2日以上の休養(平日1日・週末1日を含む)を基準として定め、過度な活動を防止する環境を整備しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 少子化による部活動単独維持が困難な学校の増加 | 学校の枠を超えた広域の地域クラブ活動「まつチャレ」を設立し、複数校の生徒が合同で活動できる体制を構築 |
| 地域クラブ立ち上げ時の資金・ノウハウ不足 | 移行補助制度(謝礼・保険・備品・会場費等)と「まつチャレサポートデスク」の設置で一元的に支援 |
| 学校部活(無料)から地域クラブ(会費あり)への費用負担の変化に対する保護者の不安 | 受益者負担の考え方を早期から説明し、補助制度を活用して会費水準を抑える。詳細な費用設計は各クラブが設定 |
成果・効果
令和9年3月の完全移行に向け、現在段階的に地域クラブへの移行が進んでいます。「まつチャレ」ブランドのもとで9種目の地域クラブが整備され、生徒が学校の枠を超えて参加できる環境が整いつつあります。まつチャレサポートデスクの設置により、新規クラブの立ち上げや移行手続きに関する相談が一元化され、運営団体の負担軽減が図られています。長野県中学生期のスポーツ・文化芸術活動指針に準拠した活動時間・休日のルールが明文化されたことで、過度な活動による生徒の負担増大を防ぐ枠組みが整備されています。
出典
→ 原文: 部活動の地域展開(移行)(松本市ホームページ)
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
松本市の取り組みで注目すべきは「まつチャレ」という独自ブランドの確立です。国の「地域クラブ活動」という行政用語をそのまま使うのではなく、地域に親しみやすい名称を与えることで、生徒・保護者・地域住民への認知と受け入れを促進するマーケティング的な発想は、全国の自治体が参考にできる手法です。ブランドとして統一された名称があると、指導者の募集や会員向けの広報においても訴求力が増します。
「まつチャレサポートデスク」の設置は、地域移行でよく課題になる「誰が窓口なのかわからない」という問題を解消する実践的な施策です。学校・保護者・運営団体のそれぞれが困ったときに相談できる一元的な窓口を設けることで、移行プロセスの摩擦を大幅に減らせます。補助制度と窓口をセットで整備したことが、令和9年の完全移行に向けた具体的な推進力となっています。
また、10年で800人減という少子化の数字を公開資料に明示した点も重要です。「なぜ移行しなければならないのか」という根拠を客観的なデータで示すことは、地域住民や保護者からの合意を得るうえで欠かせない説明責任です。感情的な議論を防ぎ、「このまま何もしなければ部活動が消滅する」という現実から移行の必要性を理解してもらう姿勢は、他の自治体にとっての模範となります。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
「まつチャレ」モデルを他地域に導入する際の最大のハードルは、登録クラブを集めるための受け皿の確保です。地域スポーツ協会や民間スポーツ施設、大学体育会OBグループなどに声をかけ、登録制のクラブ群を形成することが第一歩です。サポートデスクは専任職員を置けなくても、教育委員会内に担当係を設けるだけでも機能します。受益者負担への移行は保護者の不安が大きいため、移行前から「いくらになりそうか」の概算を示し、補助制度とセットで説明することが混乱を防ぐポイントです。